僕の日常
中は思ったより広くおっさんは2人だけだった。
その中で彼とは面と向かって話すことになった。
「やぁ、僕はジョンソンって言うんだ。
よろしくね。」
いきなりジョンソンと呼べと言うのである。
厚かましいにもほどがる。
そんなことは知った事ではない。
僕はたった今誘拐されているのだ。
このおっさん達に。
彼にとってぼくはとても大切な存在らしく、いつも笑顔で出迎えてくれる存在だった。
そうしていつもぼくを可愛がってくれていた。
彼は何をしているのか、いつの日も何処かへと朝早く出かけていってしまう。
帰ってくるのはバラバラで、彼の優しさに包まれていられる時間はほんの少しの時間だけしかなかった。
そんな忙しそうな彼をいつもそばで支えている女性がメアリーと言う人だ。
彼女はこの家の写真によく彼と横に並んで映っている人だ。
この家には写真が沢山おいてあって、中にはは大きくて立派に貼られた写真も何枚かあったが、それとは別の立派さで大切に置かれている。
その写真のほとんどに彼か彼女か、そして両方が一緒になって入っている写真ばかりなものだから、彼女の事はすぐに覚えてしまった。
彼女とは特に接点は無かったが、冷たい人でもなく、ただ彼の為に真直ぐな人だった。
落ち着いた日には、たまに彼女のひざに乗せてもらった事があった。
互いに一言も喋らないし何をするでもない。ただひざに抱えてもらってゆったりと過ごした。
だかそれが、とても居心地が良く、そして何も話さない静寂が落ち着いて、暖かくこころが安らいだ。
彼は元気に庭を走りまわっている。
元気な少年。
ぼくはそれを追いかけている。
こうして走り回るのはぼくたちの日課だ。
遊び相手にもなってくれる彼は、自分にとってパートナーともいえる存在だ。
彼が元気でいてくれるからぼくも元気で走れた。
家の近くの色んなところに連れて行ってくれた。
最近は回りつくしたのか、決まったルートを彼と歩いてる。
彼には沢山の仲間がいるらしく、よく集まって遊んでいたのを窓の所から見るようになった。
ぼくはその姿が楽しそうで、憧れた。
ぼくも混ざって一緒に遊びたいなと思ってメアリーさんのところへ行く。
ぼくのパートナーはトニーとよく呼ばれていたので、トニーと言う名前なのだろうなと彼のことを認識した。
気が向いたからか、時たま、仲間と遊んでいる時に、ぼくを一緒に入れてくれる時があって、その時はとても楽しかった。
ぼくはここに来てまだ、あまりこの外の世界を知らないのだろうとも痛感した。
それからしばらくして、トニーと呼ばれる人はこの家から居なくなってしまった。
何やら彼には行く所があるらしく、今となっては止めようもない。彼はぼくたちの前から去っていってしまった。
ぼくたちは大きな装飾のされている扉の在る前に集まっていた。
この日は扉についている色んな色をしたガラスから太陽の光が注がれてとても幻想的な美しさをしていた。
ぼくにもそしてここの彼らにも、
「たまにはまた戻ってくる」
と言っていた。
ジョンソンさんも、他の彼らもとても悲しそうだった。
メアリーさんはぼくのパートナーに抱きついて暫く動かなかった。
瞳からは何かが垂れていた。
痛そうとか、そういうんじゃなくて、なんだかとても辛そう。
そんな感じの表情で、瞳から何かを垂らしていた。




