第5話 「付与魔法と実戦」
••✼••トスターコチマ街道沿い••✼••
トロは、街道沿いの林の中で野営をする事にした。
コチマ村で助けた冒険者達から貰ったテントを開く。
本当に絵に描いたような、ピラミッド型のテント。
中心に支柱を立てて、4本の張り綱を張り、布を被せるだけの簡単なもの。
「狭っ! こんなのに4人も寝ていたのか? ああいや、1人か2人は見張りで起きてるんだっけ? なら、2人用かな? それにしても狭い・・・」
マジ狭かった。
1人でも、猫のように丸くならないと、頭と足がテントの布に突っ張る。
一応、テントの四方に結界の魔石を置いてあるので、魔物が近寄る事はないだろうが、それでも初めての野営だ。
緊張と不安で、なかなか眠れない。
風で木の葉が擦れる音で、ビクッ!となって目が冴えてくる。
「ダメだ! ぜんっぜん眠れない・・・」
まあいいか。
明日から仕事って訳でもないし、夜更かししても何も問題などない。
だったら、気になる魔法を使ってみようと思った。
「付与魔法って、道具や武具に魔法やスキルを付与する魔法だよな?」
トロは、異空間収納から、使い古しの短剣を取り出した。
その短剣に、何か付与してみようと思った。
「ふぅむ・・・何がいいかな?」
やはり武器なので、攻撃に有利になる付与が良いだろう。
なら、攻撃回数と、斬鉄だろうか?
トロの想像する「攻撃回数」とは、この世界でいう「攻撃速度」の概念である。
トロの考える攻撃回数とは、通常1秒間に剣を一振できる場合で、「攻撃回数2倍」とすると、この世界の概念では、「攻撃速度+100%」となる。
「斬鉄」は、文字通り「鉄をも切り裂く切れ味」を意味する。
トロは、使い古した短剣に、「攻撃回数2倍」と、「斬鉄」を付与した。
「できた・・・のかな? 鑑定してみよう」
○==============○
・⋯━━━━☆★☆━━━━⋯・
・⋯━☞使い古した短剣UU☜━⋯・
・⋯━━━━☆★☆━━━━⋯・
【攻撃速度+100%】【斬鉄】
・⋯━━━━☆★☆━━━━⋯・
○==============○
「できてるみたいだ! 攻撃回数が、攻撃速度に変わってる! そうか、そういう事か うん? UUって何だ?」
UUとは、ダブル・ユニークの意味である。
この時トロは、ユニークの概念をまだ知らなかった。
「よし! この調子で、どんどん付与していこう!」
トロは、本当に調子に乗っていた。
その後に作ったユニークは、次の通りだ。
●使い古した短剣UU(攻撃速度+100%)(斬鉄)
●旅人の服UUU(物理攻撃絶対防御)(魔法攻撃絶対防御)(HP自動回復(1/1秒))
●ライト・アーマーUU(物理攻撃絶対防御)(魔法攻撃絶対防御)
●1980円シューズUUU(移動速度+100%)(金棒キック)(ダッシュ(1分間馬並みに走れる/クールタイム3分))
●100均ハンカチUU(超硬化)(メガトンパンチ)
「ま、取り敢えず、これで良いだろう」
トロの付与したのは、ハッキリ言って「鬼がかる」ものだった。
この世界のダブル・ユニーク(UU)はとても希少であり、モノによっては1億Tiaを超えることもある。
トリプル・ユニーク(UUU)は国宝級だった。
それをトロは、まだ知らない。
••✼••翌朝••✼••
「はぁ━━━·····ぜんぜん眠れなかった」
付与作業を終えたあと、一応毛布に潜り込み眠りについたのだが、まったく眠れなかった。
異世界で、しかも初めての野営で、神経が過敏になっているせいかも知れない。
だが、身体が若返っているからか、ほとんど疲れは感じなかった。
眠気は半端なかったが。
トロは、種生成術で、「ハンバーガーが生る種」と、「コーヒー牛乳が生る種」と、「タオルが生る種」と、「歯磨き粉が生る種」と、「歯ブラシが生る種」と、「洗面器が生える種」を生成し、地面に植えた。
すると、ハンバーガーが20個と、コーヒー牛乳10本と、タオルと歯磨き粉と歯ブラシの入ったサヤが20個ずつ生り、洗面器の入ったサヤが10個も生った!
考えると、バカっぽい物を作ってるなとは思うものの、必要なのだから、これで良いのだ。
必要以上の数だが、異空間収納があるから余っても邪魔にはならないし、要らないなら売れば良いだけだし、無駄にはならないだろう。
もやは驚きはしないが、我ながら気味が悪いほどのチート能力だ。
「ははは・・・まったく我ながら気味が悪いチートさだな だが、こんなのは気にしたら負けだ!」
顔を洗ってスッキリしたら、荷物を片付けて、またトスターへ向かって歩き出す。
「・・・魔物が出て来なきゃいいが」
そう、ボソッと呟いたのがフラグだったのか、いきなり魔物がエンカウント!!
シュタッ!
「うおっ?! 出たっ!!」
「フゥ━━━ッ!!」
「へっ?! 猫? でかっ!」
林の中から飛び出して来たのは、見た目はごく普通の黒猫だった。
ただ、地球のメインクーンほどの大きさがある。
敵意むき出しではあるが、襲いかかって来る様子はないように感じた。
なので、鑑定してみた。
「ワイルド・フォレスト・キャットって名前なのか・・・ん? 空腹?」
鑑定の結果、魔物には違いないが、HPの後ろに「空腹」と表示されていて、HPも半分以下に減っていた。
空腹でここまでHPが減るって事は、もう何日も何も食べていないのだろう。
何かしら少し痩せこけてるようにも見える。
「可哀想に・・・腹が減ってイラついてるんだな?」
「ヴヴゥ~~~」
そう思ったトロは、バッグから「干し肉」を取り出して、差し出してみた。
「チッチッチッチッチ・・・・ほら、干し肉をやるぞ? 食べろよ!」
「!・・・・・・」
ワイルド・フォレスト・キャットは、警戒しながらも、ジリジリと近寄り、干し肉を食べたのだった。
「ムシャムシャムシャ・・・」
「うぷぷっ デカいけど、やっぱり猫だよなあ? 可愛い奴だ」
ついでに、洗面器に水を入れてあけだ。
ガブガフと水を飲んでいた。
トロは、ワイルド・フォレスト・キャットに干し肉を食べさせながら、頭と背中を優しく撫でてみた。
嫌がりもしないし、なんだか喜んでいるようにも見えた。
尻尾をクルリと巻き込んで仕舞ったので、落ち着いている様子に見えた。
だが、少し変な座り方をしているように見えた。
よく見ると、左の後ろ足を怪我してる!
「おいおい! 怪我をしてるじゃないか?」
「ガブガブガブ ムシャムシャムシャ」
「ヒール!」
フォン! シュウゥウゥウゥ・・・・・・
「?!・・・・・・クンクンクンクン」
「ふふふ もう大丈夫だぞ?」
「にゃあん!」
ワイルド・フォレスト・キャットは、怪我していた足の臭いを嗅ぎ、ペロペロと舐めると足が治ってる事が確認できたのか、「ありがとう!」と、言ってくれたように見えた。
これだけ慣れたなら、一緒に旅が出来たらいいなと思った。
と言うか、連れて行きたいと言う気持ちが強く湧き出てしまった。
このまま別れるのが、とても惜しい。
そしてその時、テイムできないか?と思い付いて、指を差して「テイム」と呟いてみた。
「テイム・・・」
「ウキャ?!」
シャキ!とするワイルド・フォレスト・キャット。
「・・・・・・どうだ?」
ペタン!
「お?! どうした?」
一瞬、糸が切れたかのように、フニャとなったが、スック!とまた立ち上がり近寄ってきた。
鑑定してみると、称号に【賢者トロの従魔】とシッカリと表示されていた。
「ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・」
「うほほっ! テイムできたよお!」
ワイルド・フォレスト・キャットは、トロの身体に擦り寄って来た。
まさかのテイムが、一発で成功!?
これもチートか?
本来なら、こんなに簡単にテイム出来ないはずなのだろうが、上手くいって良かった!
旅の友にいい!
そうだ! 名前を付けよう!
「う~~~む・・・・・・ロンデル! お前の名前は、ロンデル どうだ?」
「うにゃあ~~~♡」
「そうか! じゃあ、今日からお前はロンデルだ! よらしくな! ロンデル!」
「にゃあぁあぁあぁ~~~ん♡」
っくぅ~~~可愛いなコイツぅ!
デカいけど、やっばり猫には違いないな。
人は裏切るが動物は裏切らない。たぶん。
猫好きなトロには、最適な仲間だった。
そして、ロンデルのステータスを見てみた。
■===========■
・⋯━☞STATUS☜━⋯・
■===========■
名前 ロンデル
性別 雌
年齢 18
種族 獣族 (ワイルド・フォレスト・キャット)
・⋯━━☆★☆━━⋯・
LV 25
HP 850
MP 44
STR 37
ATK 39
DEF 33
DEX 28
INT 27
MAT 26
SPD 35
LUK 29
EXP 8207
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得魔法
【全ステータス強化魔法Lv2】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得スキル
【威嚇Lv2】【ひっかきLv8】【噛み付きLv6】【体当たりLv4】【猫パンチLv3】【猫キックLv3】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号
【賢者トロの従魔】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
■===========■
「なんじゃこりゃあ?! 俺なんかよりもずっと強いんじゃないか?」
「にゃあん?」
今更だが、テイムしてからビビった!
ロンデルのステータスの凄さに!
HPなんて800以上もある!
力と攻撃力も俺よりも10以上高い!
素早さなんて、流石は猫だな!
だが、ゲームなんかでは、だいたい魔物をテイムする時は、戦ってある程度HPを減らしてからでなきゃ成功しない仕様なはず。
なのに、こんなにも簡単に、「餌付けしてはい!」みたいな感じでテイムできて良いものなのか?
まあいい。
どうせ、これもチートならではの能力なのだろう。
「得した!」程度に思っておこう。
すると今度は、ゴブリンが4体エンカウント!
「うお?! 出た! ゴブリン!! ゴブリンだよねコレ?! すげぇ!! 絵に描いたようなゴブリンじゃねぇか! ふぉおおおおおー!」
「フシャー!!」
威嚇するロンデル。
なぜかロンデルに聞いていた。
人の言葉を話せない魔物なのに、返事なんてする訳がないのに。
なのに、思わず興奮してロンデルに話しかけるように聞いていた。
それくらい、異世界名物のゴブリンに遭遇した事が、トロにとって感動的だった。
思わず興奮して叫んでいた!
初めてエンカウントした魔物はロンデルだったのだが、日本で良く見る猫にしか見えなかったので、ロンデルの時は あまり感動が無かったのだ。
だが、ソイツらは、確かにゴブリンだ。
異世界名物のゴブリンだ!
日本では、「餓鬼道の物欲、食欲、性欲の小鬼 餓鬼」と呼ばれる奴らだ。
身体は緑っぽいのから、茶色っぽいのから、普通に肌色っぽいのが居て、身長80~110センチほどで、バスタオルほどの大きな布切れの真ん中に穴を開けて頭を通し、布の両端を前後に下ろして身体を包み込み、腰の位置に紐でベルト代わりに括っているようだ。
足には靴代わりに、小型の魔物の毛皮を巻いて紐で括る簡素なもの。
パンツみたいなのは穿いているのだろうか?
ああいやいや、俺の気にする所じゃないか。
それにしても、簡素ながらも着るものを着るなんて、魔物にしては羞恥心があるのか?
それとも寒いのか?
防護的なものだと余りにも薄手だし考え難い。
でも、低級な魔物にしては、棍棒を持ってるし、なかなか考えてるんだな?
なんて、また感動してしまった。
実に面白い!!
などと考えていると・・・
「ふぎゃあ━━━!!」
ゴブリンに向かって飛びかかる姿勢のロンデル。
「「「ぎゃっ!」」」
逃げ出すゴブリン達。
バタバタバタバタバタッ!
「んなっ?! えっ?」
しぃ~~~ん・・・・・・
「・・・・・・」
ゴブリン達は、ロンデルが戦闘態勢に入り、一声吠えただけで、逃げてしまった!
ロンデルは、どれだけ強いんだ?
ゴブリンが逃げ出すなんて・・・・・・
とはいえ、ゴブリンと言えば、スライムに次ぐ最も弱い魔物の分類だったっけ?
「お前、すんげぇー強いんだな?」
「にゃあん?」
「ははっ! 頼もしいヤツだ!」
「にゃあ~~~」
この調子なら、少々の魔物に出くわしても、ロンデルが居れば平気かも?
だが、心配事もある。
もし街中で、ロンデルを見られたら、他の冒険者達などに、魔物と思われ攻撃されないだろうか?
そんな事のないように、首輪でも着けておこうか・・・・・・
トロは、ロンデルの為に首輪を作ってあげた。
種生成術で、首輪が生る種を生成して、土に植えた。
みるみる育って、あっという間に8個の首輪ができた!
何の変哲もない、革製のごく普通のペット用の首輪だ。
ロンデルは、大型犬並の大きさだが。
だが、タダの首輪だと面白くない。
どうせなら、もっと強くなるように、色々と付与してやろう!
●大型犬用の革製首輪UUU(全ステータス+100%)(超硬化)(HP自動回復(1/1秒))
トロは、「大型犬用の革製首輪UUU」を、ロンデルの首に着けてあげた。
「どうだ?」
「にゃん!」
「そうか! 気に入ってくれたか?」
「にゃあ~~~ん♡」
「そうか!そうか!」
ロンデルは、ゴロゴロと喉を鳴らし、トロの腰に頭を擦り付けてくる。
こんな仕草は、やはりまんま猫だな。
可愛い奴め!
本当なら普通の猫のように抱き上げて、お腹に顔を埋めてモフモフしたいのだが、大きすぎるな。
こうやって見ると、猫って言うより、クロヒョウだな。
ステータスの強化も、最初はこんなものだろう。
いきなり上げ過ぎても、きっと良くないと思う。
俺も自分のステータスをもっと上げたいとは思ったが、あまりいきなり上げ過ぎても、たぶん空回りして力を使いこなせないだろう。
自動車運転免許を取得したばかりの初心者が、いきなりF-1レースカーで時速300kmオーバーでサーサーキットを爆走できる訳が無いからな。
先ずは、剣術を試してみよう。
「ロンデル!」
「にゃん?」
「次に魔物が出て来たら、先ずは俺に戦わせてくれないか?」
「にゃん?」
「危なくなったら、助けてくれ!」
「にゃん!」
「?!・・・俺の言葉を理解しているのか?」
「にゃーん!」
「ふふふ そうかそうか!」
ロンデルは、本当にトロの言葉を理解しているかのようだった。
テイムした魔物とは、意思疎通ができるようになると言うラノベではテンプレな事柄なのだが、本当にそうなのかも知れないな。
なんとなく、ロンデルの意思が理解できるような気がするトロだった。
そしてまた、しばらく歩き続けると、『オーク』という魔物だろうか? 体高3m近くもあるデカい魔物と戦う騎士達と遭遇した。
彼らは4人パーティーで、少し苦戦しているように見える。
「ブォオオオ━━━!!」
「コイツ! なかなかしぶといぞ!」
「ジェイド級目前のオークだからな!」
「ほぉ~~~随分とデカいなぁ!」
そう呑気に言うトロ。
「なっ?! アンタ、何やってんだ!」
「へっ?」
「近付くんじゃない! 逃げろー!!」
「え? え?」
「ブオオオオ━━━!!」
「あ!・・・・・・」
トロは、ただ俯瞰するつもりだったのだが、オークは突然トロに向かって襲って来た!
丁度いい!
付与した短剣の試し斬りと、剣術レベル3の実力の腕試しの相手になってもらおうか!
「やってやる!!」
抜刀するトロ。
「バカやろう! 何を・・・・」
「てやっ!!」
シュパァン!・・・
「へっ?!「なっ?!「なに?!「えっ?」
「・・・・・・ゴフッ!」
ドスドスン!・・・・・・
「ほっ! やっぱり良く斬れるなぁ~コレ?!」
「「「「・・・・・・」」」」
なんと!
トロは、一撃でオークを倒してしまった!
しかも、胴体を真っ二つの一刀両断だ!
その威力は、剣術レベル3だけでなく、ダブル・ユニークの短剣の威力もあってこそである。
しかし、倒した魔物は、そのまま消えなかった。
これがゲームの世界なら、倒した魔物はバラバラにクラッシュして消えたりするのだが、それが起こらない所を見ると、やはりここは現実のようだ。
「ビッグ・フォレスト・オークを一刀両断だと?! ま、マジかよ・・・」
「ひぇ~! アンタ、強いなぁ!」
「いゃあ~驚いた! ショートソードを、一振りで真っ二つかよ! そのショートソード、なかなかの業物だろう?」
「いや、あはは・・・」
「もしかして、ラピスラズリ級の冒険者かい?」
「え? ああ、いや、俺は冒険者じゃない タダの旅の行商だよ」
「「「「はぁ~~~?!」」」」
「あはは・・・・・・」
思った通りの反応だった。
そりゃあ、そうだよな。
見た目は若いが、中身はオッサン・・・今はコレ関係ないか。
軽装ではあるが一応冒険者風な装備で、短剣でオークを一刀両断できるとなれば、名の知れた高ランク冒険者だと思われても仕方ない。
だが、この格好は、行商人ギルに無理やり買わされた軽装備であって、俺は戦闘などの何の経験もなく、冒険者になり損ねたオッサンだ。
ただの冒険者の真似事、なんちゃって冒険者だな。
「冗談だろ? あれだけ戦えるのに、冒険者じゃないだって?!」
「いや、あはは・・・」
「だよな? もしかして、俺達よりも強くないか?」
「ま、まさか(汗)」
「とにかく、このビッグ・フォレスト・オークを倒したのはアンタだ! 倒した獲物は、倒した奴の物だ!」
「へっ?! 俺の?」
「ああ、そうだ! 遠慮せずに持ってってくれ!」
「え、ええ? いいのか?」
「ああ、構わない 俺達は、トスターの『オーク専隊』だ 他の冒険者の獲物の横取りなんて恥知らずな真似はしないぜ?」
「ぶほっ!・・・オーク・・・・せん」
「「「「うん?」」」」
「オーク戦隊」? なんじゃそれ?!
思わず吹き出しそうになった。
なんて、恥ずかしい戦隊名だ?
などと思っていたが、その後に彼らから聞いた話しでは、彼らはオーク肉を街に卸すためにトスター領領主が開設した組織であり、正式名称は、「オーク専門討伐隊」なのだそうだ。
なので、「オーク戦隊」ではなく、「オーク専隊」なのだそうだ。
なるほど。
そんな組織もあるのか。
実に面白い!
「それより、アンタの後ろに控えている、ワイルド・フォレスト・キャットは、アンタの従魔かい?」
「うん? ああ、そうた 名前はロンデルだ」
「ほほお・・・最近新しく、『テイマー』というジョブが設定されたが、もうワイルド・フォレスト・キャットをテイムできる奴が現れるとはな?」
「え? 俺の他にペット・・・従魔を持つ奴は居ないのか?」
「ああ、ワイルド・フォレスト・キャットを従魔にする奴は初めて見たな!」
「だな? 牙兎を従魔にしている奴は見た事があるが・・・」
「うむ 牙兎では、戦力としては・・・」
「だよなあ? せめて、ワイルド・フォレスト・キャットならって、よく言うよな?」
「うむ しかし、冒険者でもないのに、よくテイムできたなアンタ?」
「あはは・・・餌付けしたからかな?」
「「「「餌付け?!」」」」
本当のことだ。
トロは、餌付けだけで、ロンデルをテイムした。
恐らくトロは、テイムLv2だったので、ロンデルをテイムできたのだと思われる。
「そ、そうなのか? 餌付けか・・・これは、テイマーとしての新しい発見だぞ?!」
「すげぇ! やるなアンタ!!」
「いやあ、あはは・・・・」
「そういやアンタ、名前は?」
「?!・・・・・・」
ヤバい!
目立ってしまった。
だが、今の俺は異世界召喚者だと知る者は居ないし、若返っているから、たぶんバレはしないだろう。
「俺の名は、トロだ 旅の行商をしている」
「トロ? 聞かない名だな」
「俺は、オーク専隊ミール隊隊長のミールだ」
「俺は、ミール隊所属、ベンだ」
「俺の名は、アーバス」
「俺は、ロードンだ」
「よろしく! ところで、本当にこのオーク貰っていいのか? 俺は今金欠だから、有難いが」
「ああ、もちろんだ! だが、どうやって街へ運ぶ? 俺達の荷車に乗せてやろうか?」
「いや、平気だ! 俺にはマジック・バッグがあるからな」
「「「「マジック・バッグ?!」」」」
トロは、背負ってるバッグを下ろすと、蓋を開けてオークに触れる。
すると、一瞬でオークが消えた!
「「「「おおおお━━━!!」」」」
「すげぇなっ!!」
「これがマジック・バッグか!!」
「初めて見た!」
「それ、どれくらいの容量なんだ?」
「容量? ん~~~」
トロは、マジック・バッグの収納率を見てみたら、「収納率24%」となっていた。
「うむ このオーク程度なら、4体は入るな」
「「「「おおおおお━━━!!」」」」
「オークが4体も入るだって?!」
「俺、それ欲しい!!」
「で、でも!高いんだろう?」
「さあなあ? これほどとなると、白金貨3~5枚はするんじゃないのか?」
「だろうな・・・・・・」
「いいなぁ・・・・・・」
「・・・・・・」
そんなにするのか?!
白金貨と言えば、100万Tiaだったはず。
彼らの話が本当なら、こんなショボイ物でも、日本円で300万円~500万円もするのかコレ?!
3㎥しか入らないんだぞ?
高すぎだろ!!
いや、常に馬車や荷車を利用する事を考えたら、それくらいは妥当な価格なのか?
見ると、彼らの荷車には、既にビッグ・フォレスト・オークが2体積まれていて、もう1体乗るか乗らないかってところだ。
なるほど。
マジック・バッグを欲しがるわけだな。
そう言えば、このマジック・バッグと同じものが、あと5つ残っている。
これは、現金獲得のチャンス!!
「さっきも言ったように、俺は旅の行商だ もし良かったら、格安でマジック・バッグを譲ってもいいぞ?」
「「「「本当か?!」」」」
「で、幾らなんだ?」
「そうだな・・・50万Tiaでどうた?」
「「「「ごじゅーまんてぃあ?!」」」」
「買ったあ!!」
「俺も!」
「俺も俺も!!」
「お、おい! 10万Tia足んねえぞ! 誰か貸してくれ!!」
「・・・・・・♪」
毎年ありがとうございます♪
話によると、マジック・バッグの相場は、300~500万Tiaもするらしいから、俺のマジック・バッグは、「とてもお求めになりやすい価格となっております!」的なもんだ。
約1割の価格なのだから、今買わなきゃ損だろう。
「やったぜ! これで今までの5倍は稼げるぞ!」
「だな!」
「しかし、どうしてこんなに安く譲ってくれるんだ?」
「あ、それ俺も気になる」
「ふむ・・・実はコレは、とある没落貴族の流し物なんだよ」
咄嗟にい嘘をついた。
「!! なるほど」
「へぇ~貴族のお下がりか 道理で!」
「あ! ヤバい代物じゃないから、安心してくれ! ただ、俺から流れたって事だけは秘密にしてくれよな」
「ははっ! 解ってるさ」
「うむ 言わない言わない」
「誰が言うもんか!」
「ふふふ 助かる」
「にゃあん?」
こうして俺は、200万Tiaを手に入れた。
しかし、俺はレベルの割には、結構な強さなんじゃないか?
オーク専隊の奴らが驚くほどなんだから。
とにかく、初めて実戦を経験したが、オーク専隊のお陰もあって、あっさり勝利した。
少し、自信がついたトロだった。
初めての実戦を経験したトロ。
今後、トロにどんな事が起こるのか。