2.カラオケ店殺人事件
その日、目を覚ました聡美は起き上がった。
藤田家の聡美の部屋。
(やっぱり女の子か。しかし、なぜ女の子なんだ?)
聡美は自分の体を見て疑問符を浮かべた。
ベッドから降り、高校の制服に着替える。
カバンを手に食卓へ。
テーブルには朝食が用意されていた。
「行くのか?」
「え?」
「いじめは平気なのか?」
(あー、そういえば病院で言ってたなあ)
「精神的に落ち込んでるんだ。休んでもいいだろ。なあ、母さん?」
「そうね。いっそのこと学校変えちゃう?」
部屋へ戻る聡美。
クローゼットを開けると、女の子向けの服が入っている。
聡美は服を着替え、食卓へ戻る。
「学校、やっぱ休むね」
「それがいいと思うぞ。お前が死を選ぶほど酷いいじめだったんだろう?」
聡美は席に着くと、朝食を食べた。
「聡美さん、いじめられてたんですか?」
「え……」
聡美の両親は驚いた。
「聡美、あなた大丈夫?」
「精神科へ連れていこうか」
「そうね」
聡美は両親に連れられ、近所の精神科へやってきた。
両親が医師に事情を説明する。
「娘はどうなっているのです?」
「あなた方のお話を聞く限りでは、自殺の影響でお嬢さんの中に眠っていた別の人格が現れてる可能性があります」
「そんな漫画みたいなことあり得るんですか?」
「いじめへの苦痛があったのも要因となり、人格が変わってしまったのではないでしょうか」
「娘は、元に戻るんですよね?」
「環境を変えて落ち着けば戻ると思われます」
診察を終え、自宅に戻る聡美とその両親。
「あなた、聡美の学校を変えましょう?」
「そうだな」
聡美は今の学校を辞め、別の高校へ編入することになった。
編入先は健と同じ高校である。
登校初日、聡美は担任教師と廊下を歩いていた。
「ここが教室よ」
教師が教室の前で立ち止まる。
扉を開け、中に入る教師。
「おーい、お前たちー。今日からこのクラスで一緒に勉強することになった、藤田 聡美さんだ」
聡美が徐に教室へ入る。
「藤田です。よろしく」
「それじゃあ、藤田さんはあそこね」
聡美は健の死で空になった席に着いた。
周りには見慣れた顔がたくさんある。
不意に、クラスメイトの柴田 輝が声をかけてきた。
「俺、柴田。よろしくな。わからないことあったら俺が教えるから、なんでも聞いてよ」
「よ、よろしく」
……。
…………。
………………。
放課後、聡美は下足入れの前で靴を履き替えていた。
そこへ柴田がやってくる。
「藤田さん、一緒に帰ろう?」
「いいけど」
聡美は柴田と共に帰路に就く。
二人がちょうど、帰り道にあるカラオケ店を通り過ぎた時、背後でドスっと物音がした。
振り返ると、カラオケ店の制服を着た男性が倒れていた。
「うわ!」
目を伏せる柴田。
聡美は懐からスマホを取り出し、警察と消防に通報をした。