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豆は世界を変えます! ~アラフィフ オッサンの異世界チート堪能珍道中~  作者: 嬉々ゆう


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第47話 「リクツネフ」

いよいよ、リクツネフです。



 スドォ━━━ン!


「うわっ!「きゃあ!「おわっ!「なに?!「ひゃあ!」


 ドダダダダダダダッ!! ドス━━━ン!!


「なんだなんだ?! なんの音だ?! し、師匠!!」


「ああ、きっとロンデル達が格闘ゴッコしているんだろう?」


「「「「格闘ゴッコお?!」」」」



 トロ達の休憩している場所から約1キロほど離れた場所で、ロンデル達は本当に格闘ゴッコをしていたのだった。


 この世界の理なのか仕様なのか、敵を倒さなくても相手が降参したり相打ちで引く事でも経験値が入るためか、時々この様にロンデル達だけで格闘ゴッコをしている。

 だが普通なら、敵を倒さなければ経験値は入らない。

 これはきっと、トロと『繋がり』を持つ者だけの特権である。

 それでも互いに技を決める訳で怪我もするもので、格闘ゴッコが終わればロンデル達皆んなボロボロである。




 ・⋯━☞しばらく経って☜━⋯・



「ご主人様、ただいま戻りました!」


「おう! おかえり・・・って、なんだそりゃあ?!

 大丈夫なのか?! 皆んなボロボロじゃないか!!」


「おわあ━━━っ!!」


「ひぃえぇえぇえぇ~~~(汗)」


「だだ、だ、だい、だい、大丈夫なんですか?!」


「はははっ! なんのなんの!」


「いやあ!! 何それ━━━っ!! 血だらけじゃない!!」


「ブラッディ・ロンデルに、ブラッディ・ロプロプに、ブラッディ・ロキシー?」


「ロキシーにも血は無いんだ? 血が出てないもん」


「ぷはっ!(笑) そ、そうだな? 血が無いんだな? ぷぷぷ(笑)」


「血が無いのに、どうやって生きてるんだ?」


「なにそれ?! 僕はゴーレムですよ!

 血なんかある訳がないでしょう!

 ワイサさんもご主人様も酷い!!」


「「ごめんごめん(笑)」」


「2人ともバカね! 笑ってる場合じゃないわよ!

 貴女達も、やり過ぎよ!

 なんで、そんなになるまで、殺し合ってんのお?!」



 確かにナディーの言う様に、ロンデル達は血だらけのボロボロだった。

 ロンデルは片目を潰し、前足を骨折し、身体中傷だらけの血だらけ・・・

 ロプロプも翼を折られ、尻尾は食い千切られ、身体中傷だらけの血だらけ・・・

 ロキシーも全身穴だらけのズダボロだった。

 3人(匹?)とも、よくこれで生きていたな?と思うほどに。

 こんな姿を見せられちゃあ、そりゃあ誰だって殺し合いでもしたのか?と言いたくなるものだ。



「何を申しますかナディー殿!

 この様な事など、ちょっとした、じゃれ合いでござるよ!」


「ぜぇ~んぜん痛くないよお?」


「いやいやいやいやっ! すんごく痛々しいからっ!!

 それに、血いっ! 血ぃ、いっぱい出てるからっ!!

 HPもかなり減ってるからぁ~~~っ!!」


「ひぃえええっ(汗) トロさん! はやく、回復を!!」


「おっ、おうっ!! ハイ・ヒール!!」


 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



「いやあ、今回も熱闘しましたな!」


「うむ! なかなか身になったぜ!」


「面白かったあ! レベルも上がったあ~~~♪」


「このバカたれどもがあ~~~っ!!」


「「「ひぃええ~~~(汗)」」」



 やり過ぎたロンデル達。

 流石にトロも呆れを超えて怒り、ロンデル達を叱るのだった。




 ・⋯━☞またしばらく経って☜━⋯・



「さあ! また行くとしますか!」


「「「「はいっ!!」」」」



 そしてまた、トロ達はリクツネフに向かって整地しながら歩き出す。

 その時、後ろから2頭引きの獣車が1台やって来た。

 従魔はリザード・スプリンターのようだ。

 カッコ良い!

 恐竜のラプトル属を太くしたような姿に似た、背丈がダチョウほどの大きさの従魔だ。



 ガラガラガラガラ・・・


「おおお~~~いっ!!」


「おっ?!」


「「「!!・・・」」」


「どうどう~~~!!

 おやおや、人族のお嬢さん達! 君達もリクツネフへ向かってんのかい?」



 トロのすぐ横に獣車が停車する。

 そして獣車を操る御者の魔族の男がトロ達に声を掛ける。

 見た目は人族にそっくりだが、額に小さな角が1本生えている。

 鬼人族だろうか。

 身体付きも人族とほぼ同じくらいの大きさで、魔族にしては華奢な身体付きだ。

 根っからの商人なのだろう。

 獣車を引くラプトルに似た魔獣とは別の、始祖鳥に似た姿の翼の生えた従魔に乗った魔族の護衛が3人ついていた。

 こっちもまた、カッコ良い♪



「あ・・・ああ、そうだ

 俺達は、イスヤリヤ王国から来た冒険者だ」


「「「「どうも・・・」」」」

 頭を下げるナディー達。


「へえ~そうかい?

 ところで、お嬢さん達がこの道を綺麗にしてくれてたんだな?」


「!!・・・ま、まあ・・・そうだね(汗)」


「「「・・・(汗)」」」


「もしかして、魔王様からのご依頼なのかい?」


「え? ああいや、俺達が勝手にやってるんだが・・・(汗)」


「なんだって?! もしかして、どっからも報酬も無しでかい?」


「そ、そうだね・・・(汗)」


「「「・・・(汗)」」」



 バレた!・・・(汗)

 もう少しで、リクツネフに着く頃だったのに。

 もうすぐリクツネフに着くと浮かれていたせいか、獣車が近付いて来るのに気付かなかった。

 これまで、とんと他の冒険者達や旅人や行商人や獣車に出会わなかったのに、リクツネフ付近にまで来てこれか。

 誰にも知られずに整地をしながらリクツネフまで行くつもりだったのに、どうやらそれはもう終わりのようだ。

 トロ達が道を整地していると知られたら、また他所でも整地してくれと依頼されそうな気がしていたから知られたくなかったのに・・・

 いや下手をしたら、勝手に国土を変えてしまったからと、罰を受ける可能性も?



「あ、あの・・・この事は他では内密にしてくれませんか?」


「おや? それは、どうしてだい?

 結構な国への貢献じゃないか?! なぜ、わざわざ?」


「い、いや、その・・・これは俺達の気まぐれでな

 轍の凸凹に足を取られて捻挫したのに頭に来て、それで勢い余って旅のついででやってるだけだから・・・(汗)」


「ほお? それはまた、奇特な・・・」



 奇特な・・・か。 そりゃそうか。

 轍に足を取られて捻挫して頭に来たって理由だけで、国土の一部を整地・・・変えてしまうだなんて、下手すりゃ罰せられるかも?

 それに、たとえ通りすがりの人に賞賛されたとしても、どこからも報酬も貰えないのに、気でも狂ったか?と思われても仕方ない。

 仮に国に貢献したからと讃えられ報酬も貰えたとしても、絶対に他の地域の国土も整地してくれと頼まれるのは必然だろう。

 好きでやってるから良いものの、頼まれて仕事となると流石にダルいし面倒くさい。

 趣味が仕事になるとダルくなるのと似た感じか?



「だから、もしこんな事が知られたら、他所でも整地してくれって依頼されそうで・・・(汗)」


「なんだ、そんな事かい?

 しかし、勿体ないな・・・

 誰がやったのか、誰が依頼したのかとは噂にはなっていたが・・・

 わっはっはっ! いいさ、誰にも言わないから安心しておくれ!」


「そ、そうか・・・それは有難い(汗)」


「「「・・・ほっ」」」


「ところで、もうすぐリクツネフ伯爵の誕生日で、リクツネフで『釣り大会』が行われるのは知ってるかい?」


「釣り大会?! いや、知らない・・・」


「「「「?!・・・」」」」


「そうかい それならアンタ達も、釣り大会に参加してみたらどうだい?

 リクツネフ近海では、『トゥナ』が良く釣れるんだが、刺身にして食うと美味いんだぞ!」


「刺身っ?!」


「「「サシミ・・・???」」」



 トロは、刺身と聞いて目が輝いた!

 この世界にも、刺身はあるようだ。

 魔族の商人の話しによると、『トゥナ』とは、体長10mを超えるバカデカい真っ黒な魚らしい。

 商人が見せてくれた釣り大会のポスターらしき紙に描かれた挿絵を見たイメージとしては、ジンベイザメほどの巨体をした『マグロ』に似た巨大なずんぐりむっくりした魚で、聞くところによると、リクツネフではトゥナの刺身料理が有名らしい。

 そして釣り大会で釣られた最も大きなトゥナを、リクツネフ伯爵に献上するのだそうだ。

 それに、釣り大会の1位から3位までの入賞者には、冒険者や商人なら誰もが喉から手が出るほどに欲しいと言う景品が貰えるそうな。

 3位には『マジック・バッグ8㎥』、2位には『胡椒などの数種類のスパイスの山盛りセット』、そして1位には『女装役剤or男装役剤100year』なのだそうだ。


 いらねえ~~~・・・(汗)


 正直、どれもトロ達にとっては別段魅力を感じない物ばかりだった。

 マジック・バッグなんて、トロの種生成スキルで、もっと性能の良い物が簡単に作れてしまう。

 胡椒などのスパイスも、トロが種生成で簡単に作れてしまう。

 そして1位とする女装役剤なんて、以前に教会で買った女装役剤を元に種生成で作ったコピー品を持ってる。

 男装役剤は持っていないが、たぶん種生成で作れるだろう。

 トロ達にとっては取るに足らにい物ばかりだが、この世界の人達にとっては、とても価値のある物なのだそう。

 特に女装役剤や男装役剤は、どんな怪我も病気も治してしまうので、存在すら怪しい製法の失われた『エリクサー』よりも重宝されているんだとか。

 所によると、女装役剤をエリクサーと呼ぶ所もあるとか。



「いや、おっと・・・これは失敬だったかな?

 お嬢ちゃん達のような小さな身体では、トゥナ釣りなんてちょいと無理だったかも知れないな?」


「いや・・・(汗)」


「「「「・・・」」」」



 確かに、無理だ。

 だが、ちょっと、ムカっときた。

 たとえ大の大人だとしても、いきなり初めての釣りで、クジラみたいなデカイ魚を釣るのなんて無理だ。

 だいいち、参加するのは皆んな力自慢な身体の大きな魔族達ばかりのはず。

 トロ達の様な小さな身体の女の子ばかりでできるものではない。

 釣り大会には、参加は難しいだろう。



「いや、俺達は参加しないよ・・・」


「そうかい? ま、見るだけでも楽しめるはずだから、行ってみるよいい」


「ああ、はい ありがとうございます」


「じゃあ、お先に!」


「はい! お気をつけて!」


 ガラガラガラガラ・・・


「「「「「・・・」」」」」



 そう言って魔族の獣車は行ってしまった。

 釣り大会か・・・面白そうだが、トロ達には無理っぽい。

 別に参加しなくたって、トゥナの刺身にはきっとありつけるだろう。

 トロは、早くリクツネフへ行って、トゥナの刺身が食べたくて仕方がなかった。

 

 そして、ようやくリクツネフに到着。

 その頃には、もう日が傾き始めていた。

 トロは、変身魔法で、オッサンの姿へ戻る。

 そしてトロの従魔のロンデル達と、ナディーの従魔のシシー達も、魔獣の姿へと戻る。




 ・⋯━☞リクツネフ西詰☜━⋯・



「こんにちは! リクツネフへようこそ!」


「はい 俺達冒険者5名と、従魔7体です」


「ふむ では、冒険者プレートを拝見」


「はい・・・」



 トロ達は、門番に各々が冒険者プレートを見せ、トロとナディーは従魔の通行料を支払った。

 流石は魔族領だ。

 ロンデル達の魔獣である真の姿を見ても、驚きもしなかった。

 もし、人族の領地なら大騒ぎになるところだ。

 そして、門を潜り抜けると、そこはまるで王都のような発展した大都会だった!

 石やレンガ造りの高い建物が立ち並び、道路は石畳で綺麗に整地されており、沢山の魔族達や獣車が忙しげに行き交う。

 人族の姿もチラホラと見えるが、魔族達と比べると圧倒的に少ないようだ。

 それに、魔族達は誰もが人族に対して、ごくごく普通に接し話し合っている。

 逆に人族領に居る魔族だと、人々は物珍しさで、2度見する人も居るくらいなのに。


 それより驚いたのは、上下水道がチキンと整備されているのか、独特の汚物の臭いなどや、水の腐ったような臭いなどが、コレっぽっちもいない。

 清潔感のある、綺麗な街並み。

 建物の中の灯りも魔導具なのか、ランタンやロウソクのような薄暗くはなく、まるで蛍光灯やLEDのように明るい。

 発光魔晶石で光るのか、街灯まで設置されている。


『発光魔晶石』とは、魔晶石を灯りように直接魔導具化させたもので、時間設定やスイッチ設定で光るように作られたものらしい。

 看板などもネオンのようにピカピカと光り輝きとても鮮やかだ。

 人族領では、ほとんど お目にかからないモノである。

 その点だけ見ても、魔族領は人族領よりも発展していると言える。


 店の前では、イートスペースが設置されており、魔族達が酒を飲み、肉焼きや魚料理をつまみ、ワイワイと賑やかだ。

 公園らしき場所には、公衆トイレや水飲み場まで設置されていて、水道水もそのまま飲める浄水のようだ。

 まさに、トロの思い描く理想な光景だった。

 


「すげぇな! おい!」


「すごいっすね!」


「なにここ?! 綺麗~~~」


「賑やかですね」


「素敵ですわぁ」


「じゃあ師匠! 冒険者ギルドへ行くのですね!」


「うむ ああいや、先ずは宿を確保しよう!

 部屋が取れなかったら、また野宿・・・野営だからな

 もうそろそろ、魔物や盗賊に邪魔されずに、ゆっくりとベッドで寝たいし・・・」


「確かに・・・」


「トロの作ったテントなら、中は普通の部屋みたいだから、私は別に構わないんだけど」


「ああ、まあ・・・(汗)」



 そう・・・。

 トロが種生成で作ったテントとは、外見はごく普通の1人用の小さな三角テントなのだが、中は空間拡張魔法が施されており、京間10畳ほどの広さがあり、しかもトイレにバスにキッチンに冷蔵庫、そして快適装置のエアコンなども完備されており、ベッドも1人ずつシングルが用意されており、パーテーションで区切られているのでプライバシー概念も考慮されていて、一端(いっぱし)のビジネスホテル並の快適さである。

 ただ、あくまでも野営用なので、敵襲に備えて外からの音が丸聞こえなので、風音や雨音がとてもうるさくて、人によっては安眠できないことも。



「とにかく、先に宿屋を確保しよう!」


「「「「はい!」」」」




 こうしてトロ達は、宿屋を探すのだった。




 ・⋯━☞リクツネフ・門前宿屋前☜━⋯・



「ったあ~~~! なんだこりゃあ?!」


「うっわあ~~~! デッカイですね師匠!」


「あ、ああ・・・観光ホテルかよ(汗)」


「マジ?! トロ! ねえマジ?!」


「落ち着けナディー! 一応ここは宿屋だ」


「トロさん、ここって本当に泊まれるの?」


「そ、そうよう もしかして、冒険者達は追い出されてりしない?

 貴族だけ泊まれるような、高級宿屋だったりしない?」


「あ、ああ、たぶん・・・」



 ナディーとワイサとクレオが心配するのも理解できる。

 イスヤリヤ王国の王都でも、貴族や豪商しか泊まれないような高級宿屋があるが、それに匹敵するくらいのご立派な大宿だ。

 そんな高級宿屋では、たとえ貴族階級を持つ上級冒険者でも、門前払いされる事もあると聞く。

 そんな高級宿屋に上級冒険者達が泊まる場合は、貴族のように正装を着なきゃ入れないとかも聞いた気がする。

 つまりは、冒険者のような血生臭い格好で来るなって事なのだろう。



「なかなかの大きさですわねぇ!

 私の屋敷よりも大きいですわぁ~~~!」


「落ち着けエヴァ! 当たり前だ 一応ここは宿屋だ

 個人の屋敷ではなく、沢山の人達が泊まる建物だからな」



 何が当たり前なのか、自分でも良く分からない事を言ってしまうトロ。

 流石のトロでさえ、うろたえてしまった。


 リクツネフ西詰から最寄りの宿屋を見付けたが、そこは宿やと言うよりも、外見は超高級な昭和風の匂いがプンプンするような、見た目は『巨大観光ホテル』だった。

 リクツネフとは、漁業も大いに発展しているが、実はとても純度の高い魔晶石が採れる魔晶石鉱山があり、元々魔力の高い地域でもあるため、わざわざ掘らなくてもポンポンと魔晶石が出てくるわで、魔晶石の産地としても発展した街であった。

 なので、『リクツネフ魔晶石』は特に純度が高く保有魔力量も多く、人族のイスヤリヤ王国とも高値で取り引きされている。

 冒険者達も沢山行き来するのだが、やはり商人が多くやって来る街でもある。

 もちろん、造船業も発展している。

 この街で、自家用の船を造ってもらうのも良いかも?



 『魔晶石』と言えば、『妖精』である。


 魔晶石は、長年地中で濃い魔力に晒されていると、やがて自我を持ち妖精として生まれ変わると言う。

 そして、稀に妖精がダンジョンのコアとなり、ダンジョンを生成する事もあるのだとか。

 その他には、魔女や魔法使いと契約して、魔女や魔法使いのパートナーになる妖精も居るとのこと。

 魔女や魔法使いのパートナーとなる妖精とは、妖精化していない魔晶石の内に契約を行うことによって、魔晶石から妖精として生まれる(孵化させる)らしい。

 魔晶石との契約と言っても、肌に離さず卵を温めるように何日も持ち歩けば、妖精として孵化するだけなんだとか。

 そうする事によって、魔晶石保持者の念が込められ、やがて自我が生まれるんだとか。

 契約した妖精は、魔女や魔法使いに容姿も思考も、まるで実の子供のように、そっくりになると聞く。

 トロは魔女や魔法使いではないが、厳密には賢者でもあり、魔女や魔法使いに近い職種だと言えるので、もしかしたら妖精と契約できるかも知れない。

 いつかは妖精と契約できるのか試してみたいと考えるトロだった。


 そして、リクツネフでは、『水系の魔石』がよく採れると聞く。

 リクツネフ領地には、『リクツネフ・ダンジョン』、『水の妖精の泉』などがあり、水系の魔石が採っても採っても、次から次へと湧いて出てくるのだと言う。

 なので、放置し過ぎると、魔石から魔晶石へと成長し、妖精がわんさか生まれてしまうので、水系の魔石の内に採取して、水系の魔導具の電池的な使用で消費しないといけないらしい。

 一旦空となった魔石は、『無属性』となるので、僕の用途にも使われるのである。

 それでも消費が追い付かないので、かなりの量を領外へ輸出しているとも聞く。

 また、リクツネフは、他の地よりも水系の妖精が多い事から、『水の妖精の街』とも呼ばれているとか。


 街中を見ると、所々で妖精の姿を見掛ける。

 だが、どの妖精も魔女や魔法使いと契約している様子がなく、フリーな妖精達のようだ。

 そんな妖精達も、自由に暮らしている街とは、なんとも素晴らしい!


 そんな事より、今はこのホテル・・・じゃなく宿屋に泊まれるかどうかが問題だ。

 よく高級ホテルなんかでは、ラフな格好で入ると追い出されるイメージがあるが、ここは大丈夫であろうか?

 とにかく、チェックインできるか入ってみる事にした。




 ・⋯━☞リクツネフ・宿屋受付☜━⋯・



 宿屋のエントランスも、ご立派なホテルのようだ。

 受付けも、数人の受付嬢が居て、誰に声を掛けようかと悩むほどだ。

 とりあえず、真ん中の受付嬢に話し掛けてみる。



「一般5名と、従魔7名ですが、部屋は空いてますか?」


「はい 少々お待ちください・・・

 ただいま空いている部屋は、全て3階となりますが~

 大部屋の6人部屋が2部屋と、4人部屋が2部屋と、2人部屋が4部屋と、あと~・・・」


「では、6人部屋に私トロと従魔4人

 4人部屋にコチラの女性のナディーとその従魔3人

 あと4人部屋にコチラのワイサとクレオとエヴァの3人でお願いします」


「畏まりました

 では、その部屋割りで受付けさせて頂きますね!

 ここに部屋の鍵を持つ人の名前を記入して下さい

 これが、各部屋の鍵です」


「はい・・・」


 カキカキ・・・



 すんなり受け入れられて、ホッとするトロだった。


 受付嬢の説明によると、この巨大ホテル・・・じゃなく、宿屋は、1階がエントランスから受付、そしてテーブルと椅子の並んだホールの他に、軽食がとれる小さな店が数店と大広間。

 奥には下へ降りる階段があり、地下には大きな大浴場のある湯屋まであるようだ。

 まるで老舗の大旅館並の造りだ。

 食事は、『大広間』(大食堂)で皆んなで食べるのも良し、小店で食べるのも良し、宿屋の隣の大食堂で食べるのも良し、街に出て出店で食べるのも良し。

 なんだか旅行気分で、楽しくなってくる。


 そして2階は、多目的ホールや、小さな様々な店舗が幾つか入ってるようで、3階から最上階の5階までが客室となっているようだ。




「3階へは転移魔法陣をご利用ください」


「「「「?!・・・」」」」


「転移魔法陣?」



 受付嬢が手で示した方向に視線を向けると、壁に1~5の番号の書かれたプレートが貼られており、その下に転移魔法陣が描かれていた。

 そしてその隣には、立ち入り禁止と書かれたプレートが壁に貼られていて、そこには転移先の魔法陣がか描かれている。

 また、空を飛べる人用に、上の階と地下へ抜ける吹き抜けのような造りが設備されており、転移魔法陣を使わなくても、上階や地下へ移動できるようにもなっている。

 一応上吹き抜けの開口部には、手摺が設置されていて落下防止の対策らしい。

 

 

「移動したい階の番号の転移魔法陣の上に立ち、手を1回叩けば転移魔法が発動いたします

 一度に5人までが転移可能な仕様となっております。

 また、隣の転移先魔法陣には立ち入らないでくださいね

 もし、転移先の魔法陣の上に人が居りますと、上や下の階から転移してくるお客様と衝突する危険があるため、転移できなくなる仕様となっておりますので」


「ほお・・・なるほど 安全対策だね?」



 そう言って、ふと転移魔法陣にもう一度視線を向けたら、戻りの転移先魔法陣が赤く光ったかと思えば、キュン!と電子音に似た音が鳴り、人がパッ!と現れる様子が見れた!

 転移魔法陣が発動すると、赤く光るようだ。

 なかなか面白いものだ。これぞファンタジー♪


 トロは、鍵を受け取ると、ナディーとワイサに各部屋の鍵を渡し、3階へと昇る転移魔法陣へと入る。

 そして、同室のメンバー達全員が転移魔法陣に入ったのを確認すると、1回だけ手をパチン!と叩く。

 すると、フワッ!と身体に一瞬無重力を感じたかと思えば、もう3階の転移先魔法陣の上に立っていた。



 パチン! フワッ!


「うおっ?!」



 ・⋯━☞宿屋3階通路端☜━⋯・



 パッ!


「「「「「おおおおおお~~~!!」」」」」

「「「「「「うおおおおお━━━っ!!」」」」」」


「あっはっは! これは面白い!」


「凄いっすね師匠!!」 


「面白〜い! 私、転移魔法なんて初めて!」


「トロさん! もう一度転移してもいいですか?」


「クレオ君 それは、やめておきなさい 田舎者みたいで恥ずかしいから(汗)」


「ええ~~~(汗)」


「不思議ですわあ~~~!

 もう一度、試してみたいですわあ~~~!」


「・・・(汗)」




 皆んな、初めての転移魔法で興奮してワイワイと大騒ぎに。

 でも、他のお客さんへの迷惑になるので、なんとか皆んなを落ち着かせる。

 でも、トロも本当は、もう一度転移魔法を試したかった。

 適当に理由をつけて、転移魔法陣に乗ってみようかと思ったが、今はやめておこうと興奮を抑えた。

 トロにとっても転移魔法は、遊園地のアトラクションのように楽しく興奮する乗り物だった。(※乗り物ではありません)

 またその内に、種生成スキルで、色々なタイプの転移魔法を作ってみようと思った。



「さて、俺達の部屋の番号は『301』だな」


「私達は『302』ね!」


「俺達はナディーさんの隣の部屋で『303』です」



 3階は大部屋と4人部屋の階となっており、4階は2人部屋ばかりとなり、5階は全てが1人部屋となっているようである。

 トロの持つ部屋の番号は『301』だった。

 端部屋のようだ。

 扉のある間隔からして、どうやら両端の部屋が大部屋となっているようだ。

 そして両端の間の部屋の全てが4人部屋となるようだ。

 ナディーの持つ部屋の番号は『302』。

 そしてワイサの持つ部屋の番号は『303』だった。

 運良く続き番号で部屋が空いていて良かった。

 トロの大部屋は1泊5万Tiaだったし、ナディー達とワイサ達の4人部屋は1泊4万Tiaだった。

 一介の冒険者達には、ホイホイと払える額ではない。

 部屋が空いているのも、この宿屋が高級宿屋だからに違いない。

 トロも一応は金持ちである。

 1泊数万Tia程度なら、何年でも居座る事が平気でできる。

 でも、冒険者として悪目立ちするのは、ちょいと痛い。

 明日は、もっと安い宿屋を探してみようと思ったトロだった。


 トロとロンデル達は、一旦部屋に入ると装具を外して、軽装に着替え、マジック・バッグだけを肩に掛けて部屋を出る。




 ・⋯━☞『301』部屋の前☜━⋯・



 ・・・パタン!


「さて! これから、どうする?」


「釣りはしないのですかご主人様?」


「うんうん! なかなか面白そうですな!」


「僕もツリーやってみたい!」


「ロキシー ツリーじゃなく、『釣り』だよ」


「ツリ? なんでもいいですけど、お魚食べたいです」


「おさかにゃ?!」


「「「「おおっ?!」」」」


「ミケが、しゃべったあ!!」


「まだ少し・・・人の言葉難しいにゃ・・・」


「「「「うおおおおおお~~~!!」」」」


「これは、驚いた! 喋るんですね、この猫!」


「ふむ 身体のサイズを変えるだけでなく、言葉も話せるとは・・・」


「だな? なあ、ミケ?

 もしかして、変化(へんげ)スキルもあるようだが、人の姿には変化できないのか?」


「できますにゃ・・・よ? でも、耳と尻尾が・・・隠せないにゃよ」


「おおおおおお~~~!! 猫耳ってか?!」


「「「・・・???」」」



 トロは実は、『猫耳』も大好物⋯いや、大好きである。

 ミケを思いがけずティムしてしまってから、リクツネフに入るまでは、ずっとビッグ・フォレスト・キャットの姿のまんまだったし、変化(へんげ)スキルも【変化(へんげ)Lv2】だったので、人の姿にはまだ変身できないものとトロは思い込んでいた。

 なので、もう少し身体のサイズを小さくできないかとミケに聞いたら、普通のフォレスト・キャットサイズにまで小さくなってくれたので、てっきり『変化(へんげ)Lv2』では身体のサイズの変更しかできないものと思っていたのだ。

 そして今しがた、ミケが言葉をある程度話せるのと理解できると知り、トロ達も驚いたのだった。



「ムフフ・・・で、では、人の姿に変化しくみてくれないか?」


「分かったですにゃ!」


 フワッ・・・


「「「「?!・・・」」」」



 ミケは、フワッと浮くように二本足で立ち上がると、両前足を胸に当てて、何やらお祈りをするかのように目を瞑った。

 そして・・・



 ・・・ポンッ!


「「「「おおおっ!!」」」」


「ど・・・どう、ですかにゃ?」


「「「「おおおおおおおお~~~!!」」」」


「いいっ!! すんごくいいっ!!❤

 ・・・けど、素っ裸じゃないか!!」


「ああ・・・それは・・・うにゅ?」



 ミケは、猫耳娘の姿に変化した!

 ところが、真っ裸だったのだ!

 当たり前である。

 元々ミケは、服など着てはいなかったのだから。

 人の姿に変身すれば、当然裸である。

 だが不思議と、人の姿に変身したロンデル達は、服を着たまま元の魔獣の姿に戻っても、着ていた服がいったい何処へ行くのか消えてしまう。

 そしてまた人の姿へ変身すると、あら不思議と服を着た人の姿へと変身する。

 なので今後ミケが人の姿の時に服を着ていてなら、獣から人へ姿を変えた時には、きっと服を着た状態になるはずだ。たぶん。

 トロにもその理由は説明も理解もできないが、そういう仕様なのだから仕方ない。

 トロ達は、慌ててミケを取り囲むようにしてミケを押し込むようにして部屋に戻った。




 ・⋯━☞宿屋トロの部屋☜━⋯・



「コッチの方が似合うのでは?」


「うんや! この着物の方が似合いますな!」


「ええ~~~! コッチの魔女っ娘の服の方が似合うよお!」


「お前達、そろそろ決めてあげてくれないか?」


「「「はあい?」」」


「・・・もう、なんでもいいにゃ(汗)」



 ロンデル達3人は、ミケの服がどれが似合うかと、ミケを着せ替え人形状態に。

 最初はトロも乗り気だったが、流石に2時間以上も着せ替えをしていたら飽きてくる。

 もう部屋の中は、トロが種生成で作った様々な洋服や着物で足の踏み場も無い状態になっていた。

 するとそこへ・・・



 コンコン!


《トロー! 何やってんの~~~?

 1階の大食堂でご飯食べようよ~~~》


「あ! はあ━━━い!

 おいおい、ナディー達が来たぞ!

 ロンデル! ロプロプ! ロキシー!

 もういい加減に早く決めてやってくれ!」


「「「おうおうおう・・・(焦)」」」


 パタパタパタ・・・




 結局、ハイネックの上にオーバーオールとなった。

 意外と似合っていて可愛い❤

 これで帽子のツバを後ろ向きにして被り、手にスパナでも持たせたら、いっぱしの猫耳娘のメカニックだ。(トロの好み)



《トロ━━━! まだなの~~~!》


《師匠~~~!!》


「あ、はぁ━━━い!! もう出るから~~~!(焦)

 お、おい! お前達も急げっ!!」


「「「はいっ!!」」」


「あみゃあ~~~(汗)」


 パタパタパタパタッ・・・



 トロ達は、ミケにハイネックを着せて、その上にオーバーオールを着せて、デニム生地の帽子を後ろ向きに被せて、靴は安全靴風の網紐長靴にしたった!

 

 うん! すんごい似合ってる! 超~可愛い❤

 更にトロは、ミケに『錬金術を覚える豆』と、『鍛治を覚える豆』と、『機械整備を覚える豆』と、『総合技術を覚える豆』を10個ずつ食べさせ、【錬金術Lv4】と【鍛治Lv4】と【機械整備Lv4】と、【総合技術Lv4】を覚えさせた!

 するとなぜだか称号に、【総合エンジニア】が追加されていた!





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 ・⋯━☞STATUS☜━⋯・

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 名前 ミケ

 性別 雌

 年齢 31

 種族 獣族 (ビッグ・フォレスト・キャット)

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 状態

【健康】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 LV 388

 HP 388

 MP 488

 STR 370

 ATK 371

 DEF 390

 DEX 353

 INT 705

 MAT 408

 SPD 573

 LUK 100

 EXP 4500730

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 習得魔法

【全ステータス強化魔法Lv5】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 習得スキル

【威嚇Lv4】【ひっかきLv5】【噛み付きLv4】【体当たりLv3】

【猫パンチLv5】【猫キックLv5】【変化(へんげ)Lv2】

【言語識字理解Lv2】【索敵Lv2】【思念伝達Lv2】【隠密Lv5】

【ライドLv1】【錬金術Lv4】【鍛治Lv4】【機械整備Lv4】

【総合技術Lv4】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

 称号

【賢者トロの従魔】【キマイラ・スレイヤー】

【総合エンジニア】

 ・⋯━━☆★☆━━⋯・

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「ほえ?!・・・総合エンジニアだって!!

 かっ・・・カッコいいっ!!」


「「「んん???」」」


「ああいや、なんでもない!!

 さ、さあ、行こうか!」


「「「はい!」」」


「はいにゃ!」




 こうしてトロ達は、1階の大食堂へ向かった。

 そして、夕食を食べ、暗くなった夜の街へ出掛けた。



魔族領リクツネフは、人族の街よりも発展していた。

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