022 挟撃のニノマル最下層戦
022
第1、第3はうまく戦線を抜け出し、最下層にたどり着いた。最後の空間はこれが地下かと思えるほど大きなドーム型の空間だった。
その真ん中に、8メートルはありそうな巨大な鬼神が待ち受けていた。赤銅ような肌に黥面文身、手に持つ金棒は細い錫杖のように見えるが、近寄れば丸太ほどもある。
「ココハ地ノ底。ワレハ人ノ疑心ニヨリ幽鬼トナルモノゾ。コノウラミ……」
振り上げた金棒を連続で地に叩きつける。地が揺れる。
「地上ノ人トイウ人ヲ三度滅シテモ尽キヌ!」
「カウント開始! 行け!」
「任せなさーい! オーラの盾ロケットー!」
金棒の威力に物怖じせず、二枚の盾を前に突き出し、フルオリンが金色の輝きとともに滑るように突き進む。これはつい先程編み出した口伝、<天盾地弾>だが、全く名前を覚えていない。
これは秘宝級アイテム<エレメンタルギア>の驚異の加速能力と、最硬を誇る二枚の盾、オーラセイバーとシールドスマッシュの同時発動にシールドマスタリーであるという偶然の融合があって産み落とされた技だが、フルオリンはあまり興味はなく、なんとなく便利というだけで使っている。
衝突すると爆発するようなエフェクトが出たが、<羽坂の狂戦士>はおそろしく頑強でほとんどHPを削れていない。
「ディル! すず! てぇえええええええ!」
ふたりが攻撃を繰り出す間に、ヨード、あざみ、ヨサク、ブロマインが群がりついて襲いかかる。フォスフォラスの繰り出す音符が4人を包む。
「モーション入った! 散れ!」
「<キャッスルオブストーン>!!」
金棒が狂ったように振り下ろされる。最初の一撃でハギの障壁は砕け散り、二擊、三擊は盾で金棒を受け止める。脈動回復に反応起動回復をかけているとはいえ、5発もこれを喰らえばフルオリンのHPは底をついていたかもしれない。瞬時に無敵の大技を繰り出した判断は間違いではなかった。
「10秒でこれか! 再開!」
「第2、合流する! 行くぞ」
龍眼の背後から、クロライン、アリサネ、ユイ、てるるが飛び出し近接攻撃に加わる。サクラリアは後方から<グランドフィナーレ>を奏で始めた。
<羽坂の狂戦士>は金棒を水平に構えた。
「15、横薙ぎ来るそ!」
反射的に多くの者は後方に飛び退ったが、攻撃中のユイとてるるは一瞬遅れた。
ユイを<シフティングタクト>で移動させるサクラリア。
てるるは横薙ぎに目もくれず弾幕を張り続ける。
金棒がヒットしそうになる直前、てるるは射出呪文の方向を変えふわりと金棒を避けた。
「ミラクルシューティング最高ぉぉおおおおお!」
真下から声援を送るフルオリン。しかし間もなく金棒の連撃がやって来る。
ハトジュウが目くらましをするように飛んだがまったく気にする様子もなかった。まだ<キャッスルオブストーン>が効いている間に、ハギは<神楽舞>を、ディルウィードは<ラミネーションシンタックス>を準備する。
「もう1回耐えたら、出るぞ、イタドリ。フルオリンと交代だ」
龍眼の指示と同時に、近くであれば耳をつんざくような音が遠くから聞こえた。最初のシュリーカーエコーが発動したのだ。
「ち! まだ1割にも満たん。DPS上げるぞ!」
叫ぶ龍眼の横にのっそりと椅子を背負った山丹が現れた。
「託宣忘れてんじゃねーかい? ここにはあれがある」
「桜童子か。ああ、そうだな」
「見たところ、攻撃の間合いがおかしい。あんな間隔で打ってこられちゃ、MP切れ起こしちまうぞ」
「ああ、<ルークインジェ・ドロップス>が、やつの狂気を加速しているとしか思えんな。そっちは終わったのか」
「いや、まだだ。敵増援も来る。なんとか凌ぐからあとは頼んだぞー」
サクラリアが<グランドフィナーレ>を放つ。
山丹に乗って上の戦場に戻る桜童子を激励する。
「にゃあ様がんばって!」
「リア、おめーもなー」
ヘイトを上げたイタドリが前に進み出る。ハギは多重障壁に護符もつけておく。
ディルウィードも負けじと高火力魔法を次々と叩き込む。
皆が必死に攻撃を続ける。アリサネが横薙ぎを交わしきれなかったところに、すずの障壁が割って入り、何とか即死をまぬがれた。U17の召喚した生命のセコイアのもとへ行き、あすたちんの手当を受ける。
ユイは頭部への攻撃を続けている。どうやら死角らしい。ユイと<狂戦士>の目が合う。
「!!」
くいちぎりに来たのを<シフティングタクト>でかろうじて脱する。
礼を言うまもなく頭部への攻撃を再開する。頭部を動かしたためだろうかイタドリに振り下ろす攻撃が1発になり、横薙ぎは発動しなかった。
龍眼は慎重に様子を見る。本当に突破口となるのか、否かを。
同じ現象が起きた。頭部への集中攻撃を命じる。そうしながらも龍眼は<ルークィンジェ・ドロップス>のありかを探った。
激しい戦闘は上の階でも続いていた。最後のシュリーカーエコーも発動していたからこれからは耐久力勝負といったところだ。
「うむ!」
斬鉄剣が音を立てて<巨石兵士>を両断する。その先にも剣撃が飛び、2体の<鉄躯緑鬼>を同時に切り裂く。
「キケケケケ、闇の世界はやっぱりたまらねえな!」
まさかの<ソウルポゼッション>でファントムに憑依した黒夢は、宙を飛び回り敵の意識を奪う。時折敵の武器が襲ってくるがすいすいと回避していく。その後をついていくようにわらわらと湧いたスケルトンたちが、下ってくる敵を押し返していく。
桜童子は椅子から降りて戦っている。黒夢の本体を椅子に座らせたのだ。
その椅子は隅の方に置いてあるので、山丹も自由に暴れまわっている。
最下層の二段上の螺旋もかなり広いが無限ではない。どれだけ攻め込んできても一度に対面する敵の数は限られる。一つ上の螺旋まで押し返してウンディーネに氷塊で閉ざさせれば、ここまで炎系の敵がいなかったから大きく時間が稼げる。
「<ハンティングダンス>! <ソードプリンセス>!」
縦横無尽にユニコーンが駆ける。ユニコーンの背で翼を広げたように甲冑姿の乙女が剣を振るう。これを操るのは幻獣にまたがる桜童子だ。一騎当千の勢いで敵を押し返していく。
「バジル。ウチらは大丈夫やから、下を見てきて」
「えー」
「えーやない! 早う」
「へいへい、ひー怖ぇー」
サブギルドマスターに睨まれて、バジルは螺旋をそそくさと駆け下りていく。
上の層では善戦が繰り広げられていたが、下は苦戦の最中だった。
ハギの<魂呼びの祈りン>でヨードとブロマインとアリサネが蘇生したところだ。
「バジル・ザ・デッツ! BS付けろ!」
「お、おうよ」
龍眼もカウントを続けながら時折バッドステータスを付与するために前線に飛び出している。
「なんで戦線崩壊しちゃってるんすか! 邪眼のあんちゃん」
「左手だ」
頭部を攻撃して金棒による攻撃が減ったものの、何も持たない左手を振り回すようになった。
これが、武器での防御も不可、装備でも軽減できない貫通攻撃となる厄介なものだったというのだ。HPが半減したあたりからこれに悩まされていた。
「それで、武器も装備も砕けてないのに倒されちゃったのかよ」
「オレは左手が怪しいと睨んでいる」
「怪しいって何かパンチの他に変なもの出るのか!?」
「いや、そうじゃない」
「じゃあ何!?」
「<ルークィンジェ・ドロップス>の在り処だ」
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いよいよ佳境に突入してきました。
次回、戦いに終止符! そしてこのお話もあと2夜だけ!
次回「魂の眠る井戸の底より」!
明日も深夜0時をお楽しみに!




