~3~ 異日常への誘い(2)
だがそれを振り払うと、俺は開いた門を抜け校舎に向かって走り出した。
何かが起きている、アリスはそれに巻き込まれている。
急いで助けに行かないと。
その思いが、俺の足を前へと進めさせていた。
「無事でいてくれよ!」
相変わらず人の気配がしない、不気味な静けさに包まれた校舎へと駆けながら俺はそう口にした。
昇降口の扉はなぜか鍵が掛けられておらず、あっさりと入ることが出来た。
見慣れたはずのその場所は、常夜灯だけの薄暗さと冷たく静かな空気のせいで、まるで知らない場所のような印象を受ける。
こんな時ではあるが、普段の登校時と同じように自分の下駄箱から履き物を取り出しそれに足を入れた。
「どこだ、アリス……!?」
靴を履き替え廊下まで進むと、アリスの姿を探して左右を見渡す。
廊下の続く先は右も左も暗闇が口を開けるだけで、やはり人の気配は感じられない。
「来たぞ、アリス!!」
胸に広がる焦燥感、それに追い立てられるように声を張り上げ呼び掛ける。
もし警備員がいれば、飛んでくるかもしれない。
面倒ごとは御免だが、そんな事を言っていられる状況では無かった。
そんな心配も虚しく、俺の声は闇へと吸い込まれるのみで警備員が姿を現すことも、アリスの返事が聞こえてくることもなかった。
「いったいどうなってる……!?」
ここで突っ立ってても始まらない、焦りと苛立ちを落ち着かせようと深呼吸をしながら俺は歩き出した。
探す当ても思い付かず、毎朝と同じように自分の教室へ向かって足を踏み出す。
暗く静かな廊下は、いつもの何気ない廊下とはまるで別の場所に思えた。
目指す教室は三階、この学校では学年の若い方が上のフロアにある。
果たしてそこにアリスがいるのか、不安を感じながらも階段へと向かって進む。
『ルイ……ぼくのところへ……』
「!?」
再び、校門の前で聞いた声がどこかから耳に届く。
足を止め辺りを見回すも何も変化はなく、そして次の声も聞こえては来ない。
「さっきからなんなんだよ、これも!」
理解の範疇を越えた現象に毒づきながら、再び歩き階段を登り始めた。
二段飛ばしに階段を駆け上がり、折り返しの踊り場に着いたところで……俺は立ち止まった。
「なんだ、これ……?」
踊り場の真ん中、外側の壁にある“それ”を見つめて呟きを洩らす。
「なんで……こんなところに、『鏡』が……!?」