第60話 白蓮
めちゃくちゃ久々の投稿です。
本当はもっと投稿したいんです…
閃は少し大人になった甥の姿をしっかり目に留めてにやりと笑った。そして感心したように顎に手をやり言った。
「成長したなぁ、龍弥」
「当然でしょ。いつまでも子どもじゃないよ」
珍しくふてくされたような言い方をする龍弥を見て、閃はやれやれとクスッと笑い宥めるように言った。
「姫様はなんと言ってた?」
「何も。状況を聞いてこいとだけ」
「ほお。龍弥、お前、それが何を示しているか分かっているか?」
龍弥はうつむき、フーっと息を吐いた。閃の言葉で一番ありえないと思っていたことが起こっていることを確信した。
「やっぱり……裏切り者がいるんだね」
陽の光を反射して白銀の鱗がキラキラと輝いていた。風龍族の鱗は白色だが、全くくすみのない族長一族の鱗は光に照らされると銀色にも見えるのが特徴だった。本当はすぐにでも族長に確認したいことがあったが、龍椰は結界には入らず里の周辺を行ったり来たりしていた。結界の前を何往復かした後、龍椰は意を決して結界に足を踏み入れたのだった。
「お祖父様……瑤迦様が転生してたこと知ってたんですか?」
「何をしに帰ってきたかと思えば……開口一番それか」
龍椰の祖父で風竜族の族長でもある白蓮は、じっくり龍椰の顔を見た後、一拍おいて片方の口の端を釣り上げた。
「無論、知っておったぞ。天帝から聞かされておったでな」
いつもと変わらない飄々としたその調子にいつもは穏やかな龍椰も顔に怒りを滲ませた。
「なんだ。不満か?不満があるなら言うがよかろう」
優しく促すような言葉ではあったが、龍椰は文句は一切受け付けぬという圧をひしひしと感じていた。族長最高齢でもある白蓮は、何もせずともその場にいる全員を黙らせるほどの凄みを纏う龍だ。どんなに荒れている龍族の会合も白蓮が姿をみせるだけで、全員の口が閉ざされる。特に火龍族と雷龍族は顔を合わせるたびにどこかで争いが起きるが、白蓮がいるときだけは平和に終わる。ただ決して威圧感だけでその場を治めているだけではなく、龍族の尊敬もちゃんと集めている。(何があったかはしらないが)雷龍族の閃は、「あのじーさんはマジですげーんだぞ」とか言うし、火龍族の炎翔にいたっては、天帝の命令でさえ聞かないこともあるのに、白蓮の言うことだけは絶対に聞く。炎翔が膝を折るのは唯一白蓮のみと言われるほどだ。だが、聞かなければいけなかった。瑤迦の近くに裏切り者がいるかもしれない。そして、それは自身の祖父かもしれないからだ。
「お祖父様は、瑤迦様のこと……」
白蓮は龍椰が言葉を継ぐ前に、ふーっと息を吐いた。
また期間開くと思いますが、気長に待っていただけると嬉しいです…