第57話 水龍族の里
その頃、昇龍も水龍族の里に戻っていた。里の入り口の結界の前で一度足を止めたが、結界はすんなり昇龍を受け入れた。里に一歩足を踏み入れると一族の者から帰還を歓迎する声が上がった。生真面目な昇龍はそれらに一つ一つ返事をしながら里で一番大きな館を目指した。まっすぐ歩けば四半時足らずで辿り着く館だが、昇龍は半刻以上もかけて館までの道のりを歩いた。里の同胞に歓迎の声をかけられたのも事実だが、やっと戻ってきた瑤迦とまた一緒にいられると思っていたのにいきなり別の用事を言い渡されたことで気がそがれたのがいちばんの理由だった。重い足取りで実家でもある館にたどり着くと、すぐに族長の部屋に通された。
「ただいま戻りました、父上」
「よく戻った。……姫様が戻られたというに、不満そうな顔だな?昇龍よ」
父親に言い当てられ昇龍は急に恥ずかしくなって口元を手で隠した。話題を変えようとしたが、父にじっと見られて逃げられないことを悟った昇龍は今自分が不満に思っていることを正直に話した。昇龍の父はフッと笑い、そんなことか、と言った後、昇龍に助言した。
「姫様の右腕はお前だ、昇龍。私でも、飛龍殿でもなく。姫様が一番最初に選んだのがそなただ。自信をなくすくらいなら姫様を信じろ」
その言葉に昇龍はハッとした。そして、瑤迦を思い右腕をギュッと握ったのだった。
水龍族はみんな穏やかで優しいんです。これからの活躍に期待!
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