第26話 二人の男(3)
ペンクスリ王国首都ブライトン。
昼下がりの駅前、背中合わせのベンチで新聞を読んでいる男がいる。くたびれたハンチング帽に煤だらけの作業着、無精ひげを蓄えた男――『庭師』は火の点いていない煙草を口に咥えていた。
背後で人が座る気配がした。新聞を広げる音がする。手鏡越しに見えたのは品の良いスーツに帽子の若い男。
間違いない。『鉤爪』だ。
合言葉を確認すると、『鉤爪』は煙草を取り出し、火を点けた。
「吸えもしない煙草なんか口に咥えるな」
「ふん、火がないだけだ」
「貸してやろうか」
「結構」
短い、挨拶とも言えない挨拶を終えて『庭師』は本題に入った。
「お前らの全くの予定通りだったな」
『鉤爪』は得意げに鼻を鳴らした。
「当然だ。聞いたか? 例の演説。全くばかばかしい」
「同感だな。しかしこれがお前らの思惑なんだろう?」
「ああ。我々の大義のためには将軍が必要なのだ」
『庭師』は口角を微かに上げたが、すぐに表情を戻す。
「事実上新首相とはいえ、あれは法に反するのでは? 何も反応がないところを見ると、既に将軍の息がかかっているんだろうな。さすが、三年大戦の有名人は格が違う。これから国民のすべての情報源は将軍らによる規制が入るだろう。が、既にどの情報機関も将軍の報復を恐れて、将軍に都合の良いことばかりを書いている。国民感情の支配はもうすぐだ」
『鉤爪』は肩を軽く竦めた。『庭師』の言う通り、情報規制はもう始まっている。
「将軍の周りは取り巻きばかりだ。そもそも将軍の大戦での武功は頭の良さとは関係がない。故に、計画性は乏しく理想論ばかりだ。あれじゃあすぐに痛い目を見ることになる」
「そのくせ言葉は上手いから馬鹿な民衆はまんまとそれに乗せられるってか」
「貴様、くれぐれもしくじるなよ。わかっているだろうな。そうすればお前は――」
それだけ言うと『鉤爪』は吸殻を踏みつぶし、さっさと去って行った。
『庭師』は火の点いていない煙草を吸って、空を仰いだ。
最近、石門洞という岩の中にお寺があるところに行ったんですが、中二病の心を揺さぶられました。紅葉もとても綺麗だったので、ぜひ訪れてみてほしいです。




