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経済の話

財政赤字楽観論への警鐘と解決案

 財政赤字楽観論への警鐘と解決案

 

 いつくらいの時期なのかは忘れましたが、日本の“長期国債金利”(以後、特別な理由がない限り単に“金利”と表現します)がよく報道番組で取り上げられていました。

 これは恐らく2022年3月現在、日本の膨大な財政赤字が日本経済に深刻なダメージを与える要因の中で、最も警戒すべきトリガーが“金利の上昇”だからだろうと思われます。

 詳細は後に説明しますが、金利が上昇すると金融機関に大ダメージを与えてしまうのです。

 ただし、真っ当な経済成長に因る金利上昇であったのなら耐え切れる可能性は充分にあるでしょう。問題なのはその他の要因、例えば国際的な金融取引の影響や、スタグフレーションによる物価上昇によって起こってしまう金利上昇です。

 財政赤字が増えれば増える程、金利上昇によるダメージは大きくなり、日本経済が危険な状態に追い込まれるデッドラインは、(曖昧な記憶で申し訳ないのですが)随分前に聞いたのは“3.5%”でしたが、最近耳にしたのは“2.5%”でした。

 つまり着実に危機は迫っているのですね。

 2.5%は、国際的に観れば決して高くない金利で、かつては日本でもこれ以上の金利で取引が行われていました。ただし、2022年3月現在、金利は0.15%という極めて低い水準に抑えられています。これが持続可能ならば、ピンチに陥るのはまだまだ当分先だと言えるでしょう。

 

 ――が、これは少々楽観的な見通しに過ぎるかもしれません。

 

 2022年3月現在、ロシアがウクライナに侵攻しています。その影響により、世界のエネルギー資源価格が上昇し、コストプッシュインフレが起こっています。もしこの影響で現在日本銀行が行っている金融緩和を弱めなくてはならない事態に陥ったなら、間違いなく金利は上昇します。

 (円安の影響も見逃せません)

 もちろんそれでも2.5%のデッドラインには届かない(と言うよりも、そうならないように抑える)でしょうが、それでも財政赤字に対する楽観論には警鐘を鳴らさざるを得ません。

 近年、経済学のMMT派の影響か、日本でも財政赤字の楽観論が目立つようになりました。ですが、MMT派は金利に対して深く考慮できていないと僕は判断しています(僕はMMTは基本的には正しいと思っていますが、財政赤字への楽観視には大いに疑問を抱いています)。その代表例が、コストプッシュインフレの影響で金利が上昇してしまうケースです。

 では、具体的に、コストプッシュインフレが起こると、どうして金利が上昇してしまうのか、それを説明していきたいと思います。

 

 ■物価上昇で金利は上がる

 

 長期国債金利はその国の金利の基準になっています。だから長期国債金利が上がると国全体の金利が上がってしまいます。その為、長期国債金利をいかにコントロールするかがその国の金融市場にとって重要になってきます。

 通常、債券は市場の需要と供給のバランスによって金利が上下するのですが、長期国債金利も同じ様に市場の需給バランスによって金利が上下します。

 つまり、0.15%という低金利を維持できているのは、それだけ長期国債が買われているからなのです。

 が、その“最大の買い手”は民間ではありません。“政府の銀行”である日本銀行(以下、日銀)が大量に国債を買い入れる事によって低金利を維持できているのですね(これを金融緩和といいます)。

 これを読んで、

 「なら、いつまでも日銀が国債を買い支えれば良いのでは? そうすれば低金利が維持できるはず……」

 と、思う人もいるかもしれませんが、そう簡単にはいきません。

 日銀が長期国債を買い始めたのは、もちろん低金利を実現する為でもあるのですが、同時に物価上昇インフレの為でもあります。

 “国債を買う”とは、つまり、それだけ多く市場に通貨をばらまく行為でもあるからです。通貨を供給すれば、物価が上昇すると考えられます(ただし、その効果を疑問視している人も多いのですが)。

 ですから、当然、物価が上昇してしまったなら、長期国債の買取を止めなくてはいけない事になります(どの程度のインフレまで日銀が許容するのかは分かりません)。すると、当然、金利が上昇してしまうのですね。非常にシンプルな話です。

 また、そもそも物価上昇自体に金利上昇効果があると言われてもいます。

 物価が上昇し続ける状況下では、できる限り早く商品を買った方が得になります。ある商品が、今日買えば100万円だけど、明日買ったなら110万円になると分かっているのなら、誰だって今日買おうとするでしょう?

 (つまり、通貨価値が下落するって事なのですが)

 こうなると、生活者は預金から通貨を引き出すケースが多くなります。銀行がこれを引き留めたいと思ったのなら、金利を上げて物価が上昇しても預金者が損をしないようにするしかありません。

 ただ、日本は現在高齢社会で、預金も高齢者が多く持っています。そして高齢者は消費意欲が低いのが普通ですから、この効果は少し弱くなってしまうかもしれませんし、企業も規制で縛られていて自由に経済活動が行えていないので、やはり預金を引き出そうとはしないかもしれません。

 

 ここまでを読んで、もしかしたら、「どうして金利が上昇したら問題なのだろう?」と疑問に思った人がいるかもしれません。

 では、次にそれを説明していきたいと思います。

 

 ■金利が上昇すると、金融機関が損をする

 

 金融機関は、基本的に他の組織や個人から借りた資産を運用して利益を得ています。最もイメージし易いのは銀行でしょうか。

 銀行にあなたが預金をしたとします。そのお金を個人や企業に融資したり、公債を買ったりして銀行は資産運用します(ただし、詳細を説明すると複雑になるので説明は割愛しますが、実は“貸出”によって、銀行は資産を増やす事もできます)。この資産運用先の一部に“国債”もあります。

 国債の場合の通貨の流れは、

 生活者 → 銀行 → 国

 となります。

 資産運用は、その時の金利によって利回りが影響を受けます。国債が最も分かり易いですが、国債の金利は固定されているので、今なら0.15%です。この国債を買えば、償還期限にそれだけ利息を得られます。

 つまり、先程とは逆に、

 国 → 銀行(国債の利息分の収入) → 生活者(預金の利息分の収入)

 という通貨の流れになります。

 では、ここで銀行が0.15%の国債を抱えた状態で金利が上昇してしまったならどうなると思いますか? 例えば、1%とか2%に上昇してしまったなら? 当然、資金を借りた側への支払いの方が多くなってしまいます。

 つまり、

 銀行 → 生活者

 の部分の支払いが、運用によって得られる収入を超えてしまうのです。

 いわゆる“逆ざや”です。それだけ金融機関が損をするのですね。

 当然、この損失は金融機関が購入した国債が増えれば増える程に大きくなっていきます。そして、今では2.5%まで金利が上がっただけで日本経済がピンチに陥ってしまうと言われているのです。

 (この2.5%という数字は、前述した通りニュース番組で耳にした記憶ベースのものです。もし間違っていたらすいません)

 

 ■日銀が国債を買い取り続けるとどうなるか?

 

 先程までの説明は、“国債”にしか注目していませんでした。ですが、現在の財政赤字を捉えるのには国債だけでは不充分です。

 何度も説明していますが、今現在、日銀が膨大に国債を買い続けています。一部、これにより「借金が消える」と述べている人もいますが勘違いです。

 日銀が国債を買い取ると、その代金は日銀当座預金に振り込まれるのですが、この日銀当座預金は実は「国の借金の一種」と見做せるのです。

 早い話が、借金の形が“国債”から“日銀当座預金”に変わっただけで、借金が減っている訳じゃないのですね。

 ただし、日銀当座預金の全てが国の借金になるのかと言えばこれも違います。

 日銀は日銀当座預金を「プラス金利」、「ゼロ金利」、「マイナス金利」の三層に分けていて、当然ながらこのうち国の借金と見做せるのは「プラス金利」層です。

 金利が上がれば、この「プラス金利」も上げなくてはいけません。すると当然ながら国の借金が増え、財政を更に圧迫します。現在、日銀当座預金の総額が約543兆円程です。仮に年利1%になったとしても、一年間に5兆円も支払額が増えてしまいます(これにはマイナス金利も含んでいるかもしれないので、もう少し安く済むかもしれませんが)。

 もちろん、これは単なる“決め事”に過ぎないので、必ずしも金利を上げる必要はありません。が、金利を上げなかった場合は金融機関の負担になります(「プラス金利」、「ゼロ金利」ももちろん金融機関の負担になります)。場合によっては先ほどと同じ様に“逆ざや”となって金融機関は損失を受ける可能性すらもあります。これは実質的に増税と同じです。

 要するに、日銀当座預金では、金利上昇による負荷を国が背負うのか金融機関を背負うかの選択を迫られる事になるのです。

 一応説明しておくと、今まで説明して来たような問題があるので、恐らく日銀は多少物価が上昇したとしても金融緩和を弱めたりはしないはずです(2022年3月現在、実際に日銀はそのような方針を表明しています)。

 

 ただし、この日銀当座預金は、金融機関が自由に引き出して使う事ができます。もし、それで資金運用に成功したなら、金融機関に負担をかける事なく、国の借金は本当に消えます。

 ただその為には、資金を使う先…… 有望な投資先が必要になるのですが。

 

 ■規制緩和・改革で民間の力を解放する

 

 金融機関というのは、成長する見込みのある企業に資金を融資し、利回りを得る事によって収益を得ています。ですから、当然、その為には“成長する見込みのある企業”が必要になります。

 しかし、ある程度経済が成長すれば、“成長する見込みのある企業”の見極めは難しくなり、イノベーションを積極的に促さなければ、そのような企業はあまり現れないと見てまず間違いはありません。

 そして規制によって企業の活動が抑制されている状態では、そのようなイノベーションは起こり難くなってしまいます。

 国も当然それくらいの事は分かっていますから、40年も前から“規制改革・緩和”を行おうとして来ました。アベノミクスの三本の矢の一つに“規制改革・緩和”があったのも同じ理由です。

 ところが、多少は進みましたが、日本の“規制改革・緩和”は充分な成果を出してはいません。

 (規制改革を行ってしまうと、既得権益がなくなってしまうので、抵抗が物凄いのです。その抵抗の主役は官僚なのですが)

 ですから、当然、日銀当座預金から金融機関が資金を引き出す動機も低い事になります。このままでは、“日銀当座預金というリスク”は解消しないばかりか益々高くなっていってしまうでしょう。

 

 ■財政赤字が解決していくシナリオ

 

 今まで悲観的な見通しばかり語って来ましたが、先程の“規制改革・緩和”に関する説明で、必ずしも解決に向かうシナリオがない訳ではないことも分かったと思います。

 企業活動が活発になり、有望な投資先さえ出て来るのであれば、仮に金利が上がったとしても金融機関は耐え切れるのです。

 まず、資金の運用先ができれば、日銀当座預金が減って、国も金融機関も金利上昇による負荷が軽減します。また、資金の運用先から得られる利息収入によって、金利上昇に伴う損失の穴を埋められもします。そして、それによって税収が増えるのなら、財政もどんどん楽になっていきます。

 資金運用による利息収入を得られるまでには時間がかかるので、金融機関の損失が一時的に上回ってしまう可能性もありますが、その期間だけ国が補助すれば問題にならないでしょう(景気が過熱し過ぎたらまずいですが、流石にそこまでの好景気は今の日本では起こらないのではないかと思われます)。

 早い話が、“経済成長”が起こるのなら、金利が上昇しても大きな問題にはならず、財政赤字も解決していくのです。

 ただ、もちろん、それができないからこそ困っているのですが……

 

 ■ばら撒き政策はやはり問題では?

 

 今まで説明して来た通り、やはり財政赤字には大きなリスクがあるように思えます。ですが、前述した通り、経済学のMMT派の影響か、日本でも財政赤字楽観論が目立つようになっています。そしてそういった財政赤字楽観論者の中には政治家もいます。

 「財政赤字はインフレにならない限り問題にならない。だから、いくらでも借金をして構わない。金をばら撒いて、国民の生活を助け、物価上昇を目指すべきだ」

 と。

 一応断っておくと、もし仮にその“借金によるばら撒き”が、本物の経済成長に繋がるのであれば成功する可能性はあります。

 ただ、それはどうしたって博打になってしまうのではないでしょうか?

 前述した通り、財政赤字が膨らめば膨らむほど、金利上昇のリスクが上がり、そしていつコストプッシュによるインフレや国際金融の影響で国内の金利が上がるか分かりません。デッドラインを越えなくても、金融機関が損失を受けるのは確実で、そしてその影響は他の業界にも及ぶのです。

 

 ■通貨循環モデルによる解決案

 

 財政赤字問題を解決する為には、今まで説明して来た通り、経済成長を起こす必要があります。そしてそれには規制改革・緩和が有効であるように思えますが、日本はこれが中々進みません。

 また、仮に規制改革・緩和が充分に進んだとしても、それだけで今の財政赤字を跳ね返せる程の経済成長が起こるかどうかは分かりません。持続せず、途中で減速してしまう可能性だってあります。

 では、そのような問題を解決する方法…… つまりは安定して経済成長し続ける方法はないのでしょうか?

 実はあります。

 僕はそれを長い間、主張し続けているのですが。

 (ここからは、僕が何度も主張している通貨循環モデルを用いた経済成長の説明になりますので、もう何度も読んだって人は読み飛ばしてしまっても構わないです)

 

 まず、“経済成長”とは、以下のような流れで起こります。

 工場などを建設すると生産性が向上します。つまり、今までより少ない人数で大量に商品を製造できるようになります。

 “少ない人数”で生産できるようになるのだから、当然、労働力が余ります。これを放置すれば失業者となって社会問題になってしまいますが、新たな産業の為に使えばそれだけ経済成長が起こります。商品の種類が増えて、その商品に対しての売買が発生し、そこで新たな通貨の循環が生まれるからです。

 実際、歴史上、経済が成長すればするほど、商品の種類は増えてきています。昔、“何もなかった時代”から、テレビや電話、自転車、自動車、バイク、パソコン、スマートフォン等々と商品の種類は増えています。

 つまり、生産性の向上によって余った労働力を、新たな産業で用いることで経済成長は起こるのです。

 これは“通貨の循環を増やす”と表現する事もできます。それぞれの商品には、それぞれ“通貨の循環”があるからですね。

 僕はこれを“通貨循環モデル”と名付けています。

 そして、“通貨の循環”が増えた分に対しては新たに通貨を供給しなくてはなりません(言い換えると、通貨需要が増えた分、通貨供給しなくてはならないという事です)。今でもこれは行われていて、“成長通貨”と呼ばれています。

 以上を踏まえると、“商品を増やせば、経済成長を起こせる”という事が分かると思います。

 

 ――ならば、経済を成長させたかったのならば、商品を増やしてしまえば良いのではないでしょうか?

 

 そして、それは以下のような方法で実現可能です。

 何らかの商品…… 仮に太陽光発電としますが、これを“買わなくてはいけない”という法律を作るのです。

 もちろん各自の自宅に設置する事は不可能ですので、料金(税金でも可)で徴収したなら、それで太陽光発電の設備を街中の建物の上などに設け、公のものとします。

 その料金を一人年間1万円だとするのなら、恐らくは1兆円くらいはGDPが増えるはずです。

 これを聞いて、「支出が増える」と不安を抱いた方がいるかもしれませんが、大きな問題はありません。何故なら、最初の一回分の料金に関しては通貨の増刷によっての支払いが可能になるからです。

 先程の説明を思い出してくださいね。

 新たな通貨循環が生まれる分に関しては、新たに通貨を発行できるのです(先に説明した通り、通貨需要が増えるのに合わせて、通貨供給を行うってことです)。

 二回目以降は、確り料金を支払わなくてはいけませんが、一回目の支払いによって起こる経済効果で収入は増えているはずです。支出が増える代わりに収入も増えるのです。だから“新たな通貨の循環が生まれる”って表現したのですが。

 もちろん、人によっては収入が増えない人もいるでしょうが、低所得者には支払いを免除する等の制度にすれば大きな問題はないでしょう。

 

 この方法ならば、ほぼ確実に経済成長が見込めます。

 金融機関には太陽光発電関連(太陽光発電は工事費がかなりの割合を占めるので、太陽光パネル製造以外にも仕事が生まれます)の投資先が生まれるので、日銀当座預金を引き出すでしょうし、経済成長した分で税収も増えます。当然、財政は健全化していきます。

 大規模で実施するとインパクトが心配ですが、何度も繰り返して少しずつ規模を大きくしていけば、やがて財政赤字のリスクは消えていくはずです。

 

 なお、このように国が関与し易いシステムにすると、競争原理が活かし難くなるので、確りと市場原理を活かせる工夫は必要だろうと思われます。

 ただし、日本の場合は、多少、市場原理を活かせなくてもある程度は上手くいくかもしれません。

 以前に「日本のインフラは世界でも高い評価を受けている」という動画を観ました。その時は日本人自身が主張していたのであまり信頼していなかったのですが、同様の記述が『政府は巨大化する マーク・ロビンソン 日本経済新聞出版 205ページ辺りから』にあるのを見つけたのです。

 どうやら“まるで社会主義のよう”と揶揄されていても、質の高い仕事を維持してくれる人が日本には多いようです。日本社会とこの方法は、相性が良いと判断すべきであるように思えます。

 

 ――ただし、一応断っておきますが、この方法は労働力やその他資源が余っていなければ用いる事はできません。

 

 ■生産するべき生産物は何か?

 

 さて。

 上記方法を使いさえすれば、恐らくは財政赤字問題は解決に向って行くのではないかと考えられます。

 ですが、「その為に一体何を生産するのか?」という問題が残ります。

 

 ・エネルギー

 

 僕は日本の場合、最も有望なのは、先程も例として挙げた太陽光発電に代表される再生可能エネルギーだと考えています。

 もちろん、それは今必要性が訴えられている気候変動対策になるからでもあるのですが、それだけではありません。再生可能エネルギーを普及させれば、エネルギー自給率が上がります。エネルギー自給率が上がれば、コストプッシュインフレが起こり難くなります。エネルギー価格は、全ての商品価格に結びついていますから。

 つまり、現在最も起こり得る経済危機のトリガーである“コストプッシュインフレの原因”を一つ取り除けるのですね。

 そして、当然ながら、エネルギー自給率が上がれば安全保障上も有利になります。

 国と国との力関係の大きな要因の一つに“エネルギー資源を持つ事”があるという事実を、ロシアのウクライナ侵攻で改めて思い知らされましたが、エネルギー自給率が上がれば“兵糧攻め”に強くなるからです。

 因みに、原子力発電は僕はリスクもコストも高過ぎると判断しています。

 ウクライナ侵攻でテレビでは、「原子力発電が戦争で狙われるリスクが初めて分かった」などと報道していましたが、当然ながら以前から不安視している人は大勢いました(僕もそのうちの一人です)。

 安全保障上の原子力発電のリスクは、大きく二つに分かれると思います。一つは攻撃、占拠される危険。攻撃される、或いは占拠される可能性があるのなら、原子力発電所を稼働させる事はできません。爆破されれば、当然ながら国家級の災害になる可能性がありますし、そうでなくても社会を稼働させるエネルギー源を握られてしまえば、それだけで一気に戦況は不利になります。

 (因みに、中国人が原子力発電所周辺の土地を買っているそうです……)

 もう一つは、原子力発電の運営で協力を得ている国との関係が悪化する危険です。

 もしフランスなどの国との関係が悪化してしまったなら、それだけで原子力発電の運営は難しくなります。

 そしてコストですが、原子力発電では、核廃棄物を半永久的に管理しなくてはいけません(どれだけ費用がかかるのか、算出すらも難しいのではないでしょうか?)。

 これはどう考えても高過ぎるコストです。

 それに対し、太陽光発電は分散して設置するので、一か所占拠されても社会全体のエネルギー源が失われるような事にはなりませんし、完全な自国産のエネルギーですから、国と国との関係の影響もまったく受けません。再生可能エネルギーの多くには、不安定であるという弱点がありますが、近年の蓄電技術の発達でそれをカバーできる可能性がかなり高くなってきました。

 

 ・食糧(食料)生産

 

 もしかしたら、意外に思われる人もいるかもしれませんが、僕が次に生産するべきだと考えるのは食糧(食料)です。

 現代は“飽食の時代”と言われていますが、食糧生産の不安要因は日に日に大きくなっているからです。

 発展途上国が経済発展をするのに伴って食糧(食料)需要も大きくなっています。当然、そうなれば食糧生産の拡大が求められる事になるでしょう。

 まず、現在“水産資源の枯渇”は非常に深刻で、“漁獲高”の不振は毎年のようにニュースになっています。養殖の割合はかなり増えていますが、僕はまだ足りないと予想しています。養殖技術は近年著しく成長していますから、それを考えても充実させる価値はあるでしょう。

 また、世界的な気候変動の影響によって、食糧生産がダメージを受けるリスクも考慮しなくてはなりません。野菜工場等の気候変動の影響を受け難い食糧生産体制を今から準備しておくべきではないでしょうか?

 “リスク”ですから、確実に起こる訳ではありませんが、もし気候変動によって食糧生産が大ダメージを受けてしまったなら、当然ながら多くの人が死にます。もちろん、物価上昇の要因にもなります。

 更に畜産業はエネルギー利用効率の低さや、温室効果ガスの排出が問題点として指摘されていますから、昆虫食やその他代替肉関連の食糧生産が求められてもいます。

 

 ・児童虐待防止、その他福祉関連

 

 児童虐待のニュースなどで時折耳にしますが、人手が圧倒的に足りていないそうです。恐らくは特殊なスキルは求められない職業(もし認識間違いだったらすいません。適正はかなり求められそうですよね)ですし、今まで述べて来た原理を用いれば拡充が可能になります。

 

 ・研究費

 

 日本は近年、科学研究費の予算がアメリカや中国に比べて著しく低い点が指摘されています。

 科学技術の発展は“将来への投資”という点で非常に重要なのは明らかです。先ほどの原理を用いれば、拡充が可能です。

 

 ・珍しい病気の治療

 

 上記とも関連がありますが、珍しい病気はマーケティングが狭く、商売として成り立ち難いので、治療方法の研究が進んできませんでした。

 しかし、ここで上げた方法を巧く活かせれば、治療可能な体制を作り出せるかもしれません。

 

 ざっと挙げてみましたが、他にもまだまだ必要とされる“生産物”はあるでしょう。個人的にはあまり提案したくはないのですが、公平を期す為に(と言うよりも、どうせ直ぐに気が付くでしょうが)書いておくと、軍事予算も同様の原理で増やす事が可能です。

 どれだけ軍事が必要になるのかは、今後の国際情勢次第ですが。

 

 ■経済学者達も“資源さえあれば、通貨を新たに発行できる”という事実に気付き始めている

 

 今までの述べて来た“通貨循環モデル”ですが、これは僕のオリジナルで、十数年以上前から訴え続けてきました。

 もし活用できれば、資源が余っている限りにおいて、様々な社会問題を改善できると判断したからです。充分に労力に見合うだけの価値があると言えるでしょう。

 ただ、はっきり言って僕は経済の素人で、生物学の知識から思い付いた“通貨循環モデル”という着想を経済学に活かす為に色々と勉強し、工夫をして世の中に訴えて来たのですが、何の肩書きもない自分にはやはり困難であるように感じて来ました(いえ、経済の専門家だったとしても同じだったかもしれませんが)。

 

 ところが、最近になって希望が出てきました。僕の活動が注目をされ始めたとかそういう話ではないのですが、プロの経済学者達も“通貨循環モデル”と同様の内容にどうやら気付き始めたようだという事が分かったのです。

 まず、前述したMMT派が唱えている“就業保証プログラム”ですが、この原理は僕がここで説明した通貨循環モデルの応用方法と同じです。

 「資源さえ余っているのなら、それを用いて仕事を創る事ができる」という事を就業保証プログラムでは言っていますからね。

 また、『政府は巨大化する マーク・ロビンソン 日本経済新聞出版 271ページ辺りから』でも同様の説明があります(表現はちょっと難しいですが)。なおかつ、そのように考えている経済学者が増えて来ているとすら述べられてありました。

 

 僕個人の力では“通貨循環モデル”を広めるのは無理かもしれませんが、この流れを応援する事でなら、同様の考えを広められるかもしれません。

 多分ですが、経済学者達の説明よりも僕の説明の方が分かり易いのじゃないかとも思いますし。

 

 まだまだがんばって行こうと思います。

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