第30話 天門へ
「よし。では、それぞれ、頼んだぞ」そう言って天帝は、瑤迦の額に置いていた手に気を集中させた。額から手を離すと紫の光の玉が瑤迦の身体から出てきた。その光の玉が身体から完全に切り離された瞬間、鈴は呪を唱え始めた。天帝は手のひらの上でふわふわと浮いている小さな紫の光の玉を炎迦と流迦に渡した。二人とも両手で包み込むように受け取り、消えないように気を与えた。身体と魂魄両方を確認した後、天帝は行くぞと言って、炎迦と流迦の肩に手を置いた。次の瞬間、三人は消えていた。
「着いたぞ」そう言われて顔を上げると目の前に天門があった。巨大な鳥居。鳥居の向こうは果てしなく平原が続いているように見えるが、それは歴代の天帝と皇后によって掛けられ強化された目くらまし。実際はこの天門をくぐると天道という、天界と人界をつなぐ道があるらしい。らしいというのは、炎迦は実際に天門の向こう側に足を踏み入れたことはないからだ。生身で天門より向こうに入れるのは天帝のみ。都合上、天界の長を天帝としてはいるが、そもそも天帝は天界の守護者ではない。天門、そしてその先にある天道の守護者だ。炎迦は内心やっぱ、すげーなこの人、と感服していた。自分一人ならともかく炎迦、流迦という大の大人二人と、魂魄だけになった瑤迦を連れて何事もなかったように鳳凰山の麓にあるここまで飛んできた。行き先が天門とはいえ歴代天帝でもここまで自由に空間移動できるのはそう多くないだろう。
「天門の封印を解いたら瑤を渡せ」天帝はそう言って呪を唱え始めた。
なんかちょっと天帝さんカッコ良い…
惚れてまうやろー!という方、私も仲間に入れてください!
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