妹or弟?
ちょっと短めです。
「あたしがあんなクソ野郎に血なんて分ける訳ないでしょ!いい加減手ェ離して!」
その声の主は…
「明季!」
俺の妹だった。
「! お兄ちゃん!」
俺を見つけた明季は、俺の所へ駆けよってくる。
「お兄ちゃん!来るの遅い!そのせいであたしが出血多量で死ぬとこだったじゃない!」
「いや献血で出血多量で死ぬ事はないよ」
「え、そーなの?」
「うん、明季、流石にそれで死んだら人間クソ弱だよ」
「確かにそうだねお兄ちゃん!ところでその人誰?」
「私はメリー・浜野と申します」
(名前違ぇじゃん…)
「へー!メリーちゃん、よろしくね!」
「ちゃ、ちゃん!?いや、あの、そのっ、ちゃんとか、そういうのは別に、ぃぃ…」
段々声が小さくなっているし、顔が真っ赤になっているから、多分照れているんだろう。
メリーは咳払いをして話し始める。
「コホン。そっ、そんなことより瀬季さんの妹さんですか?お名前は明季さんで良いんですよね?」
「うんうんそうそう!あたし明季だよ!」
一通り自己紹介が終わると、メリーは『ちょっとすみません』と、看護師のところへ駆けて行った。
瀬季さんと明季さんから結構離れたところにいた看護師に声をかける。
「あの、質問なんですけど、明季さんは本当に女性ですか…?」
私が聞くと、看護師が答える。
「あー……あのね…」
看護師が私の耳元に口を近づけて話す。
「男の子なんだけど…女だって言い張ってるんだよね…」
「きょ、兄妹なのか姉弟なのか分からないじゃないですか…」
「そこあんまり重要じゃないと思うよ…?」
「というかそれ、トランスジェンダーじゃないですか?」
トランスジェンダーとは、生まれた時の性別と自認する性別が一致しない人の事。私は見たことないけど、聞いたことがあった。
「うーん…私はそうだと思うけど、先生は違うって。っていうか、今は月街さんだよ!助かるかなぁ…」
「『助かるかなぁ』って血が足りないんじゃないんですか?」
瀬季さんと明季さんが献血しないなら、もう助からないだろう。
私が聞くと、看護師さんはあわあわしながら(冷や汗を流しながら)答えた。
「えっ、えっ、あのっ、そぉ、そう!かっ、看護師は最後まで諦めちゃだめなの!医者もいっしょ…」
看護師さんの言葉を遮るように、ガラガラっと、手術室の扉が開いた。
「もう助からん。諦める」
その医者の言葉に、看護師さんは気絶寸前。すごく混乱していた。
「諦めちゃ、だめ…?諦めても、いい…?」
頭にの上に?マークが飛びかっている。