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戦場の悪魔  作者: 漬物田中
第二章
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第24話 四月下旬

 四月下旬。

 昼休みに図書室で新聞を物色していたリリーは後ろから突然抱きしめられた。

「わっ!! びっくりした? みんなのアイドル、セリーナさんでーす!」

 リリーはゆっくりとその腕を振りほどき、セリーナに向き直った。穏やかな笑みを浮かべて褐色の頬をつまんだ。柔らかい頬が横に伸びる。

「そんなことしてくるのは香月かセリーナしかいないから特に驚かないわ」

「もー、つまんなーい」

「つまんなくて結構」


 セリーナはリリーが持つ新聞を奪い取って、パラパラと(めく)った。

「あんた最近新聞ばっかり読んでいるわね。マスコミ志望?」

 リリーは新聞を取り返すと、元の場所に戻し、別な新聞を手に取る。

「ちょっと知りたいことがあって……」

 新聞の国際欄のページを開く。どの新聞も同じような内容で、目新しいものはない。


 二週間前、アンスバッハは北ペンクスリに合併された。ペンクスリ王国でも大々的に報道され、『ペンクスリ危機』『緊張が高まった』とあちこちで騒ぎになった。しかし二週間も経てば人々の関心は他に移る。今や芸能人のスキャンダルが人々の関心の的だった。


 合併後、レオからの手紙はピタリと止んだ。しかし、それも当然だった。アンスバッハと王国は事実上断交状態になってしまった。手紙なんて届きやしない。むしろ手紙を出したところで、内容を検閲された上で北側のスパイと捉えられかねない状況だ。

 だからこうして新聞で情報を集めようとするのだが、ここ数日何の進展もない。

 初めてできたアンスバッハ人の友達とまさかこんなかたちで離ればなれになってしまうとは思わなかった。

(レオ、無事だよね……? 今度は王国に遊びに来てもらうつもりだったのにな……)


 ふいに頭をポンポンと撫でられた。

「よしよし。何があったのかは知らないけど、もしリリーが話したいときがきたらいつでも話しなよ。何でも、どんな話でも聞くからさ」

「えっ」

 セリーナはお返しと言わんばかりにリリーの両頬を引っ張った。

「あんたはちょーっと溜め込みすぎるくせがあるから、本当は心配だよ。でもね、無理やり聞かれるのは嫌いでしょ? だから気持ちの整理がついたら教えてよ。じゃあね」

 頬を引っ張ったり、ぎゅっと挟んだりして好き放題したあと、手を振って図書室の奥へと消えていった。

「セリーナ……」


 セリーナはいつもそうだ。強引に見えて、無理強いは決してしない。何かと気を遣ってくれる、まるで姉のような存在。香月と共にもう五年は一緒にいる。最初はなれなれしい態度に戸惑い、拒絶したこともあった。しかし、セリーナは絶対にリリーから離れなかった。悪魔憑きになってから人と接することが恐怖だったリリーが、ここまで学生生活を送ることができたのはセリーナのおかげだ。もし、セリーナならリリーが悪魔憑きだと知っても友達でい続けてくれるかもしれない。

(いいえ、きっとお母さんみたいになるかも……)


 新聞を元の場所に戻した。今日は午後の授業がないため、少し遅いが昼食を取りに食堂へと向かう。

 渡り廊下で、ショートヘアの女子生徒を見つけた。パトリシアだ。

「わ、おはよぉ。元気にしてた?」

 まるで久しぶりと言わんばかりの言い回しに、リリーは思わず噴き出した。

「おはよう。パティ、毎日会ってるじゃない」

 パトリシアは「そういえばそだね」とにっこりと笑った。


「パトリシアも昼食?」

「んーん、授業だよ」

「へぇ、四限の?」

「んーん、三限」

 リリーは軽く首を傾げた。

「四限?」

「三限って言ったよぉ。聞いてた?」

「聞き間違いかと思った。……もう三十分も過ぎてるけど」

「そうなんだよねぇ。でもまだ授業は六十分もあるよ? 二週間くらい溜め込んでた課題があって、そろそろ出さなきゃなあって思ってたのね」

 脈絡(みゃくらく)もなしに始まる別な話題はパトリシアの得意技だ。そのことよりも別なことに突っ込まざるを得なかった。

「二週間も!?」

「そう! 知らない間に増えててさ」

「ちょっと何言っているかわからないわ……。それで、終わったの?」

 パトリシアは満面の笑みで「終わった!」とピースサインをした。

「おめでとう。どの先生の課題だったの?」

「校長先生!」


 リリーは引きつった表情でパトリシアを見た。しかし、パトリシアは意にも介さないような飄々(ひょうひょう)とした態度で、鼻歌さえ歌っている。

「遅刻だし、さすがに怒られるんじゃない?」

「校長先生に怒られたことはないよ?」

「先生じゃなくて、ミッチェルに」

 ゼンマイが切れた人形のようにパトリシアの動きがピタリと止まった。そして何とも言えない微妙に悲惨な表情をして、リリーを見た。

「そういえば一緒の授業だった……。リリー、またあとで!」

 そう言うと、パトリシアは駆け足で講義棟へと向かって行った。ミッチェル・モランはパトリシアの保護者のような同級生だ。

(あの調子だと、またやらかしかねないなあ)

 軽く肩をすくめて、食堂に入る。もう昼休みは終わっているというのに相変わらず騒がしい。

少女革命ウテナを見てるんですけど、こんなにギャグ強めだとは思ってなかったです。毎回笑ってしまいます。

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