ゲーム説明
考えたらこのゲーム、頭にヘルメットとかメガネとかを付けてないんだが…。疑似体験させるには、それなりの装備が必要だと思うんだが。
そんな考えが、おれの脳裏をかすめた。
…と、目の前が真っ白になり、意識が遠のいた。
プルルン、プルルン、プルルーン
プルルン、プルルン、プルルーン
プルルン、プルルン、プルルーン
うるさい音がすぐ耳元で鳴り響き、おれは、目を覚ました。
目を開いたが、四方八方真っ白で、何も見えない。
ただ、カラダがおかしな感じだ。上半身は自由に動けるのだが、腰から下が完全固定されている。そして、本来ならある足の、太もも、ひざ、すね、足首の感覚が無かった。試しに股間のモノをピクピクさせようとしたが、その肝心のモノがまるで無いような感じだった。
<プレイヤーの皆さん、こんにちわ!>
「わっ!?」
いきなり女子のかん高い声が耳元に響いて、おれは、驚いた。女子の姿は、ない。
<現在みなさんは、真っ白な世界にいます。ただいまより、チュートリアルを開始します。要する時間は、約1時間です>
お、いよいよだな。これは楽しみだ。
<まずは、次の4種類の艦から好きな艦種をお選びください。空母、戦艦、巡洋艦、駆逐艦。決まりましたら、はっきりと発声してください>
おれは、正直、魚雷を撃って戦艦を沈めたい。デカブツを屠るのは、爽快だぜ!
しかしここはいちおう、オーソドックスに行くとするか。
「せんかん!!!」
おれは、大きな声で叫んだ。
すると、女子の声が答えた。
<せんかん、ですね?よろしければ、もういちど発声してください>
「せん、かあーん!!!!!」
<プレイヤーのケイタさまは、戦艦を選択しました。擬態、開始>
女子の声が響くとすぐに、自分の体の表面に次から次へと軍艦の上に載っている構造物が出現した。
まず最初に出たのは、船首の上、砲弾を運搬するレール状のものができた。
このときおれは、足の甲をちょこちょことくすぐられているような感覚に襲われ、思わず
「ウヒヒヒヒ~~~ッ!」
と笑ってしまった。
先ほどまで下半身の感覚が無かったのが、構造物が現れるときにその感覚が呼び起こされていた。
その手前に、巨大な砲門が出現。3連装の主砲砲台が、1つ、2つと縦並びに現れた。
おれは、ひざの皿の上から太ももの上をくすぐられた感覚で
「ヒヒヒヒヒ~~~ッ!」
と再び吹き出した。
ついで、左側、右側に、多数の副砲が出現。対空砲も出てきた。中央には、3連装の副砲。
おれの腹の辺りがこちょこちょこちょと触れられたみたいな感じで、おれは
「ブハアアア~~~ッ!」
と大爆笑。
すると、今度は背中か腰のあたりが、もぞもぞ。
なにげに首を左に曲げると、自分では斜め左前に曲げただけなのに、なぜか背中の後ろまで見えた。
その背中のすぐ後ろに、3連装の副砲が現れ、そして巨大な3連装の主砲砲台ができた。
う、うう~~~、背中がモゾがゆい。孫の手をくれー!
次に、おれの胸や肩、首、顔一面に、みるみるうちに艦橋が形作られた。
「うひゃ?うへっ?おひょ?あひゃ?」
おれは、そこらじゅうかゆくてこそばゆくて、変な声を挙げまくっていた。
やがて一瞬、前が見えなくなったが、すぐにパッと視界が開けた。
頭のてっぺんでなにやら、くるくる回ってる。レーダーか、ソナーか?
<擬態、終了しました。戦艦を選んだプレイヤーは、全員、戦艦大和に擬態しています。なおこのチュートリアル終了後は、この擬態は削除されます。これは、チュートリアル専用擬態です>
ほおー!いきなり大和に擬態か。これは、いい。
<では、これから模擬戦闘に出撃してもらいます。なお、本戦ではありませんので、苦痛はありません>
その、噂の苦痛というのはいったいどんな…。
質問の声を上げようとしたが、その瞬間、再び目の前が真っ暗になった。
しかし、女子の説明の声は耳元で続く。
<海上に出ると、顔の前にアイコンが出ます。前、左、右、後、です。おでこをそこにくっつけると、艦が移動します。そのとき頭を揺らすような感覚でしょうが、艦橋は微動だにしません>
へえー、うまくできてるんだな。
<主砲は、両方の指を動かします。左の親指人差し指中指が、1番砲塔。右の親指人差し指中指が、2番砲塔。3番砲塔は、両方の足の指を動かします。どちらでもかまいません。通常は、砲塔の全砲がいっせいに発射されます。指を動かすと、目の前にスコープが開かれ、水平の照準線が浮かび上がります。手や足の指を上下に動かし調整します。偏差は、指を左右に動かして合わせます。発射の際は、指を前に突き出してください。なお、装填速度は30秒です。30秒になる前に指を前に突き出しても、発砲されません。アイコンをよく見てください。左下に、装填ゲージが出ています>
ウウ~~~、早く撃ちたい!ドンパチ、したい!
しかし、これ、3番砲塔を動かすのが難しそうだ。日頃からつま先立ちしておけばよかったな。
<では、出撃です!がんばってください!>
あいあいさー!