第56話 怒り
「はぁ!?」
飛龍は怒ったというより、意味がわからないという調子で声を上げた。
「なぜだ!?」
「敵は私を殺したかったんだ。天帝と皇后が敵側なら、私と二人になった時に殺せば良いだけの話だ。転生させるのはそんなに簡単なことじゃなかったんだし失敗したって言えば良いだけだ」
「確かにそうだな。だが特魔は?あいつらの誰かが内通者かもしれんぞ」
「もちろんその可能性はゼロじゃない。だがあいつらは違う。あいつらのことは私がよく知ってる。信じて良いと思う」
「確信はないんだな。だったら俺は信じない。警戒するようにする」
瑤迦は返事をしなかった。その代わり少し困った表情を浮かべ微笑んだ。その顔は瑤迦を乗せている飛龍には見ることができなかった。だから当然、瑤迦の次の質問を予想することなどできなかった。瑤迦の質問は一瞬飛龍の聴覚を奪った。
「一応聞いておくが、お前たちではないよな?」
返事がなかったので、瑤迦は何度か飛龍の名を呼んだ。何度目かの呼びかけでようやく飛龍は反応した。
「瑤!お前俺たちを疑っているのか!?」
飛龍はそう怒鳴り声を上げ、瑤迦の制止も聞かず我龍山に突っ込んで行った。山の中で突然龍体を解かれ瑤迦はよろけながら着地した。飛龍は瑤迦の背中を木に押さえつけ詰め寄った。
「本気で俺たちを疑ってるのか!?」
「そうじゃない!ただ、人を疑うのに身内だからと特別扱いはできない。それに、人界で襲われた結果私は還ってきたんだからな」
「俺たちがお前を危険に晒すとでも!?」
「思ってない。だが、お前たちは人間の器の私には用が無かったのも事実だ」
「瑤!」
その時、ガサと音がして、一人の男が現れた。
嫌な雰囲気になってしまいました…
龍と龍使いの関係はどうなるのでしょうか?裏切り者は誰でしょう?
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