☆国の失態☆
風が強くなってきた。
しかも冷たい風である。
山が近づいてきたからかもしれない。
自転車通学のときに向かい風が吹いている時を思い出す。
そんな転生前のことを思い出していると狼煙が見えてきた。
急いで降りていく。
「大丈夫ですか!?」
「荷物の中に、王城前に飛ぶ魔法具が入ってた!!」
「なんだって!?」
王城前に飛ぶというその魔法具は範囲に入った人間をそこに飛ばすというものである。
軍を送ることも出来るため、完全な失態である。
そんなことが国内外に知られれば国民の流出は止まらないだろう。
国としての価値も低迷する。
それは困るということだろう。
「いこうか」
「はい!」
メルの威勢のよい返事を聞いて出発する。
恐らくこの近くで野営しているだろう。
「おそらくは国境付近へ向かってるかと」
言われてみればその通りである。
「それだ!」
この付近の国境にいるということだ。
独創能力の地理学者を起動し、一番手薄になりかねない国境を洗いざらいにする。
山の頂上や川の中州など怪しいところは多い。
が、魔法具の痕跡を偶然感知した。
それは本当に偶然である。風で煽られた痕跡が目を向けた先にあった。
思ってもいないアイテムを入手して気分が高揚したのかもしれない。
適当な拡散の仕方でない限りここまで残らない。
「ついていこう!」
「はい」
道なき道ではあるが、明らかに最近歩かれたらしき形跡がある。
低い草の枝は折れていて、雑草は茎が折れてしまっている。
「なんか、頻度低く長年使われてたっぽい、ね」
それは歩いた形跡を消すのが面倒くさいので意図的に間隔を開けていたと考えるのが妥当だろう。
「まぁ、魔素の扱いに長けたエルフですら面倒くさいと思いますし」
彼女は小さく加えてくれた。
だとしたら後付できた、ということだろう。
「やっぱりか。どんどん薄くなっている。急ごう!」
そろそろだろうか。
あれから5分ほどたっただろうか。
ついにシッポを掴むことができた。
その野営地は木々の近くに目立たぬように置かれている。
そして迷彩柄のような小さなテントが7個ほど配置されてある。
「あの、左側の真ん中のテント。あそこから感じます」
言われてみれば確かに追ってきた魔素に近い感覚を感じる。
「招かれざる客がいらっしゃいますね」
気付けなかった、人影が後ろに迫っていた。