表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

命の欠片たち

「普通」と「まとも」と「鈍感」と

作者: 羽入 満月

本当にひたすら暗いです。


 あなたは自分のことを「まとも」とか「普通」とか、まぁそういう括りだと思っていますか?


 ちなみに私は、思っていますよ。

 自分のことは、普通だって。


 でも……たぶん普通じゃないのです。


 思い返してみれば、まともどころか、よく生きてますね?って思うレベルなんです。


 早い話が苛められっ子だったのです。

 小学校から中学校の六年間。

 クラスどころか学年中から無視されて、先生も特に対策はしない。

 無視されてるのに悪口はいわれるんですよ、おかしなことに。

 反応したら、それをネタにされるだけだから、ひたすらポーカーフェイスを貫くしかない。

 グループ作っても余り物。

 持ち物を棄てられ、授業で作ったものは壊され、足を引っ掻けて転ばされ。

 ほかにも、上げればきりがない程色々されました。


 なのに、律儀に皆勤賞で毎日学校に通いました。

 朝起きれなくても、朝ごはん吐いても、家に帰って吐いても、夜寝れなくても。

 夜叫びだして、暴れたくなるのを我慢して、腕に爪を立てて我慢して。

 歯がなくなるんじゃないかってぐらい奥歯を噛み締めて、爪が食い込むぐらい手を握りこんで、それでも学校に行くんですよ、バカですよね。


 家族に「私、苛められてます」なんて言えるわけないじゃないですか。

 だって兄弟の中で一番まともなのはあなたしかいないって言われちゃってるんですよ。

 上も下も手の掛かる奴らで、もう私より先に迷惑をかけてるんです。

 その上で「はい、私も困ってます。助けてください」なんて言えないでしょう?


 1日の中で話した言葉は、片手で数えるほどで、泣くのは夜、布団のなか。泣き声を上げたらバレるかも知れないから、声をださずに。


 それでも、自分は異常じゃないと思っているんです。

 いや、多少は思っていましたが、深刻なほどには思っていませんでした。


 吐いていたことに関しても、バレないように人差し指と中指にハキダコができれば、歯に当たらないように指を入れるやり方を工夫し、そのうち吐くこと自体、バレないように辞めました。


 そうやって、冷静に分析したり、ブレーキを踏めたりしたことで私は平気だと思っていたのです。


 おしゃべりで、泣き虫で、表情豊かだと言われた私は、もういませんでした。

 ポーカーフェイスだの、能面だの、クールだの、そういう評価になりました。



 そのまま高校に上がりましたが、年一回マジギレするほどのことが起こりました。

 でもまぁここら辺は、それほど頭のおかしいことはなかったです。

 ひたすら静かに、人畜無害な人になりましたから。

 担任にも保護者会の時に「他に手の掛かる子が一杯いて……お宅の娘さんはとても(手の掛からない)イイコですね」と親が言われたぐらいです。


 わりと穏やかな高校生活を挟んだことにより、自分のことを振り替えれたんです。


 あれ?

 よく私、自殺しなかったなって。

 よく、あれを我慢できたなって。

 今タイムスリップしたり、同じことをされたりしたら、我慢できないだろうということに。


 妄想のなかでは、何回も自殺しているし、相手を殺しているし、学校燃やというか、爆破しています。

 それでも見栄と意地で乗り越えてきた自分に恐怖すら感じました。


 まぁ、そんな見栄と意地がすごい私は、変な方向に我慢強い人になってしまったわけです。




 大学でもあわや資格が取れないのでは?と言うほどの事件がありまして……


 早い話が先生と喧嘩したんですよ。

 相手が「資格を取れなくしてやる」っていうから、その喧嘩を買った訳です。


 大学まで行けば、それまでの私を知らない人ばかりですから、私のイメージは、「優しい」「物静か」「落ち着いている」でした。


 だから、同じ講義を取っているひとに「先生と喧嘩をした人がいるらしい」といわれた時には「そうらしいね」と笑ってごまかすことしか出来ませんでした。


 そうそう、私は喧嘩を「買った」ので、その先生の授業にでても単位は「貰えない」ことがわかっていましたが、すべての授業に出席しました。

 一番後ろの席で。

 ただ、静かに座っていました。

 凄くやりにくかったでしょうね。


 この先生とのバトルは、さすがに親にバレました。


 それに人生で始めてリスカをしました。

 それでも「バレないように」と、手首を切るのは3日に一度。一回切った場所と同じところを。

 次第に手首ではなく、アームになり、太ももになりました。

 生まれて始めて、泣いたら次の日、目が腫れると言うことも経験しました。


 これもやはり、自分はおかしいとは思っていませんでした。

 だって、あの時とは状況が違いましたから。

 吐いてもいないし、夜寝れなくなるわけでもない。

 爪が食い込むぐらい手を握るわけでも、体が重たくて、なにもしたくないと思って、座り込むわけでもない。


 何年かして、振り返ってみれば、「あぁ、あの時の私は追い詰められていたのかもしれない」とは思いますが。



 就職してからだって本当に色々ありました。

 合わない上司とやったときは、一番ひどかったですね。

 休みの日にメールやらファックスがきて、書類の再提出を迫られる。

「なぜ、こんな簡単なことが出来ないの?」と怒られる毎日。

 会議でみんなの前で吊るしあげられる。


 そうするとどうなると思います?

 たまに立ち上がった時に、視界が白くなります。

 でも、立ちくらみは黒くなるのでしょう?じわじわと視界が白くなって、数秒でじわじわと元に戻る立ちくらみなんて聞いたことなかったのです。

 それに、帰宅後家のなかでなるものですから、視界不良でも歩けるんです。慣れですね。


 他には、寝ようとすると耳許で蚊が飛ぶんです。

 耳をぱちんと叩くとしばらく静かになるんですが、すぐにまた飛び始めます。

 おかしなことに、聞こえている耳を枕に押し付けても耳のなかを蚊が飛びます。

 ちょっとおかしいなと思いつつも、「夏だから」と無理やり納得させていました。


 あと、さぁ寝ようって布団に横になって、少しすると脈が飛んで、息ができなくなるんですよ。

 数秒後に心臓が痛くなって、ドドドッと脈が再開し、息もできるようになる、みたいなことも2日に一回ぐらい起きました。

 まぁ、健診で心電図引っ掛かって、ちゃんと調べてもらった時に、不整脈(あなたの心臓のくせです)って言われていたものですから、それだろうと思うわけですよ。



 今考えれば、絶対違いますよね?

 明らかにストレスにやられてます。



 同じことが起こればすぐに気づけるのに、毎回違うことが起こるので、後から考えれば「おや?」と思うことも、渦中にいるときは、必死すぎて気づけないんです。


 後から気づいても、今その状況にいないから、だからどうした?あぁ、あのときは酷かった。と思い出にすらなっています。


 それにですね。

 あの六年間をクリアしてしまった私は、毎回思うのです。


「あぁ、あの時より、ましだなぁ」って。


「まだ、自分は大丈夫」って。



 今後もきっと、なにかひどい目に合ったとしても、その時には気づかずに思い出になってから気づくと思います。


 鈍感にならないと、生きていけない世の中ですから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ