(学年最弱の成長物語)
少年少女達は来たる戦闘に備えての訓練と年に一度日頃の
〈プロローグ〉
「ハアハア‥お父さん!お父さん!何処にいるの?」
静まりかえった空間に少年の声だけが響きわたる。
少年はお父さんを暗いビルの中で探し回った。
あたりには数時間前の戦闘でやられた警備隊が虫の息で倒れていた。
「嫌だ…まだ死にたくない…」
「た…助けてくれ…神様…」
目の前に広がる惨状に少年はいつしか怒りを覚えていた。
「誰がこんな事を…」
ふと前を見ると灯りがついた一室から身に覚えのある声がした。
「まだ誰か居るのかな?」
恐る恐る少年は部屋の中をぞいて見た。
「貴…貴様!何故お前がこのような裏切りを…」
「あははは!何を仰っているんですか?!私がいつあなたに忠誠を誓ったと?」
するとそこには探していたお父さんと少年の兄さんがいた。
「なんで兄さんがこんなところに…」
少年は動揺していた。
何故なら数年前に失踪したはずの兄さんが目の前にいるからだ。
「数年前に家を出たと思って久しぶりの再会が親の暗殺だなんて…」
少年の心に衝撃が走った。
「そんな…兄さんが…」
少年は軽く後ろに下がってしまった。
すると…
ガラガラ…
後ろにあった鉄パイプが少年の当たった衝撃で流れを撃つように倒れて行く。
「誰だ‼︎」
音に気付いた兄さんが声を荒げた。
「兄さん…お久しぶりです…」
「龍平…どうしてこんなところに…」
少年が恐る恐る柱の影から顔をだすと少年の兄さんは驚いた表情をしていた。
「兄さん!どうしてこ…‼︎」
と少年がいいかけたところで兄さんが笑いながら話し始めた。
「邪魔な野郎が生きていやがったか!まぁしっかり見るんだな龍平。お前の親父の死に際を!」
「く…来るな‼︎お前だけでもいいから早く逃げろ!!」
兄さんはお父さんの脳天に向けて銃口を向けていた。
「やめて兄さん‼︎お父さんを殺さないで!」
少年は叫んだ。
「黙れ!お前に俺の…親に見捨てられた俺の気持ちが分かるか!」
「兄さん…」
少年の言葉に兄さんは目を充血させながら言葉を返した。
「もういい。お前だけでも生きてくれ。」
お父さんがそう言うと生き残りの警備隊の人が現れ少年を抱えた。
「離せ!お父さん!」
少年は必死にもがいて離れようとした。
「お坊っちゃま!大人しくしてください。」
警備隊も必死になって捕まえようととした。
「もう行け!」
お父さんはそう言うと手元のボタンを押した。
すると突然
ガラガラ…
「扉が締まってくる」
目の前の空いていたはずの扉がしまり始めた。
「さぁ。こちらに逃げますよ。」
警備隊に捕まった少年は強引に連れて行かれそうになった。
「お父さんを見捨てるなんて嫌だ。だから皆さんだけで逃げて。」
しかし少年はその腕を振り解きその場に残った。
どーん。
「じゃあさようなら。警備隊の皆さん。」
そして重い扉が閉まり警備隊と別れた少年は小さく呟くと兄さんに向かって走り出しながら叫んだ。
「兄さん。お父さんを撃たないでー。」
しかし兄さんはその言葉を無視して話し始めた。
「それでは、お父様。さようなら。」
「龍平…最後まで足掻いて諦めずに生きろ!」
お父さんがそう言った瞬間、無情にも兄さんはゆっくりと引き金をひいた。
バン!
「うわー!お父さんー!」
少年は走る事辞めその場で大きな声を出して泣いた。
(ドックン)
「うっ…」
するとお父さんの死を悲しむと同時に自分の心が深い憎しみに包まれていくのを感じた。
「よくも…お父さんを…」
「あはは。俺が憎いか!じゃあ俺をこいつで殺してみろ!」
兄さんは笑いながらいい、手元にあった拳銃を投げた。
「絶対に許さない…ぶっ殺してやる!」
少年は怒りに身を任せて投げられた拳銃手に取り兄さんに銃口を向けた。
「あははは!龍平いいぞ!さあ俺を殺せ!」
「わあー」
ばん!
少年は拳銃の兄さんに向かって力いっぱい引き金を引いいた。
「まあ当たればな…!」
ピキ!
銃声が響いたのと同時に何か地響きみたいな音が足元から聞こえてきた。
「な…!床が…」
すると突然足元が崩れた。
「じゃあな!龍平!またいつか会おう!」
少年はそのまま崩れた床から暗闇の中に落ちていった。
「兄さんを殺してやる…いつか絶対に…!」
落ちていく暗闇の中で少年の声だけが響いた。
〈新たな旅立ち〉
「うわー!はぁはぁ…」
木野は夢から醒めて飛び起きた。
チュンチュン…
窓から眩しいくらいの朝日が照りつけ、スズメがたのしそうに鳴いていた。
「今日も朝から最悪だよ…」
木野はいつもの夢のせいで天気は快晴なのに心は晴れなかった。
「いつまでこんな悪夢を見るんだよ…」
木野はそう言いながらふと目の前の電子時計をみた。
「やば!もうこんな時間かよ。」
電子時計は2090年、8時10分と表示されていた。
「転入初日から遅刻とか恥ずかし過ぎるだろ。」
起床予定時間をとうに過ぎていた木野はそう言いながら急いで着替えて家を出た。
この男の名前は木野龍平。今日から「都立英明学園」に通う高校ニ年の17才。
この「都立英明学園」は世界で唯一の戦闘用Ai (アクシオンインペリアル)の開発、操縦者育成の為の授業、実習を行う学園でその為、世界中から自国のAi 技術の向上の為に大勢の生徒が集まってきて、その生徒は国家代表生と言うらしい。
しかし、木野は中学卒業後から二年生になる今まで地元の進学校の都立雷雲寺学院に通っていた。
この都立雷雲寺学院は木野の姉の出身校でもあり、偏差値85を超える勉学に関しては全国屈指の名門校でもある。
そんな木野が何故この学園に行くことになったのはこの男の姉のせいなのだ。
「本当に姉貴はいつも適当なんだよな…」
木野はそう呟きながら学校に向けて急いで走り出した。
〜数日前〜
「龍君〜。ただいま久しぶりにおねぇちゃんが帰還したよ〜。」
「お帰り姉貴。久しぶりって感じじゃないけどな。」
「えー。久しぶりだよ。」
「昨日も会ったから…」
「久しぶりじゃんか。」
「はぁ…。姉貴は本当に天然だな…」
「何いってんの龍君。おねぇちゃんはお魚さんじゃないぞ。」
「はぁ…。そう言う事じゃないから…。」
「本当に龍君はお馬鹿さんだね。」
(その言葉そっくりそのまま返却してやるよ。)
「ところで姉貴はいつまでこっちにいるんだ?」
「いまから出るよ。天才は忙しいのだ。」
そうこのまるで雲の様なふわふわしている喋り方の人こそ木野の姉の木野沙耶なのだ。
木野沙那はこの雰囲気に似合わず戦闘用Ai (アクシオンインペリアル)を開発した科学の頭脳と呼ばれる天才科学者と言うすごい人なのだ。
(本当に普段の行動からは天才科学者のカケラすらない感じられないけどな…)
「じゃおねぇちゃんもう行くね。」
「体に気をつけてね。」
「大丈夫よ。おねぇちゃんの初めては龍君って決めてるから!」
「⁇。姉貴はなんの話ししてるんだ?」
「えっ?貞操の話でしょ?」
「な!違うわ。体調だから。」
「なーんだ。おねぇちゃん恥ずかしいじゃん。」
「今の発言はおねぇちゃんとか以前に人間としてやばいから。」
(姉貴はAi の研究より自分の頭を研究してくれ。)
「じゃあ今度こそ行くね。」
「いってらっしゃい。」
と送りだすと姉が急に思い出したかのように
「あっ、そう言うえば龍君は来週から英明学園に転入になったから。」
木野はその言葉で数秒間固まり
「いやいや。俺、雷雲寺に通ってるからそんな急に無…」
と言おうとすると姉が
「大丈夫。もう転入手続きはしてるし龍君の部屋に用具は用意しているの。」
と姉は言うと笑いながら
「よろしくね。後、琴美ちゃんには連絡しておいたから。」
と言って出掛けてしまった。
「姉貴―!適当過ぎるだろー!」
と言う感じで転入が決まり、急いで移動した木野は船の時間に間に合い英明行きの船に乗り移動していた。
「姉貴め…面倒なやつに連絡しやがって…」
この出来事を思い出す度に木野は頭を抱えた。
「はぁ…。決まった事はしょうがないしとりあえず着いてから迷わない様に姉貴が用意してくれた英明の地図だけでも見ておこ。」
英明学園はかなり広いらしく東京都のおよそ10倍の大きさがあり、25年前に完成した学園と都市が合わさった人口の島らしい。
そしてここには国家の安全保障が取られており戦争が始まっても日本本土が攻略されない限り安全となっている。
それにより政財界の人や一般の人まで述べ5万人の人が身の安全とAi 操縦者に憧れる多くの若者が移住をして来てるが移住費が高く、その為この英明学園の生徒は金持ちが多いという。
「でもさすがは天才科学者だな。用意がいい。」
この地図は姉が用意していたカバンの中に入っていた。
「英明の校舎はどこかな?」
木野は地図を見た。するとそこにはアメリカの文字が
「ってこれ世界地図じゃないか!姉貴―!」
本当に姉は科学者なのかと木野が思っていると
(英明学園到着です。)
とアナウンスが流れた
「さぁ。ようやく着いた。」
木野は軽く伸びをしながら船を降りた。
「本当に広いな。これは迷いそうだな。」
船を降りてあたりを見回すと広大な敷地に沢山のビルや住宅地、そして緑も沢山あった。
「せっかく来たからには楽しくしないとな。」
木野はそう言うと校舎のある方に歩き始めた。
〈波乱の転校初日〉
「ようやくついたよ。かなり当周りしたな。」
歩く事1時間くらいで木野は英明の校門前についた。
「っていうか街の作り過ぎだろ。山のうえまで登るの帰宅部にはしんどいわ。」
この英明学園は小高い山の上にあり、その眼下には英明の美しい街並みが一望できる。
「まぁ、この景色も悪くないないけどな。」
木野が街並みを眺めていると…。
「どうしたの龍ちゃん。もうホームシックでもしちゃたのかな⁈」
横から聞き覚えのある懐かしい声がしたので振り返って見る。
「なんだ琴美か。久しぶりだな。」
「なんだとは何よ。琴美がせっかく大好きな龍ちゃんにハグハグしようと思ったのに。」
この女の子は月ノ瀬琴美。物心ついた頃から木野と一緒にいる。いわゆる幼馴染ってやつだ。
「ちょっと龍ちゃん。聞こえてるなら無視してないで返事して。」
「いや。遠慮しておくわ。」
琴美は昔からずっと木野にくっついてきている。
「二年生になって転校してくるなんて龍ちゃんは琴美の事本当に大好きなんだから!」
「いや、俺は転校したくなかったし…」
「どうせまた沙那さんでしょ。連絡きたし。もー。龍ちゃんは昔から沙那さんに振り回されてるんだから。」
「はぁ…。姉貴の好意は本当に昔からいい迷惑だぜ…」
木野は姉との昔の記憶を思い出し、深く溜息をついた。
「そんな事よりも龍ちゃん。愛しの琴美にあった感想は?」
すると琴美が突然木野に妙な事を質問した。
「あ?えっと…」
そう言わた木野はおどけながらもじっくりと琴美の姿を観察した。
背丈は高く、手足は長い細いし髪は綺麗な茶髪で後ろでまとめている。
「さぁ。龍ちゃん感想をどうぞ。」
(まぁ俺からすれば …)
「もう少し胸があ…ごぶぁ。」
急に木野の顔面に激痛が走る。
「今、なんて言ったのかな龍ちゃん?もう一回言ってくれるかな?」
木野が上を見ると琴美が死んだ魚の目をしてこっちを見ていた。
「絶対に嫌だ!また殴るだろ。」
(そもそも感想を言えって言ったのは琴美なのに理不尽過ぎる。)
「大丈夫。もうしないから。」
以外にも琴美はにっこり笑ってそう言った。
(さすが琴美。物分かりがいい。)
「まじ⁈じゃあ貧…」
「その代わり腕一本で勘弁してあげるよ!」
(何故だろう、状況が悪化してる気がする。)
「悪かったよ…ごめんな。」
「本当に龍ちゃんは昔からデリカシーが無いんだから。」
(デリカシー?何それ美味しいの?)
キーンコーンカーンコーン
「龍ちゃん。遅刻したらまずいから早くいくよ。」
「あー。了解です。」
ホームルーム開始の鐘がなった為、木野達は急いで教室に向かって走り出した。
「ハアハア。やっと着いたわ。」
教室までかけていき琴美は隣のクラスだから別れ木野は自分のクラスを見つけて中に入った。
「こら木野!もう授業が始まるぞ!」
「あ!すみません。」
木野が教室に入ると先生がもう来ていた。
「転入初日から遅刻とは何事だばかたれ!お前の席はそこの空いているやつだ。」
「すみません、ありがとうございます。すぐ準備します。」
「それでは初めての木野の為に改めて自己紹介をする。私が貴様らの男性科の担任の朝日奈涼子だ。日本軍Ai 部隊の戦闘隊長だ。自己紹介は以上だ。」
先生は木野が席に着いたのを確認すると話し始めた。
「皆は知っているだろうがここは日本軍の特殊Ai 部隊の人材を育成する世界唯一の学園だ。遊びで来てるなら今すぐ荷物をまとめて家に帰ってもいいぞ。本当の戦場なら死んでいるからな。」
先生が真剣な目付きで木野達を睨んだ。
「予想はしてたけど厳しそうな先生だな…」
ここ英明学園は卒業するとすぐに特殊Ai 部隊に配属される。だから学園の先生方は日本軍の軍人の幹部クラスかこの学園の卒業生が勤め、在学中に一年生は基礎訓練、二年生、三年生は戦闘のやり方や軍人としての心構えなどを学び、男性に至っては昇格制度もあり、学業成績や訓練態度なのでランク付けされてそれによって卒業後の配属先が決定する。ちなみに女性は女性部隊の一部隊しかない為昇格制度は適用外となる。その為この英明学園は日本一教育が厳しい学園と言われている。
「各々木野への自己紹介は各自で済ませておけ。では今から授業を始める。」
「俺…本当にここで後二年間も過ごせるのか…?」
文字通りに今日から木野の不安だらけの学園生活が始まった。
「あ…めっちゃ疲れた…」
木野は休み時間に皆んなに自己紹介を軽く済ませながら転入後の初めての授業を最後まで受けた。
「普通教科じゃないから何もわからないし先生早過ぎ…」
授業が始まると先生がすごい勢いで板書し始めたので木野は必死にノートを取っていたが専門的な為勿論何も理解などしていなかった。
「最後まで専門の教科しかないとか本当にここは学校か…?」
「お前大変そうだな。」
「あー…」
木野が世の中の苦しみに打ちひしがれていると突然誰かに声を掛けられた。
「おっす、久しぶりだな龍。今日も琴美ちゃんとラブラブか?」
「おまえは何処をどう見たら俺達がラブラブに見えてんだよ。」
こいつは美空聖夜。木野の中学時代からの親友だ。
「あははは。おまえは昔から相変わらずだな。」
そう言うと聖夜は笑い始めた。
「何笑ってるんだよおまえは。」
(昔からずっと一緒だけどこいつの発言は毎回わからない。)
「すまんな。でどうなの?」
聖夜が体を乗り出して聞いてくる。
「どうって何がだよ?」
木野は明後日の方角を見ながら話しを返す。
「琴美ちゃんのことだよ。」
「ぶー!ケホケホ。テメー急に何言い出しやがるんだよ。」
聖夜の爆弾発言で俺はおもいっきり吹き出した。
「だって琴美ちゃんって昔から龍loveじゃん。」
「違うわ。琴美の好きはそういう好きじゃ無いから。」
「おまえは昔から相変わらず鈍いな。」
「うるさいな。俺は恋とかはいいの。」
昔から木野は色恋沙汰にはかなり鈍い。木野自身に自覚はないが。
「でもお前は羨ましいよ。あの月夜の令嬢の一人娘に好かれてるんだから。」
「別に琴美に好かれたって嬉しくはないわ。」
月夜の令嬢とは今は死んだとされている琴美の母親の月ノ瀬麗華さんの二つ名の事であり、何故この呼び名かというと月ノ瀬麗華さんは世界で初めて初代Ai である装甲型を操縦した女性であり、麗華さん一人でおよそ装甲型操縦者100人分の戦闘力に匹敵すると言われ夜間は無敗、尚且つ類い稀な美貌の持ち主であったからである。
その為、日本国家から数多くの遠征の依頼があり、その戦績がテレビや雑誌なので大々的に取り上げられていつしか美しいのに男性にも負けない強さから世の女性の憧れの存在になり女性のAi 操縦者が増加していった。
しかし、その美貌に男性が反応しないわけが無く、15年前に軍の遠征中の宿舎で就寝しているところを見つかり複数の男性に強姦され琴美を妊娠し、その影響からか重度の男性恐怖症を発生してしまい、これでは戦闘出来ない為自ら日本軍を退役した。
琴美を産んでからは実家に帰省して生まれたばかりの琴美と平和な暮らしを送るが琴美が10歳の頃に突然謎の失踪をしてしまい、それから突然母親を失った琴美は麗華さんの祖父母の家に引き取られ育てられた。
「そう言えば発表では自殺らしいけどな。」
「さあ、どうだろうね。」
木野達がそういう話しをしていると。
「二人共私に隠れて何話してるの⁈」
琴美が後ろから話しかけてきた。
「琴美ちゃんが龍の事大好き過ぎて羨ましいって話し。」
「ちょっと。美空!ふざけた事言わないでよ。」
「待て琴美。おまえは隣のクラスだろうが。どこから湧いてきた。」
「私は龍ちゃんのいる場所ならどこでも湧くわ。」
(おまえはゴキブリか。)
「それより琴美ちゃんは龍の事どう思ってるの⁇」
聖夜が慌てて話しを本題に戻してきた
「そうだいってやれ琴美。お前の気持ちを。」
「分かった。龍ちゃん言うね。」
琴美はそう言うと大きく息を吸う。
「私が龍ちゃんの事好きなのは違って。本当は…」
そして少し頬を赤らめ。
「どうだ聖夜。これが真実…」
「大好きなの!キャ。いっちゃた。」
(今の言葉の違いがわからないのは俺だけか。)
「お前何言い出しやがるんだよ。話し聞いていたか。」
「だって龍ちゃんが私の愛を叫べって。」
「あははは。やっぱり二人はラブラブだな。」
「待て聖夜。今の会話一ミリも噛み合っていないぞ。」
(こいつらの脳内はお花畑か。)
「そういえば今日琴美ちゃんのクラスにこの時期に珍しく転校生が来たらしいじゃん。」
「お前はそういう情報だけはすごい早いな…」
木野が呆れた感じでいうと
「あたりまえだろ。俺の美少女アンテナが察知するんだよ。」
「そんなアンテナよりお前は妖怪でも探していろ。」
「ひどいな龍。お前は美少女好きじゃ無いのか?」
「いや。だから…」
と木野がいい返そうとしたら
「龍ちゃんは私以外の女は眼中に入らないからしょうがないよ。」
「そうなのか龍!」
聖夜が激しく食いついてきた。
(こいつはなんてことをいってだ。)
「そんな事ないよ。今日だっててあたり次第女を…うぉっ!」
木野が反論しようとしたら鋭い鋭利な物が俺の頬を掠めた。
そして赤い液体が俺の頬から滴る。
「何だ!」
木野はびっくりして周囲を確認する。
「ごめん龍ちゃん。手が滑っちゃた。」
すると目の前の琴美が笑いながらいった。
「お前…何をして…」
恐る恐る横を見るとそこには壁に刺さったサバイバルナイフがあった。
「ってなんてもの投げてくれてるの!お前は俺を殺す気か!」
「大丈夫安心して。峰打ちにするから。」
壁に刺さる程の威力のナイフが峰打ちになるわけがない。
「冗談だよ琴美。お願いだから俺本当に死んじゃう。」
「大丈夫龍ちゃん。許してあげる。」
琴美は優しく微笑んだ。
「さすが優しいな。ありがとう琴美。」
「次は絶対に外さないから。」
(いや。それは許したに入らないよね。)
「待て琴美。話しを聞いてくれ。」
「これを当てた後にゆっくり聞いてあげるね。」
(ナイフが刺さった後は死んでるから話せないよ。)
「龍ちゃん大人しくして。」
その瞬間琴美がナイフを投げた。
「本当に死んじゃうから!やめろー!」
木野がとっさに回避行動をしようとしたその瞬間
「木野様。危なーい。」
「うわ。」
誰かの声と共に身体に弾き飛ばされたような衝撃が木野の全身を襲っていた。
「大丈夫ですか?木野様。」
木野は朦朧とする意識の中で声が聞こえた。
「き…君は?」
うっすら目を開けるとそこにはピンク色の短い髪の女の子が
「良かったです。木野様意識が戻ったんですね。」
にっこり微笑見ながら…木野の足の上に座っていた。
「うあー。ごめん。」
木野は慌ててその子から距離を置いた。
「別によろしいですわよ。木野様なら。」
少女は頬を赤らめながらいった。
「いや。助けてくれてありがとう。」
俺は軽くお礼をしてある質問をした。
「で、なんでお前がこんなところにいる。」
木野はこの女の子を知っていた。
「そんなの一つしかないですわ。」
すると少女は体をくねらせながらいうと
「会いたかったですわ!木野様〜!。」
木野に向かってラリアットをかましてきた。
「ごぶぁ!」
その瞬間木野は床に倒され、全身に物凄い激痛が走っていた。
「ちょっと。フリージア何を。」
「良いではないですか。木野様〜。」
木野は必死に逃げようと抵抗するが全く動かない。
「フリージア。お前どんだけ力が強いんだよ。」
「それは私くしたちの愛の強さですわ。」
(ダメだ。話しが全く通じない。)
「ちょっと!龍ちゃんから離れなさいよ。」
「おー。龍はいいな。美少女に抱きつかれて。」
「あなたもいかが?」
「俺もいいんですか?」
「ダメに決まってるじゃ無いですか。私の全ては木野様の物です。」
「いい加減にしなさい。さぁ龍ちゃん。こんなやつより私のほうに来なさい。」
木野が苦しんでる頭上ではみんなが思い思いの会話を繰り広げていた。
「お前ら。いい加減にしろ!」
木野はおもいっきり力を入れ、フリージアをどかした。
「かなり強引ですわ。木野様。」
「龍ちゃん大丈夫?」
「やっと起きたか。龍。」
「いい加減助けろよお前達は。俺を無視して喋りやがって。」
(こいつらには思いやりという概念が存在していないのか?)
「ところでフリージア。お前がなんでここにいるか説明してくれ。」
「そんなの木野様に…」
「悪ふざけはなしだぞ。フリージア。」
木野がそういうと彼女は少し頬を膨らませながら話し始めた。
「私くしは木野様に会いたい一心で勉学に励みスペインの国家代表生となり今日からこの英明に転入して来ました。」
「じゃあ、お前が噂になっていた転校生か。」
「そうですわ。私くしが噂の天才的美少女転校生ですわ。」
(誰もそこまで言ってない。)
「ちょっと龍ちゃん。私を無視して会話しないで。」
後ろから琴美の拗ねた声が聞こえた。
「すまん。5年振りだから…」
(しまった。ついつい懐かしてく長話してしまった。)
「で、その子の名前は?」
琴美が不思議そうに聞いてきた。
「こいつは…ってなんでお前が名前知らんのだ?同じ女性科のクラスなのに。」
ここ英明学園は今では2クラスあるが、もともとは男子しかいない、いわゆる男子高だった。
そもそもAi は開発当初は人が機体の中に入って動かす、いわゆる『装甲型』で機体操縦事態がかなりの重量の為、力のある男だけが動かせるとされていた。
しかし10年前に日本で唯一のAi 開発の会社がクーデターに遭い、会社内にある多数の機体が破壊され、戦死者も膨大な数に及んだ。。
それに伴い女性の社会進出が活発化し、女性もAi を操縦させて人材不足を補うべきとの声が増加した。
そして、5年前天才科学者、木野沙那により筋力の無い女性でも簡単に動かせるAi『プログラム起動型』を開発し、その後大河内コーポレーションより世界的に発表され、その扱いやすさから今ではそれが主流となっている。
その為、この英明学園も5年前に男女共学化になり男性科と女性科の2クラスに分けられている。
「私、龍ちゃんしか見てないからクラスメイトは全員名前がわからないしわざわざ覚える気もない。」
(はぁ…こいつの頭の中を一回姉貴に診てもらうか…)
木野がため息をつきながら説明しようとすると
「私はフリージア・ベネットと申します。以後お見知り置きを」
フリージアが自己紹介をした。
「ベネット…もしかしてあのベネット社の⁈」
すると突然、琴美が動揺し始めた。
「どうした!何があった⁈」
木野は動揺する琴美にびっくりした。
「龍ちゃん知らんの?スペインのベネット社といえば、初代Ai 『装甲型』の生産量が世界ナンバー1で、アメリカのエアスカーレット社と日本の大河内コーポレーションに並ぶ世界3代Ai 開発企業の一つじゃん。」
琴美が興奮しながら説明してくれた。
「そうなんだ、すごいなフリージアの両親は。」
木野がその話しを聞いてフリージアを褒めると
「あ…ありがとうございます。木野様…」
フリージアは曇り顔のまま答えた。
(⁇…フリージアはどうしたんだ?)
木野がフリージアを心配していたら
「そう言えばフリージアちゃんと龍ちゃんってどんな関係なの?」
「ブー!けほけほ…」
琴美が突然爆弾を放り込んできた。
「お…お前は何聞いてんだ⁉︎俺達はな」
「それは私が説明いたします。」
木野が必死に弁明しようとした努力も虚しくフリージアが話し始めた。
「私と木野様は…」
「フリージア!やめろ!」
そして木野が止めようとすると
「婚約していますの。」
「「えー‼︎」」
教室中に二人の言葉が響いた。