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狂気の島

先日の海戦で友軍の艦隊は大きな損害を受けたようで我々ガダルカナル上陸部隊を置いて退避してしまったらしい。

このため我々ガダルカナル上陸部隊は完全に孤立してしまい補給も断たれてしまった。

補給を断たれてしまったために食事が制限される事となった。


隊員たちは腹を減らして任務に当たる羽目になりパトロール中も愚痴が増えた。

そんなある日ジャングルを小隊でパトロールしていると聞きなれない言葉が聞こえてきた。

私はとっさにそれが英語ではないことを判断すると隊員たちに静かに伝える。

「シッ!日本語だ!ジャップが近くにいるかもしれん」

声がするほうを捜索するとジャングルの間から日本軍の将校らしき二人がのんきに食事しているのが見えた。

「チキショー、ジャップめ。俺達は腹ペコだってのに・・・。少尉!あいつらの食事を奪取しましょう!」

マイケル一等兵の進言にそれはいい考えだ。と隊員たちも賛同し私も許可した。

奪取のため攻撃する日本兵の順番と段取りを決めて取り掛かった

日本への1人を倒すといきなり銃撃を受けたもう一人の日本兵は驚いてすぐさまジャングルの奥へと逃げていった。


日本兵の食事は白米に鮭の缶詰と豪華だった。

日本兵から捕獲した食事を満喫して隊員たちも満足そうであった。


元々この島を守備していた日本軍の主力は島の西部へと退避したようで上陸から10日ほどは大した戦闘も無かった。

しかし北部のサボ島から日本の陸軍の大部隊が夜にまぎれて上陸してきたとの情報が入る。

敵の斥侯との小競り合いもあったと耳に挟んだ。


上陸してきた日本軍の目的はヘンダーソン飛行場の再占領である事は明白であった。

我々は機関銃を備え付けた陣地を構築しタコツボと呼ばれる敵の銃砲撃から身を守る穴を掘り待ち構えた。

上陸から13日目で日本軍とのはじめて本格的な戦闘を経験する事となった。


日本兵は是が非でも飛行場を占領しようと我々の陣地目がけて殺到する。

我々の十字砲火をものともせず日本兵の一団が突撃してくる。が、我々の銃撃の前にバタバタと倒れる。

その屍を乗り越え別のもう一隊が突撃してくる。

すぐさま陣地の周りは日本兵の死体だらけになった。

手榴弾を使って攻撃してくる日本兵や死体を土嚢がわりに撃ってくる日本兵もいた。

別の日本兵は日本刀を振りかざし奇声をあげながら突っ込んできた。

日本兵は死ぬのが怖くないのか突撃攻撃を繰り返し日本軍の攻撃はまさに狂気に満ちていた。

私には狂気を通り越して無謀にも思えた。

鬼気迫る日本兵に恐れをなして機関銃を撃ちながら発狂する者もいた。

さすがの日本兵も大量の死傷者を出しジャングルの中へと退散していった。

戦闘が終わった後、日本兵の本性の一端を見た私は言葉も出なかった。

正直、装備が互角であったらどうなっていたか分からない。

「ジャップは死ぬことが分かっている攻撃を何故してくるんだ?俺にはただのクレイジーにしか見えない」

と隣で機関銃を撃ちまくっていたウィルソン一等兵が言った。

陣地に備え付けられた機関銃はしばらく銃身から白い煙を吐いていた。


日本軍が大量に残した死体の処理と敵の砲撃でできた穴埋めをするように命令を受けた。

作業をしていると

「チキショー!ジャップめ、俺達にお前らの仲間の死体を片付けさせるなんて!逃げるなら持って帰れよ!」

とマイケル一等兵がぼやいていた。


その後の追撃戦で今回上陸してきた日本陸軍の部隊の主力は壊滅したらしく生き残った日本兵はジャングルに散開しゲリラ的戦法に転じ抵抗し続けているらしい。

我々は逃げた日本兵を探し出し殲滅するように命令を受け部隊を組みジャングルに入った。

ジャングルの中を捜索しているとテントのようなものが見えてきた。

「気をつけろ!日本軍のテントだ」

とウィルバート少尉が警告する。


ヘンダーソン二等兵が警戒しつつテントへと近づき中を覗くと中は日本兵の死体と重傷者ばかりであった。

半死の日本兵はうめき声を上げ何かを言っている。

傷口にはウジ虫やアリがたかっていた。

テントの中はひどい臭いだった。


私がテントの中を確認しているとウィルソン一等兵が入ってきた。

「これはひでぇ。おい、大丈夫か?」

とまだ生きている一人の日本兵にウィルソン一等兵が声をかけ手を触れようとした。

その瞬間その日本兵の目が笑った気がした。

手を触れた瞬間強烈な炸裂音とともにウィルソン一等兵は吹っ飛び私もテントの外へ吹き飛ばされ気を失った。


私が目を覚ましたのはヘンダーソン飛行場にある野戦病院のベッドの上だった。

目が覚めた時にいたのはウィルバート少尉だった。

「ウィルソンは死んだよ。あの日本兵には手榴弾が仕掛けてあったんだ。それにしてもジャップもひどいことしやがるぜ。

戦友の体に手榴弾仕掛けるなんてよ」

ウィルバート少尉はそれだけ言って野戦病院のテントを出て行った。

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