☆異世界転生☆
彼女ほしーなー。
自宅に最寄りのバス停は池の近くにある。
友達に遊びを誘われてきたのだ。
つーか何なのアイツ!
時間指定も場所指定もアイツだったのに、遅れるって何事よ!
はあ、と溜め息をつきつつ、汚い池を眺める。
と、その時!
目の前のボート二艘が衝突し、バランスを崩したのか一艘がひっくり返ってしまった。
は!? ここボートあんの!? つーより、上がる気配無いんすけど!
俺は慌てて、水に飛び込み、口に入る水の不味さも気にならなかった。いや、ごめんやっぱりクソマズいわ。
何人かは岸の方へと上がっていったが、1人、沈んでしまった。ブクブクと現れる気泡をたどって潜っていく。
この水の中で目は開けられない。何度か繰り返し潜る。
大きなバックを背負っていたし、制服だったから、修学旅行だったのかもしれない。
水も深い上に泥まで深い。杜撰な安全管理なわけではないだろうが、ライフジャケットは必須だろうがよ!
こぽ、と言う音を頼りに助ける。なんとか見つけた。引き上げる!
息が苦しい。身体が空気を求めている。
だけど彼女の方が苦しいはずだ。絶対助けたい!!
引き上げきって水面よりも上にあげる。だが、俺の身体は限界を超え、気を失った。
身体を引っ張られる気がする。そのまま──
遠藤 昭一郎……嘘です。適当に言いました。渕東 山茶です。
俺の好きなことは将棋と読書です。夢は魔法を使うことです。はい。また嘘つきました。そんなことを29歳で言いません。
ん? なになに? はぁ? 30後半かと思っただぁ? 昭和ちゃうわ!
えー、昭和生まれの皆さん。不快な気持ちにさせてしまい、申し訳御座いませんでした。
え? まだある? あんたのファッションは老け見えファッションか?
んなの知るか! そもそも、老け見えファッションってなにさ!? あー、はいはい。暗に、オジサンって言いたいわけね。
いわゆる、年齢イコール彼女いない歴ってヤツです。悲しいかな。一生ボッチ宣言をしましたが、本気のつもりではなかったんです。刑事さん!!
ふざけすぎました。ちょーしにのっちゃって。
え? パクりやめろって? ヤだね。ふーんだ。オジサンですからね。ギャグ止まらないんですよ。
は? それぞ、まさに、“開いた口が塞がらない”、て?
上手いこと言うなや! よく考える必要もないわ、上手くねぇわ!!
俺の (ボッチの) 寂しい人生は終わりを告げた──はずだった。なぜか、2度目の生を与えられるとは思わなかったが。
「……こ……こ……は……?」
空は竜が舞っている。明らかに地球じゃない。黄色い皮膚で出来た翼。
あ、ちゃんと人間だったよ? でも、何か姿が変わってる。女性の身体だ。それも中学生ごろの。つーか、めちゃくそ薄着なんすけど。
さみぃって。
さよなら、俺の息子よ。童貞のまま死ぬとか無念だわー。
歩き回るが、いかんせん地図がない。地図ないなぁ、何て思っていると。
頭の中になにかの文字が浮かび上がる。それはだんだんと形をなしていく。『独創能力 地理学者』……?
脳内には風で動く木の葉までリアルタイムでマップがある。3Dか!? まさかの!?
しかも使い方が勝手に判る。じぶんのさいのーがこわい!!
≪一、通った道半径100km圏内の地図を網羅する。以後、開示可能。
ニ、地魔法の詠唱を省略できる。ただし、1度、詠唱を聞く必要がある。
三、『魔力感知』の効果を発動できる。死角がなくなり、多くの情報を得られる。
四、『解析』を可能とする。ただし、植物に限る≫
なんだってーー!?
因みに……スキルてどんなのだろ。
やっぱ判る! え~と、
≪能力は、異世界から来たときに望んで得るか、修行の果てに得るもの。4個のうち、ひとつ消費している≫
なるほどなるほど。……えー!? なんてことだ。
後ろから、ガサッと聞こえた。
「ぐ……ぐが……ぐぁ!!」
「ゴブリン!?」
ヤバイ、ヤバイ。頭が空転する。おい、さっそく死ぬか!? ゴブリンがじゃなくて、俺が。
対策を練ろうとするが、流石にきつい。お先真っ暗だよ、頭は真っ白なのに。美しいコントラストである。
だが、その間にも攻撃を受けそうになる。
攻撃させて! たとえば、そう、細々に! 殺っちゃって!!
≪貴重能力 殺鬼剣を獲得≫
おー、すげー。
てか、ちょ、待てよ。……モノマネではないよ? 信じてって!
あのゴブリンがもってんのってさ、斧?
殺すき満々やん! 早く効果!
≪一、手元に小刀、刀、太刀、曲剣の何れかを選び、出す。
ニ、破壊された武器を直す尚、この効果は能力以外にも効果アリ
三、魔力、存在値が同等、または以下の場合、身体に触れたものを切り刻む
四、相手の防具破壊、武器破壊が可能。ただし、『王武具』以上は不可能≫
『弱人族』が俺──私?──の身体に触れたとたん身体がざく切りになり、まさに、スプラッタだ。
ツノだけもらっとこ。国民的ゲーム会社のゲームなら売れるからね。
そしたら意味の判らぬ言葉が聞こえてきた。
あ、異世界だったわ。てへぺろ☆
≪貴重能力 言語学者を獲得。
一、全ての言葉を網羅する。
二、全ての詠唱を省略する。だが、一度魔法効果を知る必要がある。
三、全ての言葉を解読する。昔の言葉も含む≫
おー。これで一つ使うのはもったいない気もするが必須だろう。仕方あるまい。
たのむぞ、おっさん。もっかい言って!
「誰だ? 君は?」
気付かなかったとでも言うかのように振り替える。
よーし、異世界ファーストコンタクトだ!
「こんにちはー!」
「!! んんッ。何だその姿は?」
けしからん、と頬を赤くして言った。
むふー。
あーあ。純粋真っ直ぐちゃんスタイルね。うーわ、かわいい!
ま、俺は男だけど!
「わたし、道迷っちゃって……」
目をウルウルさせながらそういった。
能力獲得は出来なかったが、中々の名演技だったのではないか?
「うっ……。まあいい。俺について来い。疲れたらおんぶしてやるぞ」
何このおっさんー! 良いやつー!
もうそろそろつく町へ向けて期待を心に満たしつつ、歩く。