表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/56

第49話 「寿司は寿司でも・・・」

久しぶりの生魚が食べられる!?

と、思いいや・・・(汗)




 ・⋯━☞リクツネフ魚解体場☜━⋯・



 トゥナを解体するであろう器具やデカイ台が巨大なテントハウスの中に設置されている。

 きっと、ここでトゥナを解体するのだろう。

 だが、包丁などの刃物は見当たらない。

 解体作業員らしき人も見当たらない。

 ただ、誰も居ない解体場らしき場所だけが、シーンと静まり返っていた。

 


「なんか臭いがすごいっすね・・・」


「うん すんごい生臭いわね」


「そりゃあまあ、そうだろうな

 魚市場ってのは、どこでもこんなもんさ」


「「「「ウオイチバ?」」」」


「ああ、いや、魚介類を沢山売ってる場所って意味かな?(汗)」


「「「「ギョカイルイ?」」」」


「うん! 魚類や貝類に、その他海で捕れる食える生き物を扱っている市場などをそう呼ぶんだが、聞いたことはないか?」


「「「「うぅん・・・」」」」(顔を振るナディー達)


「ん?! あれれ? こっち(この世界)では、『魚介類』って言わないのかな?」



 やはり、この世界では日本での当たり前の呼び名とかはされないようだ。

 『魚市場』とか、『魚介類』って言葉自体が無いようだった。

 あまり、日本での言葉や呼び名は出さない方が良さげだ。

 勇者召喚で巻き込まれたとは言え、『召喚者』と知られても面倒なだけだ。

 召喚者と知られて、自分の立場がどう転がるか分かったもんじゃない。



「それはそうと、トゥナの解体は今はやってないのか?」


「う~~~ん・・・それっぽい場所ではあるけど」


「あっ! 師匠っ! トゥナじゃないみたいですけど、別の魚を解体しているみたいですよ!」


「ほほお! 見に行ってみようぜ!」


「「「「はい」」」」



 トロ達が向かったのは、トゥナの解体場の敷地内の奥の方。

 どうやら、トゥナとは別の小さな魚類を捌いているらしい。

 トロは、ソチラへ向かってみた。



「あのぉ・・・すみません」


「ん? なんだい、人族の!」


「あ、えっと~トゥナの解体は、今はやってないみたいだけど」


「ああ、そりゃあな!

 トゥナの解体は、釣りから帰ってきた船から、上げたばかりのトゥナをすぐに捌くから、明朝から来てくんないと見れないぜ!」


「「「「えっ?!」」」」


「があぁあぁあぁあぁ~~~ん!・・・」



 時刻は夜の7時前。

 もうすっかり暗くなってしまったのに、ツゥナは明朝に海から帰ってきた船から下ろしてすぐに捌くので、こんな時間に来たって見れるはずがなかったのだ。

 それはそうと、よく見てみると、今しがた話しを聞いている魔族の人は、日本でもお馴染みの『鯖』によく似た魚を捌いていた。


 

『そうだ! 錆寿司が作れそう!!』



 トロは、瞬間的にそう思った。



「ねえ、お兄さん!

 その魚は、どんな料理に使うんだい?」


「はあ? なぁにを言ってやがんだ?」


「は?」


「これは、水性魔獣の餌だぞ?」


「ええええ~~~?!」


「「「「~~~?!」」」」



 見ると、本当に鯖にしか見えない。

 いや、鯖でしょ!! どう見ても鯖!!

 めちゃくちゃ美味そうな新鮮な鯖!!

 しつこい様だが、背中に鯖独特の模様のある鯖!!

 それがまさかの、水性魔獣の餌だってえ?!


 もったいない!! 実にもったいない!!


 トロは、直ぐさま鯖に似た魚を入手できないかと、交渉に入った。



「ちょ、ちょっといいかな?」


「あん? 今度は、なんだい?」


「その、鯖・・・じゃない、青魚を、少し分けてけれないかな?」


「・・・は? このシャパをかい?」


「ん? しゃぱ?」



 鯖に似た青魚は、どうやらこの世界では『シャパ』と呼ばれているらしい。

 やはり、日本の『鯖』とよく似た名前だ。

 もう、100パー鯖に違いない!

 シャパを捌いていた魔族のお兄さんは、キョトンとして目をまん丸くしていた。



「はっ? なんだって?

 こんな雑魚を欲しいのかい?」


「雑魚だなんて、それはとても美味い料理に使える立派な魚だよ!」


「は・・・はあ?! ちょと、アンタ正気かい?

 こんな青臭い雑魚なんて、食えたもんじゃないだろう!

 だから、従魔の餌にしかならないし、でなきゃゴミだぜ!」


「いやいやいや! マジ! マジでそれが欲しいんだよ!

 お金なら、言い値で払うからさ!」


「!・・・言い値かあ・・・

 まあ、そこまで言うなら・・・???」



 シャパを捌いていたお兄さんは、トロを怪訝な目で見ていたが、金が貰えるならと少し分けてくれた。

 でも、この世界ではシャパは雑魚扱いらしく、捨てるか従魔の餌にしかならないらしい。

 もったいない・・・

 トロは、鯖も大好きである。

 特に脂の乗った焼き鯖なんて、白ご飯と一緒に食べたら最高だ。

 でも今回トロが思い付いたのは、生で食べる方法。

 それは、『鯖寿司』である。

 しかもシャパを捌いているお兄さんは、シャパをご丁寧にも3枚に捌いてくれている。

 しかもしかも! めっちくちゃ新鮮!

 

『今食わずして、何時食うと言うのだ!』(名言?)


 と、言いたくなる。

 シャパは、雑魚扱いなのでとても安かった。

 一匹50Tia、日本円で50円?! やっす!! 昭和時代かよ!!

 異空間収納なら収納時は時間停止状態になるので、いつまでも新鮮なまんまだ。 まさに!『今買わずして、何時買うと言うのだ!』だな。

 大量に買って、保存しておこう!



「お兄さん! ここにあるシャパを全部売ってくれ!!」


「はっ? なんだってえ?! こ、これを全部かい?」


「うんうん! ああもし、従魔の餌が足りなくなるって言うなら、少し減らしてくれてもいいが」


「いや、それは別に構わない!

 従魔の餌になる雑魚は、他にも腐るほどにあるからな!」


「そうかい? なら、良かった!」

《腐るほどあるんかい!!》


「うむ ちょいと待ってくれよ? 今から数えるから・・・」



 この時シャパを捌いていた魔族のお兄さんは、自分でシャパを数えると言いながらもゾッとした。

 なにせ、数えるのもウンザリする程の数だ。



「ええと・・・ううん・・・ああもう面倒だ!」


「・・・へ?」


「ここにある箱に入ったシャパを、全部持ってけ!!

 シャパ1箱で1000Tiaでどうだ!!」


「おおおお~~~! ありがとう! 気前がいいねえ!

 買ったあ━━━っ!!」


「「「「~~~(汗)」」」」



 結局、シャパのドッサリ入った木箱を1箱で、1000Tiaで譲ってもらった。

 そんな箱を12箱も!!

 いったい何匹入ってるんだ? ざっと見ただけでも1箱40~50匹は入ってるぞ?!

 シャパ1匹50Tiaって言っていたけど、これはとんだお買い得だ!

 ここは、飛びついて損は無い! いや、今飛びつかなきゃ損をする!

 シャパを捌いていた魔族のお兄さんにとっても、今夜の酒代や小遣いができたのだから、ウインウインである。



「やったあ!! これは超の付くお買得だ!!」


「あははっ! 大出血サービスだあ!」


「何を言ってるんだよお兄さん? 本当は捨てるか従魔の餌になるばすの、金にならない雑魚だったんだろう?

 値がついてラッキーじゃないか?」


「あっはっは! 違いねえ!」


「「わはははははははっ!!」」


「「「「・・・(汗)」」」」



 トロと魔族のお兄さんとで、肩を抱きながら高笑い。

 いったい何なのか理解できないナディー達。

 なんでもいいが、その魚臭い手で肩に触るなよ(汗)

 ってな気持ちは飲み込んで苦笑いのトロ。

 だがここは、良い買い物をしたのだから、許そうではないか。

 だがナディー達は、何が何だか???の表情。

 そんなナディー達を他所に、トロは1人でパタパタと、何かを用意し始めた。



「お兄さん! ちょっと、この場所を借りてもいいかい?」


「ん? ああ、別に構わないが、何をする気なんだ?」


「うん! 鯖・・・いや、シャパ寿司って呼ばれる握り料理を作りたいんだよ」


「にぎり料理? それはいったい何だい?」


「ま、見ていておくんなせえ!」


「ふうん?」


「「「「・・・???」」」」


「よっこらしょっと! アッチッチ!」



 トロは、マジック・バッグから出す振りをして、異空間収納から釜に入った炊きたてで保存していた白ご飯を取り出す。

 そして、『種生成』で、『寿司樽』と、『すし酢』を生成し、ご飯を寿司樽にあけると、すし酢をぶっかけてかき混ぜる!

 ここで本来なら団扇で仰いで風を送るのだが、ここは異世界! 風魔法でそよ風を発生させて、寿司飯にはりとツヤを出す。

 そしてあっという間に、『寿司飯』ができた!


 ナディー達と、捌き屋のお兄さんは、興味津々とトロのする事を見ている。


 次に、シャパを異空間収納内で急速冷凍!

 時間魔法で24時間経過させて、寄生虫を死滅させる。

 念の為に、寄生虫などの異物を錬金術で排除。

 そして、そのままシャパを酢に浸して酢漬けにする。

 また時間魔法で数時間経過させてシャパに酢を浸透させて取り出す。

 取り出した酢漬けになったシャパの上に、白ご飯をたっぷり乗せて、巻きすで簀巻きにしてギュ~~~っと締めて固める!

 すると、いつの間にかワラワラと魔族の人達がトロの周りに集まって来る。

 そんな事になど気付かずに、トロはニコニコ笑顔でシャパ寿司を作り続ける。

 そして最後に、食べやすい大きさに切って完成!!



「ほら、出来た! シャパ寿司の完成だあ~~~!」


「「「「おおおおお~~~!!」」」」


「なんだいこりゃあ? 食えるのか?」 


「食えるよお! すんげえ美味いんだからあ!」


「ちょいと、お兄さん! それは、何なんだい?」


「え? これは~~~って、なんだこの人集り?!」


 ズラ~~~~~~~~~


 ワイワイガヤガヤ・・・


「ひぃええっ(汗)」



 突然、後ろから声をかけられて驚いた!

 いつの間にか人が集まって来ていて、トロの周りには人集りができていた。

 ナディー達も、小っちゃくなってオロオロ。



「え、あ、こ、これは、さ・・・じゃなくて、シャパ寿司って言って、ご飯とシャパの刺身を一緒に食べる料理だよ」


「「「「「ううん???」」」」」



 トロの説明は、完全に言葉足らずだった。

 皆んな、訳ワカメ状態に。


 だが仕方がない!


 プチ・コミュ障で、プチ・ナイーブなトロには、寿司の概念の無い人達に寿司の説明なんて高等技術なんぞは無理!!(なんじゃそりゃ?)

 そうとしか説明できないのだから、仕方ないっちゃあ仕方ない。

 


「と、とにかく!

 こんな風にして、酢でしめたシャパの刺身に、酢を混ぜたご飯で食べる料理なんだよ!

 とにかく美味いんだ! 気になるヤツは食べてみてくれ!」


「これをかぁ? 本当に食えるのか?」


「食えますよ!」


「なんか、生臭いな・・・」


「そりゃあ生ですから!」


「酸っぱい匂いがするな?」


「酸っぱい調味料を使ってますから!」


「腐ってんじゃね?」


「それわあ~~~仕方ない! 

 酢を使ってんだから! そういうもんだから!」




 酷い言われようである。

 だがそれも、仕方がない事。

 なにせこの世界、このリクツネフでは、生の魚と言えば『トゥナの赤身』なのである。

 今回トロが使ったのは、日本では『鯖』と呼ばれる魚に良く似た青魚であり、『生の魚と言えばトゥナ』という既成概念がある世界なのだから、青魚のシャパの生身を使った料理なんて、食べられる代物とは思えないのは必然だろう。

 ところが、そんな不穏な空気をバッサリと斬ったのはナディーだった。



「じゃあ、私が食べてみる!」


「お! やるねえ~~~ナディー」



 まず最初にシャパ寿司を食べたのはナディーだった。

 酢を使う料理や、寿司の概念の無い世界の人達にとっては、『酸っぱいモノは腐ってる』という反応がごく普通の感覚だ。

 ナディーもその1人だったはずなのに・・・。

 勇気あるナディーに清き一票を!!と言いたいくらいだ!

 ナディーは、1切れのシャパ寿司を口に放り込んだ。



 パクっ!


「あむ⋯あむ⋯うむ⋯うむ⋯⋯⋯おぃひい~~~♡」


「「「「「おおおおおおっ!!??」」」」」


「俺も! 1つ食わせてくれ!」


「俺も俺もっ!」


「アタシにもひとつおくれ!」


「ちょっと押すなよ!」


 ワイワイガヤガヤ・・・



 ナディーが1つ食べて反応が良かったせいか、集まって来た魔族の人達も一斉にシャパ寿司を食べ始めた!



「「「「「うんまあ━━━いっ!!」」」」」


「なんだこりゃあ! なんだこりゃあああ!!」


「シャパズシって言うんだぜ!」


「「「「「シャパズシ?」」」」」


「うんめっ! もっと食いてえ!!」


「はいはい! これからもっと作ってあげるから!(焦)

 タダで・・・(泣)」



 それからと言うもの、トロはシャパ寿司作りに追い倒された。

 さっき買ったばかりのシャパの箱も、半分にまで減ってしまった。

 炊きたてのご飯なんて、スッカラカンだ。

 しかも、タダで・・・(汗)

 トロにとって、『タダ』で人に施しなんて滅多に無い事。



「いやあ~~~美味かったぁ!」


「おうよ! 俺、こんな美味いモンを食ったのは初めてぜ!」


「なんだっけ? シャパズシってんだっけ?」


「そうそう! シャパズシ!!」


「そ・・・そうね シャパ寿司・・・

 お気に召したのでしたら光栄です・・・(汗)」


「俺、シャパザシの作り方覚えたぞ!

 シャパズシで稼いでもいいんじゃね?」


「シャパザシじゃなくて、シャパズシだ!」


「なあ、いいだろう? あんちゃんさあ?

 俺がシャパズシを作って商売しても・・・」


「あ、は、はい・・・もちろんで、ですます・・・はい(汗)」



 そりゃあ、作り方は簡単だ。

 何度も作らされたから、皆んな覚えたんだろう。

 本当なら、作り方を教えたのだから、それなりの礼金をくれと言いたいが、怖くて言えない。

 なにせ相手の方々は、平均身長2.5mの魔族の方々。

 トロの様な、身長もガタイも日本人平均そこそこで、ごくごく普通に何処にでも転がっている小石のようなごくごく普通の日本人のオッサンには、魔族の皆様方は恐ろしい鬼や巨人に見えるのだ。

『金をくれ』なんて恐ろしくて口が裂けても言えない・・・(汗)



「ありがとよ! 早速、道具を新調しなきゃな!」


「俺もやるぜ!」


「んまあ! 料理は女に任せなって!」


「そうはいかねぇぜ! なんだって早い者勝ちさ!」


「いんや! 何でも早いからって偉い訳じゃねえだろう?

 要は、味だよ味っ! 美味さが先さあ!」


「おおーっ! じゃあ、勝負しようかえ?」


「望むところだ!!」


「ちょっ・・・(焦)」


「「「「・・・(汗)」」」」



 トロ達は、ただただオロオロするだけだった。

 もう完全に、シャパズシはトロの手を離れて独り歩きしている。

 そのうちに、このリクツネフでは、『シャパズシ』がトゥナの刺身よりも有名になるかも知れない・・・

 そんななか、ロンデル達はまったくもって無関係を装って、各々が勝手に食い歩きしていた。

 ここリクツネフでは、魚以外にも肉料理もちゃんとあるからな。

 やはりロンデル達には、『魚よりも肉』のようだ。



「なんだか、トゥナの刺身どころじゃなかったな?」


「トロのせいじゃない!!(怒)」


「ひゃあ~~~ごめぇん(汗)」


「「「~~~(汗)」」」



 また、ナディーに怒られるトロだった。


折角の鯖寿司は、トロの口には1つ入らなかったとさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ