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妖かし四方山話 護りし者  作者: けせらせら
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 11月に入ると空気が少し肌寒く感じる日が多くなってきた。

 空もグンと高く感じる。

 そんな青空の下、隣の家の中からはかすかにお経を読む声が聞こえてくる。今日は朝から葬儀のために親戚や近所の人たちが集まっている。

 亡くなったのは隣の家に住む北島華きたじまはなという老婆だ。彼女が亡くなったのは三日前のことだ。近所の人たちからは『ハナ婆ちゃん』と呼ばれ慕わており、里帆が子供の頃には遊んでもらったこともある。

 中松里帆なかまつりほは登校の支度をしながら、チラリと2階の部屋の窓から隣の家を眺めた。

 その家の玄関脇にある犬小屋の前に、大きな白い秋田犬が寝そべっているのが見える。『千太郎』という名のその老犬は里帆が生まれた時には既に隣で飼われていたそうだ。子供の頃、その大きな犬の存在がやたら怖かった記憶があるが、振り返ってみれば吠えられたことなど一度もない。昔から千太郎は穏やかな性格だった。

 中学に入学してからはあまり遊びに行くこともなくなったが、ハナ婆ちゃんが千太郎を連れてよく散歩している姿は時々見かけることがあった。

 ハナ婆ちゃんにも息子や娘がいるという話を聞いたことがあるが、離れたところに暮らしているらしく、彼女はずっと千太郎と二人で暮らしてきた。

 ハナ婆ちゃんが亡くなった今後、千太郎はどうなってしまうのだろう。

(ウチで飼ってあげられたら)

 だが、そんなことが出来ないのはわかっている。父は優しい人だが、昔から動物を飼うことだけは嫌だと言っている。子供の頃に飼っていた猫が亡くなったときの悲しい気持ちが忘れられないのだそうだ。

 里帆は小さくため息をついた。そして、既に9時過ぎているのに気づき、里帆は急いで部屋を出た。


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