第23話 足りないもの
東王父の言葉に五人は一斉に反応した。
「あの、東王父様、瑤の…いえ、瑤迦の器は」炎迦がそこまで言ったところで、東王父はスッと手で炎迦を制止した。
「聞きたいことはわかっておる。これから起こるであろうことを考えれば、瑤迦…龍使いの力が必要になることもな」そして、東王父は瑤迦に目をやり言を継いだ。「瑤迦、そなた、本当に戻る気があるか?次は失敗は許されぬぞ」優しい雰囲気の東王父から発せられる厳しい言葉は瑤迦に重く響いたが、ここで怯むわけにはいかなかった。「戻ります。天界も、人界も、此処も…私が守ります。いえ、本当はあの時も守らなければいけなかった…!」あの日のこと全てを覚えているわけではなかったが、二つ鮮明に覚えていることがある。瑤迦の名前を呼ぶ声。衝撃を受けた絶望と悲痛の表情。
もう二度とあんな顔はさせない。
「過去のあなたに足りなかったものがなんだかわかりますかな?」東王父は瑤迦に静かに尋ねた。「以前の私は、自分の力と龍たちがいれば大丈夫だと思って一人で突っ走ってしまいました。それは奢りだと、天帝に言われました」「左様。いかなる時でも慢心は許されぬ。奢りは相手につけ入る隙を与えるでな。だがの、そなたの『守りたい』という思いも本心じゃろうて。なれば、そなたはもっと周りに頼れば良い。信じることで守れるものもたくさんあるはずじゃ」まるで見てきたかのように語る東王父に、なるほど、仙人とはこういうものかと鈴以外の全員が感心した。瑤迦に向けた言葉ではあったが、才能も、実力も歴代最強と言われている他の特魔四人もそれぞれ東王父の言葉を胸にしまった。
「しかと心得ました」瑤迦はしっかりと東王父の目を見て言ったのだった。
頼れる仲間は素晴らしい!