~5~ 知っているのに知らない場所(1)
「……イ。……きて、ルイ……」
声が聞こえる。
聞き覚えのある、女の子の声が。
そしてゆっくりと意識が覚醒していく。
「……う、ん」
「ルイ!」
ぼやけた頭が澄んでいくのと同時に、俺を呼ぶ大きな声が耳に飛び込んできた。
「……!?」
「うわっ」
跳ね起きると同時に驚いた声がすぐ横から上がる。
それにつられるように目を向ければ、びっくりした顔で俺を見るアリスがそこにいた。
「アリス……?」
「びっくりしたー」
一瞬。状況が理解できなくて、ボーっとアリスを見つめたまま固まる。
しかしすぐに頭は鮮明になり、今置かれている状況を思い出した。
「アリス!」
「きゃっ」
思い出したと同時に、探していた相手を目の前に認めてその両肩を掴んだ。
「あ……悪い」
直後、上がった悲鳴に慌てて手を離した。
驚きの表情でこちらを見つめるアリスを、しっかりと眺めて口を開く。
「アリス、無事だったんだな」
「あ……うん、なんとか」
気を取り直し訊ねる俺に、困惑した様子ながらも答えるアリス。
見た感じ、怪我などをしているようには見えない。
「よかった……」
ひとまずアリスの無事を確認し、安堵の思いが胸に広がった。
「ルイこそ大丈夫? いきなり現れて、それから動かないからボク心配しちゃったよ」
言われて俺は、ついさっきまで意識を失っていたらしいことに気付く。
どうやって俺はアリスの元に?
記憶を辿って、そして思い出す。
「そうだ、『鏡』……!」
アリスを探して校舎を進み、見つけた『鏡』に触れたところで光に包まれ、そして意識を失ったんだ。
「そっか。ルイも『鏡』からこっちに来たんだね……」
俺の言葉にアリスは納得したように頷いた。
「って事は、アリスもあの『鏡』に触ったのか」
「うん。千彰を探してて、それで見つけて追い掛けたら『鏡』があって……」
「古元? そういえば、電話で古元がどうかしたみたいに言ってたよな」
「うん……」
「いったい、何があったんだ?」
「えっと」
問いながら周りを見渡せば、どうやら校舎にいるらしい事がわかる。
いや、だけど何かが違う気がする。
「ここ、学校か?」
「それが……ボクにもわかんない」
首を横に振るアリスの顔にあるのは、大きな不安の色だった。
確かに俺たちがいるのは、記憶が途切れる前と同じ階段の踊り場と同じに見える。