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015 集結の地ベップ楽天地


 一度<ユーエッセイ>に集合したのは、ここにセーブポイントを作っておくためである。


 戦闘で死亡してしまった場合、ダンジョンならば入口のセーブポイントに帰還することになるが、行軍中ならば最後に立ち寄ったプレイヤータウンにまで帰還させられてしまう。



 <ナカス>の大神殿は<Plant hwyaden>の支配下にあるため、そこで復活すればこちらの動きがまるわかりになってしまう。

 非常に楽観的に見れば露見して困るということはないのかもしれない。だが、「<Plant hwyaden>にあらざれば人にあらず」という態度の<冒険者>や<大地人>がいるのも確かで、得をしないことは明らかだ。


 また単純に復活ポイントが遠すぎて、再攻略に期間がかかりすぎるということもある。

 そこで、小さいながらも復活ポイントとなる<エインシェントクインの古神宮>にある祠に立ち寄ってもらうこととなったのだ。


 

 【工房ハナノナ】と龍眼も彼らに遅れて<ユーエッセイ>入りした。

 だが、ほかの<冒険者>たちとの接触はここでは避けた。


 <ユーエッセイ>の地を守るのは、エルフの<大地人>たちが多く、彼らは<冒険者>に心を開いていない。

 そのまま馬車に乗って<ユーエッセイ>をあとにした。


 エンカウント率異常の桜童子は、例の<呪いの椅子>にまたがって姿が見えなくなっている。これをシモクレンが大事そうに抱えている。



 出発前に、桜童子の召喚獣である金の<鋼尾翼竜>の背に椅子を取り付ける実験をした。

 先に召喚しておいた<鋼尾翼竜>は桜童子の姿が消えても姿を消すことはなかった。ただ、椅子の上では使役できないことがわかった。


 どんなに声をかけても<鋼尾翼竜>は腹ばいの姿勢のまま、姿なき主の姿を探しているだけだった。迷子のようなその仕草に、見ている方まで悲しくなってしまうほどだった。

 

 戦闘中は自律行動可能な<山丹>に載せるしかないだろうが、猫科の動物の背中でロデオ状態になったとき、桜童子が対応できるかは疑問である。



「なあ<エレメンタラー>。<シバ荒神の代替わり>を阻止して<ハヤトの鬼武者>が始まるのを遅らせたと聞いたぞ」


 揺れる馬車の中、龍眼は桜童子に聞いた。


「偶然さ。今回と同じくあざみがクエスト受けてきちまったから避けられなかっただけだなー」


 桜童子はこともなげに言ったが、【工房ハナノナ】の面々は誇らしげだ。


「<ベアブック・ヘブングラス同時篭城戦(あのとき)>も<トライネルの合戦場>のための前哨戦に過ぎなかった。できたばかりの<ナカス>に人を集めるためのイベントだ。だが、<夏の陣>はフルレイドコンテンツ、多くのギルドは主力をそちらに割いた。そこで手に入れた幻想級のアイテムを二つ名にもつ者たちが、その後有力ギルドを牽引することになった。お前はそんな<ちっぽけな英雄>のままで我慢できるか」



 龍眼は身の不遇を嘆いている。<鬼邪眼>の通り名も、ヤマト全域に轟く二つ名ではない。彼は<軍師>が実装される前は、金色の目をもつ<邪眼師>だった。イベントに参加すると鬼のように強いと古くから居るプレイヤーに噂されてついたあだ名が<鬼邪眼>だ。


 <大災害>後、すぐに<リーフトゥルク家>に身を寄せたのも、立身出世の余地があると感じてのことだ。


「構わんよー。おいらはこの手の内に入る守れれば、それで十分だ」

「ふ、野心はない、か。桜童子」


 龍眼は己との違いを感じて苦笑を漏らした。

「後々もめるのが嫌だから聞いておくぞ。ドロップ品の分配は俺がしてもいいんだな」

「構わんよー。これ以上は捕らぬ狸の皮算用だな」



「オレ、アイテムとかいらねーから!」

 御者台からユイが叫ぶ。ユイとサクラリアはバジルをはさんで御者台にいる。

「オレ様はいるからなー、邪眼兄ちゃんよー。戻ってくるナイフとか欲しいな」

「私は<援護歌>を増強するようなアクセサリほしいー!」

「そんならウチ、刀の素材ほしいわぁ。<天筑後羽>にほとんど使ぅたんやもん」

「あ、あたしはー、あたしはー、盾! 回復できる盾がほしい! 回復できる盾! あと兜!」

「じゃあボクはローブを新調したいですねー」

「イクスにはかっこいいムチがほしいにゃ! 山丹にはキウイ山盛り!」

「がう!」


 イクスは山丹にまたがって馬車と並走中だ。

「イクス姉ちゃん、キウイはドロップしねえんじゃねーのか」

「そうにゃか?」


「キウイはたしか<フォーランド>に旨いのがあると、<ナカス>にいたころ聞きましたよ。まあ、<ナインテイル>産のだって追熟されていて甘味も十分なんですけどね」

「うにゃー、よだれ出てきたー」

「がう!」

「あたし、キウイ料理つくってみよっかな! キウイ料理!」

「ドリィさん、それはやめて」


「くかか、お前ら、皮算用フェスティバルじゃねぇか。龍眼さん、うちのもんはみんなこんなものさ。そういや、あざみは何が欲しいんだ」


 あざみだけが今の話に加わっていなかった。ぼうっとしていた。


「え、あ、あたし? んー、にゃあちゃん、あたし何もいらないや」


「ヨサクってヤツがいれば他に何もいらないか。ケケケ、乙女だねえ」


 びくっとあざみが震えた。誰もが「空気読めー」と叫ぼうとしたが、言ったバジルは幌の外で馬を御している最中なので、空気の読みようもない。


「あー、オレ様もそんな風にキャーキャー言われてえ」



 怒ったあざみはバッグからりんごを取り出して御車台めがけて投げた。幌を破ってりんごはバジルの後頭部に命中した。そして泣いた。


「もぅ! バジルのアホぅ! ほんまにもー。あざみ、ウチの胸で泣きぃ」

「姉ちゃん! 手綱! 狼あんちゃん気絶してる!!」



 龍眼は心から楽しそうに笑った。


 <ベップ楽天地>についた一行は、四十人近い仲間とエルダーテイルの世界では見ることのなかった大型蒸気船を目の当たりにする。




「諸君! 何の任務かも聞かず、よくここまで来てくれた! 我々は未知のクエストに臨む! 目的地はフォーランド<サクルタトル>! これよりまず<セキ>に移り、<ミサキ>へと渡る!」 

■◇■


えー、会話の応酬で、どの声が誰の声かとお思いになるかと考え、ここに【工房ハナノナ】のメンバーをあらためて記しておきます。



桜童子  【召喚術師】ウサギのぬいぐるみ風

サクラリア【吟遊詩人】女子高生

バジル  【盗剣士】狼のかぶりもの

ユイ   【大地人】めざせ古来種

シモクレン【施療神官】関西弁の巨乳刀匠

あざみ  【武士】絶賛ハートブレイク中

ドリィ  【守護戦士】大概同じことを二回言う

ディル  【妖術士】大概ドリィの後に喋る

ハギ   【神祇官】キウイトリビアでました

イクス  【大地人】語尾に「にゃ」

山丹   【剣牙虎】がうがう


次回も深夜0時更新!

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