表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/24

003 未開のフォーランド



「私、託宣がどんなクエストなのかよくわかんないんだけど。わかる? ユイ」

「姉ちゃんがわかんねーのにオレがわかるわけねーじゃん」


 サクラリアとユイとディルウィードが帰ってきた。彼らは最近、採掘を目的にした狩りに出かけている。ディルウィードの<採掘師>としてのスキルも随分上がってきたが、ほとんど成果はない。


 鉱物に関しては大地人から買い取ったほうがはるかに安上がりだし、宝石は採れたためしがない。お目当ての宝石<ルークィンジェ・ドロップス>には全くお目にかかってない。それでも毎日出かけている。


「神亀の島に渡れってのは、<フォーランド公爵領>に赴けってことやね」

 サクラリアの質問にシモクレンが答える。工房の七人は今、イタドリの用意した昼飯を食べている最中である。残念ながら味噌汁は見事な失敗作で、誰も手をつけてない。



「神様の亀で、なんで<フォーランド>なの?」

 ゲーム歴のそれほど長くないサクラリアには、上級者には分かる隠喩がわからない。

「ああ、もしゃ、そりは、むぐ、<ユーエッセイ>の、ごくり、古い言い伝えでね」

「もう、あざみ。口に含んだまましゃべらんといて」

 シモクレンの忠告を全く気にかけることなくあざみはしゃべる。



「フォーランドの土地自体がでっけえ亀型の召喚獣の甲羅の一部で、契約者を求めて<弧状列島ヤマト>に滞在してるって言い伝えでさ」

「ひょえー、スケールでっか!」

「あ、それならオレも聞いたことある!」

 授業中のように手を挙げたのは、<大地人>の少年ヴィバーナム・ユイ・ロイだ。


「オレんところの言い伝えでは<ヤマト>もでっかい龍で、<フォーランド>はその子どもで、亀の姿をしてるんだってさ。だから、今なおちょっとずつ成長してるらしいぜ」

「えー、こわいー」

 サクラリアは可愛い顔をして意外と豪胆なものだから、この返事はとてもいい加減なものに聞こえてしまうが、愛嬌ある頷きの一種だと理解するとよい。


「で、<サクルタトル>ってどの辺りにあるんすか?」

 焼き魚を器用にほぐしながら、ディルウィードは尋ねる。

「うわ、生焼け。ドリィさんもなかなか成長しないなー」

「ホラホラ、ディルっちも<ルークインジェ・ドロップス>を採掘できないんだから、おあいこだよう」


 反論するイタドリを優しく見つめてからシモクレンが問いに答える。

「その昔、<ユディオン伯爵>が治めとったところやねえ」

「うーん。イメージできないっすね」


 <ナインテイル自治領>が現実世界の九州・山口地方にあたるように、<フォーランド公爵領>も現実世界に対応する地があり、それが四国地方にあたる。


 <フォーランド公爵領>は、古い時代に治める領主がいなくなり放置された空白地帯である。プレイヤータウンもないため、冒険者もほとんどおらず、様々なモンスターが跋扈する異形の地である。特にこの地は巨大モンスターが多く、軽々しい気持ちで訪れれば痛い目にあうであろう。


 <ユディオン伯爵>が治めていたのは<フォーランド公爵領>の北の地である。

 <ナインテイル自治領>からこの地に至ろうとすればいくつかのルートが考えられる。


 ひとつはナインテイルを北上し、<神聖皇国ウェストランデ>に入り、<キビノツ>から<サクルタトル>に渡る方法だ。しかし、まずナインテイルからウェストランデに入る冒険者は<Plant hwyaden>に加入していなければ、領内に入ることさえ難しい。


 二つめは<セトインランドシー>を航海または飛行して<サクルタトル>の近辺に上陸する方法。【工房ハナノナ】のメンバーを全員輸送するには、<パンナイル>の貿易船を調達せねばなるまい。召喚獣なら三人が限界だ。距離的には<マヴァルの廃港>で寄港するのが妥当だろう。


 三つめは<ナインテイル>の最東端から<フォーランド>最西端に渡り、ぐるりと時計回りに陸行する手だ。これなら召喚獣を数往復させるだけで【工房ハナノナ】の全員を移送することができる。

 ただしこの方法にも問題がある。

 桜童子は<大災害>後、エンカウント率の異常上昇に悩まされている。<猛猪>にまで求愛されるほどだ。

 比較的<ナインテイル>の空は安全であったが、魑魅魍魎の跋扈する<フォーランド>上空では全く安全は保証できない。それに陸行が長くなる分エンカウントは強烈なものになるだろう。


 桜童子は、ふと思いついたように席を離れ、念話を始めた。


「ハギか。バジルとイクスは一緒か。ああ、たんぽぽがクエストを受けてしまったらしい。いや、そのまま滞在してくれ。もしかすると龍眼さんにも助けてもらわなきゃならない。ああ、そうしてくれ。ああ、また連絡するよ」


 続けて別の相手に念話する。


「カラシンさん? 【工房ハナノナ】の桜童子です。バタバタしていますね。天秤祭? では単刀直入に。椅子を探して欲しいんです。とても古い椅子を」

■◇■


「カラシン!? あの若旦那登場!?」

という全国のカラシンさんファンの皆様、すいません。

活躍は次々回となっております。まて、次々回!


というわけで、明日も深夜0時更新!

お楽しみいただけたら幸いです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ