~8~ 再会(2)
止める間もなく上へと昇っていくアリスを追い、慌てて俺も階段に足をかけた。
一気に上がっていき、踊り場を折り返し三階へと駆けていく。
そして目の前に現れた光景に、俺とアリスは立ち尽くした。
「なんなんだ、これは……!?」
「どうなってるの、これ……」
呆然と呟いた俺に、アリスが身体を寄せて来る。
よく知っているはずの三階は、しかしまるで現実味のない異常な空間と化していた。
赤、緑、黄色、青、紫……いくつもの色がめちゃくちゃに塗られたようなデタラメな色の壁。
本来ならまっすぐ伸びているはずの廊下は曲がりくねり、その途中には教室とは思えない大きさの部屋が疎らに見える。
「ここ、なんか嫌だ……」
「あ、あぁ」
泣きそうな声で言いながら、俺の腕を掴むアリス。
アリスの言葉通り、確かにそれは見ているだけで逃げ出したくなるような、そんな異常な感覚を与えてきた。
「こんなところに千彰が……」
「とにかく、古元を見つけよう」
「怖いよ、ルイ……」
怯えるアリスの肩を抱き、寄り添ったままで足を踏み出す。
こんなことでアリスを守れる自信はない。
それでも、少しでも彼女を落ち着かせたい思いが、俺にそうさせた。
気恥ずかしさを感じる余裕すら、今の俺にはなかった。
「くっ……」
壁と同じくバラバラの色で無茶苦茶に染められた床、そこを踏むだけで不快な気分が襲ってくる。
アリスも同じなんだろう、俺にしがみつく手の力が強まるのが袖の上から伝わってきた。
「古元! どこだ!?」
一歩進む度に不快感が全身を苛んでくる。
それでもどうにか堪えながら、声を張り上げ古元に呼び掛けた。
「千彰……いたら返事してっ!!」
俺にしがみつくようにしながら、アリスも声を出す。
不快感に耐えながら進んでいき、やがて一番近い部屋の扉の前まで辿り着いた。
「開けるぞ……っ」
「う、ん……」
見た目は別物だが、扉そのものは教室に備え付けられたものと変わらない。
俺の声にアリスが頷くのを確認してから、慎重に扉を開いた。
「うおっ」
「んぐっ」
開いた瞬間、俺とアリスの嗚咽が漏れる。
部屋の中から放たれた異様な臭気に当てられ、不快感が一気に高まったせいで。
「なんだ、これは……!?」
「んんぅ……!」
続いて視界に広がる常軌を逸した光景に俺は動揺の声をあげ、アリスは口を手で塞いで呻いた。