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☆新メンバー☆

メルを連れてギルドに向かう。

 長寿で記憶力の良いエルフでも人との関わり方は忘れてしまうらしい。

 まぁ、『忘れる』と言うよりは『恐れる』といった感じか。

 あんなクズ人間も多く生存する世界なら少し嫌なのだが。

 男女ともに奴隷として狙われるらしく、顔を見て決める場合が多いらしい。

 そのため、親が小さい頃に顔に傷をつけておくこともあるそうだ。

 どこぞの国みたいだ、と思ったことは心の内にしまっておこう。

 傷があると金額も低迷し、一般家庭の親なら貯めることで払える可能性も出るのだから。

 少し変わるが、感覚的には身代金みたいな感じだろうか。

 ゾワッとする。

 そんなことがまかり通る世界なんだと思う。

  奴隷商は黙認されている部分もあり、見つかれば即逮捕されるが、隠れながらであれば面倒くさいのだ。

 立証するのが難しく、付き合っていたといえば本当か嘘かが判別がつきにくい。

 強い魔物を勝手に捕まえてくれるため、率先して奴隷商を捕まえないというのが国としては本音だ。

 さらに言えば保障をする必要もなく、死んだとしてもただの事故死としてお互い片付ける。

 根絶した場合の損失が大きいと考える国が多い。

 捕まったら自己責任ね! といった感じだ。

 ギルド設営は奴隷商への依存をやめるためという説もあるが納得である。

 話が逸れてしまった。

 不自然に長い耳ではなく、普通の人より尖っている耳で、よく見ないとわからないだろう。

 なんでわかったかって?

 そんなの耳に髪をかけているからに決まっている。

 もしそんなことを男性だった頃にしていたらセクハラだのと言われていたかもしれない。

 が、男女関係なく強い人が頂点に立つのである。

 それは精霊の力を使った魔法だろうとその存在を使役する事自体に価値がある。

 生まれてすぐに精霊が宿るこの世界では転生者を例外としている。

 微小な精霊すらも宿ることの少ない転生者は莫大な魔力を自分自身でコントロールする必要があるのだ。

 つまりはこの世界で言う魔法を扱えない。そのかわりの能力(スキル)である。

 普通はたどり着かない独創能力(ユニークスキル)は転生者の特権であり、その有無で戦力が大きく変わる。

 前世の世界と今世の世界では宇宙が違う。

 魔素は何にでもなれる物質である。

 七並べのジョーカーみたいな感じだろうか。

 一時的な代替である。だから自然に分解されてしまうのだ。

 また、魔力となると魔素の操作できる容量という感じだ。

 その容量分を動かせる。だから使い果たすと虚脱感に襲われてしまう。

 というイメージで良いのだろうか。

 おっさんの受け売りなのだが、あのおっさんのことである。

 そんな悪いヤツでは無いだろう。

 っていうかそんなウソを付くならそもそも俺を助けようとはしないはずである。

 悶々と考えるといつの間にかギルドについていた。

 

「メイ様。私は隠れております故安心して行ってらっしゃいませ」

「うぇ? いやいや、離れるのは危険でしょ」


何を言っているのやら。

 メルはエルフである。付加価値が高いエルフは目につけられる。

 そんなの攫ってくだせぇって言ってるようなもんである。

 隠れるなんて以ての外ではないだろうか。

 周りの目が無いところにおいて居て貰うなんて出来ない。


「いえ、私は最近水浴び出来て御座いません。臭いのはお解りでしょうから」


確かにダンジョンでは刺激臭を感じた。


「そんなことはどうでも良いよ。だからついてきてほしい」


別に臭かろうと名を交わした関係である以上前世で言うところの親子と言ったところである。

 子供が臭くて親に臭いなどと言えるような人は多くないだろう。

 それと同じなはず。


「……そこまで言うなら……」

「ありがとう!」


子供や彼女を持ったことのない俺だが、こういう気持ちなのだろうか。

 なんか不安なのだ。

 ついてきてくれるなら良い。

 ギルドの眼の前まで来た。


「じゃあ行こうか」


俺は手を差し出す。

 その行動に驚いたのかメルはオドオドしている。

 そして少し汚れた手を掴んで中に入っていく。

 そして受付にむかう。


「こんにちは。今回はどのような要件でしょうか?」

「任務の完了届と、パーティメンバーの追加申請をください」

「えっと、ではそちらの……」


メルに視線を向けている。


「私はメルと申します」


流暢に胸に片手を添えて名前を大事に発音している。

 それは名前を大切にしていることを一挙一動から感じられる。

 名前を刋られた経験からだろうか。


「メル様ですね。ではあちらで」


不安げな表情を浮かべる彼女。


「大丈夫だよ。頑張って」


俺は笑みを浮かべて手を振る。それに彼女は安心したように微笑んでくれた。

 これは単純なものである。

 無理やりパーティに入れられることのないように本人確認をする。

 あとは技量の調査である。

 リーダに見合わない技量の人がパーティに入った場合その人の足を引っ張ることは容易に想像でき、それはギルド側からしても迷惑なのだから。

 そのため比較的長めの検査を受けることになる。

 そもそも付焼き刃の名付けなど本人が勝手に捨てられる。

 お互いの心の底からの同意があって初めて名付けが成立するのだから。

 長い時間をかけた検査がようやく終わった。

 そしてその足でギルドマスターに会いに行く。


「ほう……。強すぎるエルフですか。ならばまず最初に……」


そこまでボソッと言って口を噤んだ。


「何がですか?」

「いえ、何でもありませんよ。ふたりとも実力十分。これならばパーティとして認めましょう」


なにか釈然としないまま手続きを終わらせてそのまま次の任務についての説明を受ける。


「次の任務は緊急要請が来ています。ですのでこの任務をあなた達に任せ、成功報告を貰い次第昇級できますので」


説明を受けたところメソンといううちの国とその南に接するデモニオという国の国境にあるビューステ山脈。

 そのビューステ山脈の西側の山のメソン側の麓らしい。

 そんな場所に行った理由は行商らしい。

 隣国の特産品を輸出入している最中に山賊に遭遇。

 物資を剥奪され、行商団の何名かを連れ去られたらしい。

 たしかに昇級モンだ。


「受けようか?」

「すべてはメイ様の御心のままに」


仰々しすぎるが、元奴隷としての癖もあるのだろう。

 そこはもう諦めるべきかもしれない。


「では急ぎで行ってきます」

「受理を確認いたしましたので、サインは必要ありません。現場に急行するようにしてください」


俺は急いでギルドを出る。

 移動だけなら以前手に入れた『一般能力(ノーマル) 魔素操作』にて魔素を使って身体を押すことで速度を出せる。

 

「失礼ながら、メイ様は魔法が得意ではないのでしょうか?」

「得意じゃないって言うかそもそも使えないんだよね……」

「それは……」


思い詰めたような表情をするメルに慌てて、


「転生者だからさ」 

「成る程。我らがエルフは清霊を持たずに魔術を行使できますのでメイ様を押させていただくことは可能ですがいかがでしょうか?」

「マジで!? あとでその魔術教えてよ!」

「私なんかでよろしければ」


なんと、魔術は清霊を必要としないらしい。

 何たる抜け穴があるのやら。

 だがこれは紛れもない憧れを持つ言葉である。

 それに浮足立つ──実際空を飛んでる──のを感じながら目的の場所まで飛んでゆくのだ。

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