第62話 経緯
またまた久々の投稿になります。
書き溜め頑張ります。
「白蓮殿」
それまで黙って瑤の母親に寄り添うようにいた男が白蓮に声をかけた。
「瑤は我が兄、頼に預けます」
そこまで言うと顔を歪め、今にも泣きそうな顔で声を振り絞りつづけた。
「風花は……もう……」
「覚悟の上だろう、おまえも。風花、そなたも。ふむ……天帝か。まぁそれがよかろうの。一番確実にこの娘を守れるか」
白蓮は淡々と2人に言った。そして抱いていた瑤を風花に返した。風花は微笑み瑤を受け取った。白蓮は風花にゆっくり休めと言って部屋を後にした。自室に戻る途中で風が白蓮を包んだ。風といえば砂嵐のこの地域には珍しくそよそよとした、優しい風だった。それは風の王である自分が悲しんでいることを知って来たかのようで、白蓮は自嘲気味に笑いつぶやいた。
「お前たち……そうか……慰めてくれるか」
白蓮はその風をふっと吹き返し、自分の娘とその家族のもとに行くよう促した。これからそれぞれに悲しい思いをするであろう3人に。
風花は龍族一美しいといわれた白蓮の自慢の娘だった。光を柔らかく反射する白銀の髪に翡翠の瞳。その龍体は透き通るほど白く美しい鱗の龍だった。その娘に似ても似付かぬ黒い髪と紫の瞳を持った女の赤子。
憎いーー。
そう思えたら楽だったのに、白蓮はどうしてもそう思えない自分が嫌になった。だが、あの赤子のせいで自慢の娘が死ぬことも事実だった。龍使いを産んだ龍は時を待たずして死ぬ。そのことを知ったのはいつだったかーー。
「お祖父様……?」
龍椰が自分を呼ぶ声にゆっくりと顔を上げ、はっきりと答えた。
おそらくまたしばらく空きますのでご容赦ください。