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第12話 「やっべ!女に決まっちゃった!」

 



 ロプロプの道案内で、半日ほどで、「サイチ村」に到着。

 

 

 

••✼••サイチ村門前••✼••



 やっと、サイチ村のもん前に到着。

 と、いきなり「冒険者プレート」を見せろと門番が言う。

 そんなの持ってねぇぞ?



「ここは、トスター領のサイチ村だ

 冒険者プレートを拝見させてもらう」


「へ? 冒険者プレート?」


「「・・・?」」



 『冒険者プレート』

 トロは、初めて聞いた固有名だ。



「冒険者ではないのなら、通行税を払ってくれ」


「通行税?!」



 そっか! なるはど。

 この村は既にトスター領。

 村に入るのに、「通行税」を払わなきゃいけない!

 確か冒険者なら、その通行税を免除されるとコチマ村の宿屋の主人に聞いてたっけな。



「冒険者ではないのなら、1人1000Tiaだよ」


「あ、はい」


 チャリーン!



 トロは、3人分の通行税の銅貨3枚の3000Tiaを門番に払った。



「あの・・・」


「はい?」


「「・・・・・・?」」



 不意に、門番に声を掛けられた。

 なんだろう?

 俺に何か不手際でもあったのだろうか?

 


「君は、軽装備で冒険者の様な(なり)だが、冒険者プレートは持っていないのかい?」


「あ~~~私は、冒険者ではありません

 こんな格好をしてますが、旅の行商です」


「旅の行商?!」


「「「「?!・・・」」」」


「なっ?! ちょっ・・・(汗)」



 そんな大きな声を出さないでくれ!

 ほら! 不用意に注目を浴びてしまったではないか!!

 いったい、何をそんなに驚いてるんだ?


 などと、訝しげに門番を見ていたら・・・



「一見、冒険者風で、旅の行商の金髪碧眼の可憐な美少女と・・・」


「は?・・・」


「黒目黒髪の東方肌の美少女と・・・」


「にゃあ?」


「茶目赤髪の南方肌の美少女と・・・」


「クワァ?」


「これはこれは、もしかしてもしかして・・・

 貴女は、エッセン男爵様の婚約者のトロ姫様では?」

 

「んなんっ?!」



 なんだってえ?!

 今、「トロ姫様」ってゆった?

 俺、いつの間にか「お姫様」扱いになってる?!

 あらまやんだぁー!やめてけれー!!

 恥ずかしすぎるぅ~~~!

 くっ・・・殺せっ!



「「?!・・・」」


「な、なんでその事を?・・・

 って俺は、エッセン男爵の婚約者とは違うからね!!」


「はっ!?

 ああいや、ですが国中でその話題で・・・」


「いやいやいや、アイツが勝手に言ってるだけだからぁ!!」


「いや、しかし・・・ええ~~~?」

 トロの顔を覗き込もうととする門番。


「うっ・・・(汗)」

 堪らず顔を背けるトロ。


「ご主人様 ()りますか?」

 ロプロプの腕がワイバーンの腕に変わる!


「へあっ?! こらっ! 待て待てっ!

 なんでお前はすぐに・・・」


「貴様は敵か? あ゛あ゛ん?」

 食ってやろうか?の目で睨むロンデル。


「!!・・・しっ、失礼しました(汗)」

 慌てて目を逸らし俯き謝罪する門番。


「「「「ヒソヒソヒソヒソ・・・」」」」

 ざわめく周囲の人々・・・


「んなぁ~~~~~~(焦)」

 

 

 ほらあ!!

 アンタが余計な事を言うから、結局目立ってしまったではないか?

 マズイ・・・ひっじょぉお~~~にマズイ!

 これだけ注目を浴びてしまうと、顔も覚えられてしまう可能性もある。

 いや、俺達3人揃っていたら、絶対にバレる!!

 ってか、バレてるし!


 仕方ない・・・


 トロ達は、逃げるように路地裏に入り込んだ!



「失礼しましたあ! ほら行くぞ!」


「「はい! ご主人様!」」


 パタパタパタパタッ!




••✼••路地裏••✼••



「ご主人様! いったい何を?」


「どうかされましたか?」


「いかんいかん! マズイぞ!

 俺がエッセン男爵の嫁になるって噂が、予想以上に広まってやがる!」


「「アヤツの嫁になるのですか?!」」


「誰がなるかあ━━━!!」


「「申し訳ありません!」」


「面倒な事になる前に、変身するぞ!」


「「はい?」」


「我らは既に、変身しておりますが?」


「ふんふん!」


「いや、そうじゃない

 今の姿を見られているから、また違う姿に変身するんだよ!」


「「違う姿に?」」


「そうだ!」


「では、雄に戻るのですね?」


「いや、それは、今はちょっと・・・

 ほら、俺が男だと、お前達が寵愛だとか・・・」


「おおっ! では、いよいよ私達に寵愛を・・・」


「おおおおっ! 遂に・・・」


「ちがあ━━━う!

 ほらまた、そうなるからぁー!

 ちゃんと俺の話を聞けっ!

 しばらくは大人の男には戻らない!」


「はい? では、どんな姿に?」


「・・・?」


「そうだな・・・子供なら、どうだ?」


「「こども?」」



 こうして俺達は3人とも、子供に変身する事にした。

 大人の男の姿に戻ると、ロンデルとロプロプが、寵愛~寵愛~と煩いのでパス!

 なので、大人の男はしばらく封印だ。


 ってな、訳で・・・



 ポポポン!


「・・・どうだ?」


「ふむ どうやら、問題なく小童(こわっぱ)変化(へんげ)できたようですね!」


「うむ 問題ないかと」


「そうか? よし!

 お前達も問題なく少女に変身できたようだな」




 俺達は、3人とも子供に変身できたようだ。

 トロは、肉体年齢15歳の金髪碧眼の美少年(自称)に。

 ロンデルは、見た目年齢15歳の黒目黒髪の美少女に。

 ロプロプは、見た目年齢15歳の茶目赤髪の美少女に変身した。


 なぜ、肉体年齢が15歳なのか?


 日本では、15歳はまだ子供だが、この世界では、冒険者になれるのだ!

 お酒も飲めるし、立派な大人なのである!


 だがしかし、つくづく魔法とは不思議なものだなと思った。

 ロンデルとロプロプのメイド服が、少女に変身したら絶対に大きさが合わないはずなのに、なぜかピッタリサイズになっている。


 俺もまた、イメージした通りの、白い襟付き半袖シャツに、サスペンダーショートパンツに、長い靴下に、青い運動靴。


 これも異世界名物?

 ご都合主義の辻褄合わせの強制力なのだろうか?


 まあ、どうせ考えても無駄だ。

 それよりも3人とも、ネズミーランドを歩いていたら、きっと写メの嵐にあうだろう。

 (もちろんトロ評価目線である)



 とりあえず、これで質問攻めに遭ったり、追いかけ回される事も無いだろう。



 サイチ村は、ブル、ビッグブル、オークなどが大量に生息する地域の村で、主に食肉としてモンスターを狩る冒険者達が住み着き、村となった。

 物理系の冒険者が多い。

 トスターのオーク専隊も、この村出身である。


 名残で今でも「村」と呼ばれてはいるが、もう「町」と言っても良い規模だ。

 むかし、流れの冒険者がこの地へやって来た。

 土地は肥えているし、川沿いでもあり、井戸を掘れば必ず涼水が出る、とても住み易い地であるため、解体屋として冒険者が住み着いてから人々が集まり始め、今では、ブルやオークを狩る冒険者の住む家々が最も多くなり、最近になりトスター領の庇護下に入り、「トスター領サイチ村」となっている。

 そのため、トスター街とは川に隔たれてはいるが、トスター街から直接橋でサイチ村に繋がっている。

 なので、トスター南部から川を渡りサイチへ行くためには、トスター街を通らなければならなくなっていた。


 また、サイチでは、討伐した魔物の肉や素材は4割しか取れず、残りはトスターへ卸さなければならない決まりだ。

 それによって、サイチからトスターへ卸しに行くには、サイチで通行税と持ち出し税、橋を渡るのにも通行税と持ち出し税、そしてトスターへ入るにも通行税と持ち込み税、卸すにも卸税、という、なんとも、課税、課税、課税の雨嵐状態!

 特に商人にとっては、働いても働いても余り儲けにならないため、サイチとトスター間では、余程大量の物資が無ければ、商人は誰1人として手を出さないらしい。

 なので、この流通を維持しているのは、冒険者だとか。

 冒険者なら、通行税は払わなくても良いし、持ち込み税、持ち出し税も払わなくても良いからだ。

 なにせトスターは、冒険者によって出来た街だから。

 ただ、冒険者は自分で引く荷台は使えるが、馬車や獣車は使えない。

 もし、大容量のマジック・バッグがあれば、稼ぎ放題だな!

 冒険者にだけ優しい街だ。


 また、トスターから出る橋以外には、他に橋が無いのが難儀だ。

 トロ達は、小舟で川を渡ったが。

 見付かったら、どうなっていたか?

 こわっ・・・


 せっかくだから、冒険者ギルドと、商業ギルドへ行ってみる。

 冒険者と商人になるために、それぞれのギルドに登録しようと思ったのだ。

 今なら、商業ギルドの入会金の10万Tiaも余裕で支払える。


 先に問題ないと思われる商業ギルドへ向かった。

 商業ギルド員としては、あっさり登録完了!

 正式な商業ギルド員としての証のプレートを貰った。

「手の平を上に向け受け取る手首に向かい合うように、コインを持った手首の絵」が掘られた、なんとも悪趣味なデザインのプレートだ。



 問題は、冒険者ギルドだ。


 冒険者になるためには、かなり面倒な試験を受けなければならないと、コチマの宿屋の主人に聞いていた。

 実際に、コチマ村の冒険者ギルド出張所でも、試験の難解さに臆して入会を諦めたくらいだ。




••✼••サイチ村冒険者ギルド••✼••



「さて! 冒険者ギルドへ来ると、必ずお約束のテンプレ展開になるんだよな

 ベテラン冒険者に絡まれるとか・・・」


「てんぷれ とは?」


「ご主人様?」


「ああいや、コッチの話し!」



 などと話しながら、受け付けへと向かう。

 そして、受付嬢に話し掛ける。



「あの! 冒険者になりたいんですけど!」


「はい 初めての方々ですね!

 では、一応『ステータス鑑定レンズ』で、名前と年齢と性別に種族、そして習得された魔法とスキルを確認させて頂きますが、よろしいですね?」


「あ、はい」

 一応見るんだ?




 どうやら、「ステータス鑑定レンズ」たる魔導具により、名前と年齢と性別と種族、そして習得した魔法とスキルが確認できるらしい。

 あれ? 職業は?


 どうしよう・・・

 いきなり難関に出くわしたぞ?


 俺の習得している魔法やらスキルやらを全部見られたら、絶対に大騒ぎになる?

 めちゃくちゃドキドキしていたが・・・



「お名前はトロさん 年齢54歳ね!

 あら、随分若く見えるわね?

 私と同じで、エルフ族の血筋かしら?

 まあ! ヒールLv3に、剣術Lv3を習得しているのですね!

 では、職業は「回復剣士」かしら?

 性別は・・・あら?」


「ぎくっ! ど、どうにしまたましたら?」

 焦って呂律が回らなかった。



 エルフ?! エルフが居るのか!!

 会ってみてぇ~~~♡

 もしかして俺は、「ハーフエルフ」だとでも思われているのだろうか?

 でも、不思議とすんなり受け入れられた。

 種族は問題なさげだ。


 ってか、受付嬢の耳もエルフ程では無いが少し長くね?

 エルフと言うより、映画スターレイクのスポッツみたいな耳?

 なんて思いながら受付嬢の耳ばかり見ていたら、俺が受付嬢の耳を見ていたのを気付かれたようだ。



「・・・あの、何か?」


「え、あ、いえいえ!」


「もしかして、私の耳を見てました?」


「!!・・・す、すみません」


「うふふ 構いませんよ!

 私、ハーフエルフなんです!」


「わぉ! ハーフエルフ?!」



 ハーフエルフだって?!

 初めて見た!!

 でも、エルフ特有の長い耳じゃないんだ?

 耳の頭がとんがってるだけ?



「この耳はハーフエルフの特徴なんです!

 耳の長いエルフと、耳の丸い人族とのハーフなので、この耳なんですよ!」


「へえ~~~そーなんだ?」



 なるほど。

 エルフの耳は横に細長く、ハーフエルフの耳は縦にとんがっているのか。


 日本のアニメなどで見るエルフの耳は、たいがい横に細長いのが一般的なイメージで馴染み深い。

 でも、外国の『指輪の伝説』などで登場するのがエルフの容姿の起源になっているらしいが、日本のアニメなどに登場するエルフの様に長い耳では無い。


 受付嬢はハーフエルフだと言う。

 受付嬢の耳こそが、本来のエルフの耳なのだろうか?

 この世界と、地球とでは、同じエルフでも、どこか違うのかも知れない。


 それに受付嬢の言い方からして、エルフの血筋と言えども、交わる種族が異なると、耳の形も変わるのかも知れないな。


 しかし、「回復剣士」って、なんだ???

 そんなの初めて聞いたぞ!!

 まあ、なんにせよ、魔法とスキルは一つずつしか表示されない仕様のようだな。


 ひとまず、安心・・・だが!!


 それより、どうした?! 性別? はい?

 いやいや、男のはずだが?

 慌てて確認するために股間を触ってみた。

 ・・・一応は、ある。付いてますが!

 いったい受付嬢は、俺の性別の何に気付いたと言うのだ?



「・・・性別が表示されていませんね?

 これはいったい・・・???」


「はあっ?! そんなはずは・・・(焦)」



 なんだって?! なんで?! うそ!!

 性別が表示されていない?

 ソレ、どう言う事???

 自分でも確認してみた。



「ステータス・オープン・・・」

 フォン!

「んなっ?!・・・何で???」



 本当だった。

 性別が表示されてない・・・

 のではなく、「unknown」になっていたのだ。

 自分の鑑定スキルで、そう表示されているのなら、受付嬢の使う鑑定魔導具でも、同じように表示されているのだろう。

 この世界の文字は「カタカナ」で、数字はアラビア算用数字である。

 英語は使われていない。

 なので、「unknown」という表記が受付嬢には理解できなかったのだと思われる。

 「文字化け」か何かと思ったのか?

 そもそもこの世界に、「文字化け」という概念があるのかは不明だが・・・

 身体は若返ったのに、表示は「実年齢」のまんまになってる?!

 だから、「エルフの血筋」と思われたのだな。

 これも仕方ないか。

 冒険者になってしまえば、種族や職業の意味なんて無い。

 俺は賢者であり、剣士でもあり、テイマーだ。

 パーティーも組むつもりも、入るつもりもない。

 ロンデルとロプロプが居るからな。


 そんな事は、どうでもいい。

 今は、変身魔法で外見的姿を、肉体年齢15歳の少年に変えているだけだ。


 しかし、なぜ「unknown」?

 もしかして、性別を変える変身魔法を多用乱発し過ぎたからか?


 さて、どう言い訳する?

 どう言い逃れする?

 この危機的状況を、どう回避すれば良いか。

 などと、あれこれ思案していたら・・・



「ご主人様は、性別を超越した存在なのだ!」

 突然とんでもない事を言い出すロンデル。


「ちょっ、お前っ、ばか!」


「その通りである!

 我がご主人様は、雄であろうと雌であろうと、貴様の情けない鑑定スキルなどでは計り知れないのである!」


「こっ、こら! やめんか2人共!!」


「「申し訳ありません! ご主人様!」」


「?!・・・・・・・・・」

 目が点になる受付嬢。


「あっちゃ~~~・・・(汗)」


「「「「・・・・・・・・・」」」」

 他の冒険者達も呆然・・・



 まっずぅ━━━い!!

 ひっじょお━━━に、マズイ!!

 なんで次から次へと、まったくもぉ!!

 冒険者に登録する時に一番やってはいけない事は、虚偽の報告。

 また、虚偽報告の中で一番多いのが、「性別を偽る」事となっている。


 特に、女性が男性として登録する場合が多いとされている。

 もちろんトロは、そんな事など知る由もないが。


 女性冒険者は、男性冒険者達から蔑まれる事がある。

 それを嫌だからと、性別を男性と偽って登録する女性が過去多かったのだ。

 だが、長期にわたって活動を共に続けていると、女性特有の諸事情により、動けなくなる事態に陥り・・・

 最終的に、「パーティー全滅」という最悪の事態になったというケースがあったのだ。

 そんな悲劇が二度と起きないように、という意味もあるのだ。

 それでも、性別を偽る冒険者は後を絶たないそうだが。

 そのため、少しでも疑わしき場合は、事前にシッカリと確認する義務がギルド側もにあるのだと言う。



「どう言う事でしょうか?」


「これは、その・・・

 ええと、うう~~~ん・・・(焦)」



 どうすりゃいいのよ?!

 本当に男です!って言ったところで、ステータスの性別が「unknown」では、何をどう言っても信じてはもらえまい。

 さて、困ったぞ。

 どう、説明しようか・・・



「見た目は14~15歳の少年のようですが、年齢54歳と言うのは詐称できないはず!

 そんな中、性別だけが表示不可になるのでしたら・・・

 あなたの本当の性別は『女性』なのではないですか?」


「なっ?! そ、そんな訳ないじゃないですか!

 俺は生まれた時は男でしたよ!」


()()()()()は?」


「あわわっ! ああいや・・・(焦)」


「本当ですか?

 女性なのに男性と偽って登録する人が多いのですがぁ~~~?」


「ああ~そ~なんだ~へぇ~~~(汗)」

 目を逸らすトロ。


「・・・・・・んんん~~~?」

 クシャミを我慢するした様な表情でトロを見詰める受付嬢。


「!!・・・な、なんですか?」


「では、もう一度 お聞きしますが、あなたは本当に男性ですか?」


「もっ、もちろ・・・」



 トロが言いかけた時、突然ロンデルが!




「ご主人様は()()()()! それは間違いない! ()()()()()がな!」


「こっ、こらぁ!!」


「!! 貴女! やっぱり女性なんですね?!

 性別の虚偽報告は冒険者資格の剥奪もある事案ですよ!」


「あぶっ あうわうわうわあわあわあわ・・・(焦)」

 足を掴まれた鶏の様に取り乱すトロ。


「それと、後ろの2人の女性の首の首輪!」


「へっ?! く、首輪?」


「そうです!

 まさか、隷属の首輪ではないでしょうね?!

 この国では奴隷を持つ事は重罪ですよ!」


「わっ! わっだだだだっ!

 ちっ、違いますよ! 奴隷だなんて!!」


「「「「ザワザワザワザワ・・・」」」」


「ひぃやっ?!・・・

 どどどどどうしよう~~~?」



 もう、完全に我を忘れるほどにパニクったトロ。

 そのせいか、頭の中が真っ白になってしまい、冷静ではなかったトロは、ついつい変身魔法を発動させてしまう!



「へっ、変身!!」


 ポン!


「あ! やっぱり!!

 女性じゃないですかあ━━━!!」


「ああああ~~~いや、これはちがっ、ええいっくそ!

 ああもぉ~~~!!

 はい! 女性ですぅ!!

 これでいいでしょう?!」

 もう、腹を括るトロ。


「はい! ステータスも、『女性』と確認できました!

 今後は、虚偽申告は絶対にしないように!

 い・い・で・す・ね!!」


「!!!!・・・・・・・・・はぁい」

 ガックリ項垂れるトロ。


「「ご主人様・・・」」



 もう、こうなってしまっては、下手に言い訳しても無駄だろう。

 このまま、女性として押し通すしかない。

 そしてなぜか、女性に変身したら、トロのステータスの性別も『女性』と表示されたのだった。

 女性に決まってしまったよ・・・(泣)



「ところでトロさん?

 後ろの女性達は、冒険者登録は、されないのですか?」


「ああ、この()達は、従魔ですから!」


「従魔?!」


「「「「!!・・・ザワザワザワザワ」」」」


「また、この反応かよ・・・」



 またまた、疑いに満ちた目でトロを見る受付嬢。

 そして、他の冒険者達・・・



「トロさん? 貴女はテイマーだと言うのですか?」


「ええと・・・そうなるのかなぁ~~~」


「はぁ・・・いいですか?

 テイマーとは、まだ冒険者ギルドに登録されて間もない職業であって、従魔も小型の魔獣しか確認されていないのですよ!

 確認されている人数も非常に少ないため、分からない事が多い職業なんです!

 それなのに、そんな可愛らしい女の子達が従魔だなんて、信じられると思いますぅ?」


「は・・・はあ・・・どうなんでしょうかねぇ?

 やっぱり、信じられませんか?」


「はあい! 信じられません!

 それに、女の子達を従魔扱いだなんて、そんな非道な行為は許されませんよ!!

 まさか、非人道的な扱いをしている訳じゃありませんよねぇ?」


「うぐぐっ!・・・・・・」


「「ご主人様?」」


「「・・・・・・ザワザワ」」



 まあ、受付嬢の言っている事は、ご尤もだ。

 女性を従魔扱いだなんて、奴隷並に酷い扱いだよね。

 もしかして、性奴隷とかって思われてるんじゃ・・・?

 でも、そうじゃないんだ!

 本当に従魔なんだ~~~!


 と、ところが更に!



「ああああー!」


「へっ?! な、なに???」


「金髪碧眼の可憐な美少女に、黒目黒髪の美少女と、そして茶目赤髪の美少女!

 貴女が、領主様が探していた人なんじゃないですかー?!」


「んなっ?!」


「まさか、領主様が探してい人が、女性の奴隷を連れているだなんて!!」


「うううっ!・・・ここでもか」



 もうダメだ・・・

 だんだんと、話がややこしくなってきた!


 収拾がつかなくなる前に、これはもう、ロンデルとロプロプの本当の姿を見せてやるしかない!

 トロは、ロンデルとロプロプに、変身を解くように命令する。



「ロンデル! ロプロプ! 変身を解け!」


「「はい! ご主人様!」」


 ポンポン!


「ひっっ・・・・・・・・・

きゃあぁあぁあぁあぁ━━━!!」


「「「「うぉわああああああ━━━!!」」」」

 ドタドタバタバタ!!


「ほおら! やっぱりこうなった・・・(困)」


「ふぅうぅうぅうぅ~~~」


「グルルルルルルル・・・」



 ロンデルとロプロプが変身を解いた瞬間!

 当然ながら、ギルド内は大騒ぎ!!

 ロンデルは、ワイルド・フォレスト・キャットに。

 ロプロプは、ファイヤー・ナパーム・ワイバーンに。

 特にロプロプは、『特別討伐指定』されている「ネームド」魔物扱いだった。



「あわわわわわわ・・・」

 完全に腰を抜かす受付嬢。


「おいおい! まさか!」

「あのワイバーンは、特別討伐指定の、火炎のワイバーンじゃないか?」

「有り得ない!有り得ないー!」

「きゃあ~~~!」

「逃げろー!!」

バタバタバタバタバタッ!!

 ザワザワザワザワザワ・・・


「はぁ━━━・・・」


「騒がしいなぁ・・・」

 女豹のポーズのロンデル。


『まったくですな・・・』

 翼を折りたたみ頭を下げるロプロプ。




 しばらくは、この騒動は治まる事はなかった。

 ギルドマスターもが飛び出て来る始末となり、またロンデルとロプロプには人型(ひとがた)に変身してもらい、奥のギルド長室に連れ込まれてしまった。




••✼••ギルド長室••✼••



「まさか、ワイバーンを従魔にするテイマーが現れるとは・・・

 しかも! 特別討伐指定の火炎のワイバーンときたもんだ

 そして更に、領主様がお探しになっていた金髪碧眼の可憐な娘というのが、トロさん、貴女だったとはね・・・」


「はあ・・・」


「「・・・」」


「この事は、領主様に報告する事は避けられまい」


「?!・・・」


「ですよね? あの、もしかすると・・・

 領主様がお探しになっていたのは、もしかして彼女なのでは?」


「・・・そうとしか思えん」


「やはり・・・」


「・・・・・・・・・(汗)」



 なんなんだ?

 ギルド長と受付嬢長とが、なにやらヒソヒソと話しているが、「領主様に報告」なんてワードが聞こえたような気がするのだが?



「あの・・・さっきから、いったいなんの話を?」


「しばらく、登録はお待ち頂きたい!

 貴女方の事を、領主様に報告する義務がありまして」


「えっ?! そんな・・・

 俺達、どうなるんですか?」


「いや、鑑定の結果、ロンデル殿と、ロプロプ殿は、本当にトロ殿の従魔として結果が出たのだから、疑いの余地は無いのだが・・・」

 ロンデルとロプロプは、ギルド長から『殿呼ばわり』である。


「・・・無いのだが?」


「果たして領主様がな・・・

 貴女方をこのまま放置するとは思えん」


「えっ!? それは、どういう・・・?」


「貴女方が国や他の権力者に取られる前に、トスター領主様が自らが貴女方を取り込もうとするかも知れん」


「んなっ?! それは困る! 困ります!」


「だがなぁ・・・(汗)」



 ギルド長も、ホトホト困ってるのが伺える。

 そりゃそうだよな。

 ギルド長は、トロを見たら報告するように命じられているようだし。

 下手に扱えば、トロの一言でギルドどころか、この領地の壊滅も有り得る?

 もし、領地内でロンデルとロプロプが大暴れしたら、そりゃあこんな村などひとたまりもない。

 特にロプロプが暴れたら、この村全域火の海になるだろうな。

 ちと、言い過ぎか。

 俺も、そんな事させるつもりも無いし。



 話によると、今現在冒険者ギルドに登録されているテイマーの使役する従魔とは、小型の魔獣ばかりなのだそうだ。


 なのに、トロの使役する従魔は、ジャイアント・オーガに匹敵する力を持つ、オパール級のワイルド・フォレスト・キャット。

 そして、ワイバーンの中でも、「火炎のワイバーン」の異名を持つ、本来はアクアマリン級のファイヤー・ナパーム・ワイバーン。

 この2体の強力な魔獣を使役するテイマーなど、トロが初めてなんだとか。

 だが、レベルが低いのは、従魔になったからだと推測される。

 テイマーが魔獣や魔物をテイムして従魔になると、レベルが下がる事が報告されているからだ。

 つまりテイマーとは、テイム(使役)した従魔を育て強くする職業だとの認識だ。


 領主がロンデルとロプロプの事を知れば、益々俺達は領主の興味を引くだろう。



「とにかく、今日のところは、一旦お引き取りください

 宿屋はこちらで手配させて頂きますので」


「ええ? むむ・・・そ、そうですか・・・」


「はあい また、進展がありましたら、お呼びする日まで、どうかそれまで宿屋にて大人しくお待ち頂きたく・・・」


「お呼びする日? 時じゃなく、日?」


「はい 何日お待たせするかは、私には分かりかねますが・・・

 しばらくは、宿屋から出ずに、必要な物、準備しなければならない物があれば、宿屋の女将に頼めばいいですから

 宿屋関係者以外では、極力は人に顔を見られないようにして下さい

 今回の騒動のほとぼりが冷めるまで、領主様に報告するのに、貴女方に猶予を与えますので、本当に、本当に大人しくしておいて下さいね?」


「それは、俺達に宿屋から1歩も出るなと?」


「できれば・・・」


「宿の他の客にも見られるなと?」


「もちろんです」


「もし、言う事を聞かなかったら?」


「その様な時は、トスター冒険者ギルド滞在中の高ランク冒険者達が、貴女方を捕縛するために動く可能性も・・・」


「一介の高ランク冒険者程度で、俺達を抑えされると思う?」


「もし由々しき事態になれば、トスター領の私兵団も動くかと・・・」


「!・・・・・・・・・解りました」


「私共、冒険者ギルド関係者としても、良き結果となる事を期待しております」


「はあ・・・そうですか」



 この街の高ランク冒険者なんて、数は知れている。

 俺達3人なら、なんとでもできる。

 だが流石に、この街の私兵団まで出てきたら、ちと面倒な事になるか・・・


 しかし! めちゃくちゃだな!

 宿から出るなって?

 職権乱用じゃね?

 領主は、余程俺達を取り込みたいとみた。



 この時トロは、「トロ達」ではなく、「トロ」が領主に狙われているなんて、知る由もなかった。


 

 ギルド長は、トロ達に丁重な扱いだった。

 トロ達にとって、良き結果となる事を期待したいするとも言っていたので、悪いようにはしないとは思う。

 ただ、領主はまだ会ったこともないから知らない。

 どんな奴なのか、何を企んでいるのか。

 でもまあ、俺達ならどんな事になっても、どうにでもできるでしよう!


 他にやる事も無いので、仕方なく、トロ達はギルドを出た。

 そして、ギルド横の路地裏へと入る。

 確認したい事があったからだ。




••✼••ギルド横路地裏••✼••




 どうやらトロの性別は、「女性」に確定したようだった。

 何度も男に変身しては、ステータスを確認したが、身体は男になっていても、ステータスの性別は、「女」のまんまだった。


 もう、ショックが大き過ぎて、トロは冒険者になるための試験どころではなかった。

 今の所、登録は控えろと言われてるけど。



「ロンデル、ロプロプ、宿屋に行くぞ」 


「「はい ご主人様・・・」」



 トロ達は、宿屋へ行き、チェックインした。

 ギルド長からの紹介状で、宿泊代は免除された。

 しかも、この宿一番のビップルームらしい。

 それは有難いのだか、複雑な気持ちだった




••✼••宿屋の一室••✼••



 パフン!

 トロは、ベッドに()を投げた。


「どうして、こうなった・・・」


「「ご主人様・・・」」



 

 結局、冒険者ギルドへの、試験の受験者登録でのステータスの確認時では、トロは「女性」として結果がでた。

 今更もう、変えられそうにない。

 しかも、登録も見送られた。

 まったくもって、良い事無し!

 なんて日だ!!

 不貞寝だ不貞寝っ!!


 しかしなぜ、ステータスの性別が「unknown」だったのか?

 考えられる理由は、あるにはある。


 「男は30過ぎるまでDTだと、魔法使いになる」


 というが、トロは賢者になった。

 何を言いたいのか・・・

 実は、トロは54年の人生、DTなのだ。


 日本では、毒家族のせいもあり、彼女を作ってる場合ではなかったし、たとえ彼女ができても、家族に紹介したらことごとく邪魔をされたし、トロのある事ない事、悪口を彼女に吹き込まれ別れさせられたり、それ以前にもトロの不評をばら蒔いたりと、もう散々だった。

 やがてトロは、女性との付き合う事を諦めた。

 日本での生活では、天涯孤独と言っても、ある意味、間違いではなかった。

 

 そして、この異世界ムトンランティアへ来て女性に変身したとき、従魔であるはずのロンデルとロプロプに、処女を奪われている。


 つまりトロは・・・


「女を知ったが、男を知らない」


 ・・・のである。


 それこそが、ステータスに顕著に現れていた?

 ・・・のかも知れない。



「はぁ・・・なんなんだよ、まったく

 なんで、こうなった・・・」


「ご主人様、大丈夫ですか?」


「もしかして、我らが何か不手際を?」


「いやいや、そうじゃない 

 お前達は何も悪くないんだ

 気にしないでくれな?」


「「・・・はい ご主人様」」


「はぁ・・・ため息ばかり出るな

 異世界へ来て何か変わるかと思ったのに、

 思い通りにならないのは、異世界でも同じなんだな・・・」


「「・・・・・・」」


「こんな時は、現実逃避しかねぇよなぁ?」


「「・・・・・・?」」


「・・・ロンデル! ロプロプ!」


「はい! なんでしょう?」


「なんですか、ご主人様?」


「ほんの一時でいいんだ

 何もかも忘れるくらいに、俺を思い切り慰めてくれ!」


「「!!・・・畏まりました! ご主人様!」」


 ポポン!



 ロンデルとロプロプは、男性の人型(ひとがた)に変身!

 珍しく主人から誘われたせいか、ロンデルとロプロプは嬉々として、空腹のケダモノが、獲物を(むさぼ)り食うケダモノの様に、トロを失神するまで慰めた・・・




テイマーとして冒険者に登録する事になりそうなトロ。

だが、ロンデルとロプロプが強力な従魔である事が明らかになり、今後の身の振りに制約が生まれそうな雰囲気?

しかも、冒険者では性別が女性としての登録を余儀なくされる。

いったい、どうなってしまうのか?みたいな。

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