~7~ 夢の中の少女(2)
「……最近、よく見る夢に出てきてたんだ、あの子が」
言いながらバカバカしいと自分で思う。
そんな話でなにをどう説明してるのか、そもそもこんな話をまともに受け入れられるのか。
混乱する頭の中で、自分の言葉に否を突き付けることしか出来ない。
「うん、わかった」
「……アリス?」
だがアリスは、そんな俺の言葉にあっさりと頷いた。
俺自身が信じられない言葉を、なんの戸惑いもなく躊躇いもせずに。
「そっか。その子がアリス……」
そんな俺とアリスを見つめながら、少女がぽつりと言葉を紡ぐ。
一度目を伏せ、また開くとまっすぐにこちらを見つめて口を開く。
「やっぱり、入れ替わってるんだね。“ぼく”と“ボク”が」
「……何を言ってるんだ?」
「入れ替わってる……?」
少女が口にした言葉を理解できず、困惑する俺とアリス。
それに構わず少女は言葉を続ける。
「……その子の友達なら三階にいるよ」
「! 千彰が三階に!?」
「でも帰りたいかどうかは、わからないよ……」
「どういう意味だ?」
「自分で確かめるといいよ。じゃあ、またね」
そう言い終えると少女は教室奥側の扉へ向かって歩き出した。
「待て、いったいお前は……」
「“ぼく”は『ありす』……」
「えっ……」
扉を開け、教室から出る間際に発した言葉にアリスが驚きの声を上げた。
「待ってくれ……なっ!?」
慌てて『ありす』と名乗った少女を追い、俺も廊下に出て呼び止めようとして驚愕する。
視界に広がる廊下のどこにも、少女の姿は無かったからだ。