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お前が神になるのかよ!  作者: nama
第五章 カノン捜索編

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101 逃避行 1

 荷物を回収したダグラスは、当初逃げた方角の反対へ逃げる。

 だが人気のないところにではなく、露店が並ぶ通りに入り込んだ。

 幸いな事に、この国では負傷者も多い。

 マントを目深に被っていても“怪我している顔を見せたくないんだな”と思われるだけだ。

 こういう時は“前線で体を張ってきた者の心を傷つけてはならない”という暗黙の了解が助かる。


 ダグラスは、しばらくの間はここにいる事になるだろう。

 衛兵は事件現場周辺の聞き込みを行い、そこから捜索範囲を広げていく。

 これまでの経験から“人混みを堂々と歩き、捜索範囲が広がるのを待つのが安全だ”とダグラスは考えていた。

 事件現場付近は衛兵が密集している。

 だが捜索範囲が広がれば広がるほど、当然衛兵の密度は下がる。

 捜索の輪が広がりきったところで、ダグラスは外に逃げ出すつもりだった。


(このあとどうしようか。いっその事、王宮に――いや、ダメだろうな。街中で騎士が襲ってきたんだ。一部の暴走ってわけじゃないだろう。国王が関わっているかまではわからないが、政府高官は関わっているだろう。国王に報告がいくまでに握りつぶされるかもしれない。このまま逃げたほうがいいだろう)


 この国の王宮は地下にある。

 侵入方法が限定されているので、こっそり忍び込む事も難しい。

 国王と会って助けを求めるなどという事はできないだろう。


(そもそも、俺の言う事を信じてもらえるかどうか……)


 ――ダグラスは、カノンのおまけでしかない。


 従者だなんだと丁寧な対応をしてくれたのも、カノンに同行していたからだ。

 彼一人ではなんの価値もない。

 本来の評価を嫌というほど思い知らされて、ダグラスはうなだれる。

 だが、すぐに顔を上げた。


(元々、暗殺者なんてそんなものだ。散々利用しているくせに、汚らわしいものを見るような目をしてくる貴族と同じだ。でも今は帰りを待ってくれている人がいるんだ。マリーさえいてくれればそれでいい)


 ダグラスは“世間の評価を気にする必要などない。肝心なのは大切な人からの評価だけだ”と気持ちを切り替えた。

 そして前向きに、この国から逃走する方法を考え始める。


(食べ物は惜しいけど、馬車や大きな荷物は諦めるしかない。ホテルにはもう戻れないからな。ここで買い物していくか)


 神の飲食物に後ろ髪を引かれる思いはある。

 あるが命には代えられない。

 ダグラスは腰に下げたレプリカソードにそっと手を添える。

 これまでは飲食物しか刺激を得られなかったが、今はマリアンヌがそばにいる。 

 彼女がいてくれると思えば、味覚の事などどうでもよくなっていた。

 これも指を渡してくれたマリアンヌのおかげである。


(かならずカノンさんを連れて帰るからね)


 日持ちする食料品を買い求めながら、ダグラスは無事に帰還する事を決意する。



 ----------



 ダグラスが街の脱出に動き出すまでに一週間待つ事になった。

 それまでは街の出入りに関するチェックが厳しかったからだ。

 すでにダグラスが外部に出たと思い、ようやく警戒が緩んだ。

 これも大人しくしていたおかげである。


 そのダグラスはというと――


「あら、ありがとう」


 ――女装していた。


 店からウィッグを盗み、鼻や頬に詰め物をする事で顔の輪郭を変え、メイクによって印象を変えた。

 これも師匠から学んだ事である。

 変装するとはいっても、人目を引くような美女ではない。

 どこにでもいそうな肉体派女冒険者風への変装である。

 これならば体格がしっかりとしていても不審がられない。

 女としての振る舞いはマリアンヌを参考にしていた。


 乗合馬車を使い、まずは東へ向かう。

 国境付近の警戒は厳しいだろうが、そこまでは行けるはずだ。

 それに馬車の中は揺れるので話しかけてくる者もいない。

 自分の事を話す機会は少なければ少ないほどいい。

 身バレする機会も減るからだ。

 先ほどの言葉も、馬車に乗る際に手を差し伸べてくれたから礼を言っただけ。

 それ以外は不必要な発言は控えている。


 街を出る際に軽く顔の確認をされたが、厳しいチェックはされず素通りだった。

 警戒が緩むまで様子を見ていた甲斐があったようだ。


 ――これで一息つける。


 ダグラスは、そう思っていた。

 夕方になる前に馬車が街で止まった。

 その街で一泊しなければならない。

 近くでホテルの場所を聞き、そこへ向かう。

 金を大事にしなければならないので安宿ではあるが、屋根のあるところで寝れるだけマシだ。

 チェックインし、部屋に移動すると荷物を置いてベッドに横たわる。


(これをあと一ヶ月か……。国境までは行けるだろうけど、そこから先が難しいな。ゼランの街ならなんとかなるかもしれないけど……。どこかで働かないと金が足りなくなりそうだ)


 これからの事を考えると気が重くなる。

 しかもこれは逃避行だ。

 表立って動けないため、まともな仕事にはありつけないだろう。

 そうなると金持ちの家に忍び込んで盗みを働くしかない。

 だがそれはそれでリスクが増える。


(こんな事なら調子に乗って古代遺跡の発掘に協力しなければ……、それはそれで追い出されるか。利用価値ないもんな。カノンさんを連れてくれば結婚を認めると言ってくれたのも、古代遺跡に興味を持ってくれたからだし)


 ダグラスはレプリカソードを手に取り、眼前へ持ってくる。

 そしてスイッチを動かして刀身を出す。

 今回は小刀程度の長さだった。

 それを首筋に当てる。

 これが日課となっていた。


(あぁ、マリー。今の姿を見て、使命を果たすために頑張っていると思ってくれるだろうか? それとも女装して逃げ回らず、堂々と戦えと言うだろうか? でも俺は君みたいに強くないんだ。だからせめて笑わないでほしいな)


 ――正面切って戦うのは、暗殺者よりも騎士や冒険者のほうが上。


 それはダグラスもよくわかっている。

 だがマリアンヌは理解していないだろう。


 ――彼女に格好いい姿を見せたい。


 そんな思いを胸に秘めながら、ダグラスは眠りについた。

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