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戦場の悪魔  作者: 漬物田中
第二章
32/69

第31話 開戦(3)

 六月十二日、正午。北ペンクスリ社会主義共和国、首都マレイグ。


 国家主席官邸前広場には、埋め尽くすほどの大勢の人間が集まっていた。手前は兵士たちが整然と並び、後方では市民たちがぎゅうぎゅうと押し寄せている。

 四階のバルコニーには自動小銃を抱えた兵士が数人、真ん中を空けて並んでいる。そこに一人の男が現れると、兵士たちは誰一人遅れることなく、よく訓練された敬礼をした。市民は国旗を激しく振って歓声に沸く。

 広場に集まる人々の視線を一身に受けるその男の歳は三十ほど。鳶色(とびいろ)の髪を丁寧に後ろに撫でつけ、同じ色の瞳はギラギラと鈍く光っていた。上質の黒い軍服は北ペンクスリ軍の正装である。


 北ペンクスリの国家主席であるエイブラム・ジェイソン・バレットは右手を上げた。兵士は敬礼を解き、民衆は静まり返る。バレットは右手を下した。


「諸君、今日は集まってくれてどうもありがとう」


 マイク越しに低い声が群集の耳に届く。

「さて、今日集まってもらったのは他でもない。軍人諸君は既に知っていると思うが、今日未明、ペンクスリ王国の軍隊が我々北ペンクスリの国境を無断で越えてきた。これは立派な侵略行為だ! 

独立して以来、我が国はペンクスリ王国と常に国境を争ってきた。二度と国が侵されないように。しかし王国は、敵は先日一方的に攻めてきたのだ! 我らが父が築き、守ってきたこの国が今、侵されようとしている! 

王国の為政者(いせいしゃ)は今、あのハモンド将軍になった。みな、覚えているだろうか? あの三年大戦で我々北の民を苦しめたあの男だ! あの残虐な男に国をくれてやるものか。我々は今一度立ち上がらなければならない。それには国民全員の力が必要だ。どうか私に力を貸してくれ。

……私は王国の卑劣極まりない侵略行為を宣戦布告と捉えた。幸い、我が軍には一人も犠牲者を出すことなく、敵に大きな損害を与えることができた。これも優秀な北ペンクスリ軍のおかげだ。我々は我々の正義のためにペンクスリ王国と戦わなければならない! 以上だ。私に賛同する者は手を叩いてそれを示してくれ」


 バレットが演説を終えるのと同時に聴衆からの拍手喝采が沸き起こる。

 演説の様子はテレビカメラやラジオを通して中継された。

 国境付近でラジオを聞いていた兵士たちも拍手をする。その中にいた兵士の一人、レオは浮かない顔で手を叩いた。


 戦争が始まった。


二章終わりです。

社畜は年末年始忙しいので、三章以降は年明けになると思います。

こういうのって活動報告とかいうの使えばいいんですか?投稿する以外使い方わかってないです。

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