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白馬に乗った…?王子様

作者: ゴロタ

こんなに長くなるとは…。誤字脱字は読み手の妄想力で、カバーして下さい。Orz

私は夢見る乙女、ハスハ!十五歳。クシャトリアという王国の遥か北にある、辺境の村、ムセル村の村長の娘よ。


はっ?分かってますよ?村の名前を言うと、皆同じようなリアクションをするもの……。ええ、皆『ムセル』もの。何も飲んだり食べたりしていなはずなのに……よ。


何かの呪いかしらね?うちの村名で、ムセられるのに皆、慣れてしまっているけれど。



あっ!これは内緒だけど、大人は皆ここを村だと言うけど、ハッキリ言って村じゃないわね……。

良くて集落…程度じゃないかしら?


だって、村人の数は六十人弱しか居ないし。この国は成人と呼べるようになるのが、十五歳なんだけど、大体の人が出稼ぎに行くと言って、村を出ていってしまっているの。だから村人の半数は中年よ。ご老体では無いわ。中年なのよ。大事な事なので二回繰り返させて頂きましたわ。



でも、私は出て行かないわ!夢があるの!!小さい頃読んだ絵本のように、平凡な村の平凡娘の元に白馬に乗った王子様が…赤い薔薇の花束を持って、プロポーズをしに来るの。そしてゆくゆくは王妃に……。何て素敵なストーリーかしら?



キャアッ☆憧れるわ~♪乙女の夢よね?こんな王道展開、嫌いな人は居ないよね?




……以前は私と、この乙女の夢を語ってくれた友人達が数人居たのだけれど、もう誰も…残っていない……。



え?全員亡くなってしまったのかって?いえ、違います。亡くなってませんっ!紛らわしい言い方をしてしまってご免なさい。


皆は夢を諦めたのよ。妥協した相手と結婚していったの。残念なことにね…?


だが、私は諦めない。孤軍奮闘でも、絶対に諦めない。絶対に…だ!!

私の想いは誰にも阻めないのよっ!!






















と、思ってはいた。数時間前の私なら、絶対に。


私の夢が阻まれ打ち砕かれたのは、つい先程のことだった。何時もの日課の畑仕事を終えて、さてそろそろ乙女の妄想に耽る為、自室に戻ろうとしていると、珍しく上機嫌な父に呼ばれた。 嫌な予感しかしない。



大切な乙女の妄想タイムを邪魔されて、イライラしていたので、キレ気味に話を聞いてみると、私の結婚相手が決まった…とか…なんとか…?

戯言を言っている。 絞めるか?


相手は隣の村(といっても、馬で五日程掛かる位には遠い)の村長の息子で五十二歳。因みに後妻だと? 舐めんな?


その年齢だと村長の息子では無く、お前が既に村長だろ?

そしておい、父よ…。十五歳の娘を、後妻に欲しがる五十代の変態との結婚に何故そんなに上機嫌のホクホク顔なんだろうか?

間違いなく相手側と、何か黒い取引でもしてんだろ? 剥ぐか?





***





あっという間に隣の村に嫁ぐ日が来てしまった…。

結婚が決まってから一月、村を脱走すること二十五回。

ほぼ毎日逃げたというのに、捕まる。何故なの?


しかしこれ程娘が嫌がっているのだから、父よ…空気嫁。

心底逝きたく…いや生きたく…いやいや行きたく無いわ。純真無垢な乙女の少女に何て仕打ちなの?

私の夢が……将来の未来像が……や…やっぱり諦めきれない!!



よし、脱走だ。



今回が最後の大脱走になるのは、分かりきっている。命を燃やせぇぇぇ~!!そして夢を自らの手で掴みとる……ドリームキャッチャーよ!





私が一人、闘志を再燃焼させている間に隣村から、花嫁となる私を迎える馬車が既に到着していた。その馬車を視界に捉えてしまった私は驚愕していた。


それは異様な馬車であった。窓が一切無い。小窓すら無い。そして何よりもその車体の色だ…。真っ黒である。

えっ?私花嫁よね?囚人じゃない筈よね?

私は自分の目を疑った。何度かゴシゴシ擦ってみても、紛れもなく馬車の色は深淵を写すかのごとく真っ黒であった。


どうやら父が、余りにも私が脱走するから、相手方に伝えて特別に用意してもらったらしい……。ったく、あの中年は余計な事しかしないのだから、迷惑千万だわ。

それにしても私の頑張りが裏目に出るとは………無念です。


まあ、まだチャンスは残っている。相手の村に行くのには、五日程度は掛かる…そのいずれかの日に、逃げてしまえば良いのだ。




***




馬車に乗り込もうとする私に、父が満面の笑みで近づいてきた。一応定番のアレでもやっとくかと思い、


「父よ…今まで育てて下さって、本当に有難うございます。(永遠に)さようなら……」


ペコリと頭を下げ、泣いているような素振りをみせつつ、下げている間の表情は陰惨過ぎて決してお見せ出来ません。あしからず。


これから嫁ぐ娘って感じに演出してみた。態度だけだけどね。

私の名演技に感極まったのかうっすら涙ぐむ父。

いや、泣きたいのはこっちだ…と、危うく叫びそうになった。アブねっ!?


「達者でな…。それとこれはワシからのささやかな結婚プレゼントだ……受け取って欲しい」


父が殊勝なことを、初めて口にしたので油断したっ!!

受け取ろうと、手を出したら何故か両腕を縄で縛られた…………。


私は大いに慌てたが、後の祭りであった。チクショウ!騙された!!


「父よ、何をするっ!」


「いや、だってちゃんと縛って置かないと………お前逃げるもん☆」


流石良く分かっていらっしゃる。確かにこの一月ほぼ脱走しまくったけどさ……情緒が全く無い。

それに良い年した中年のオッサンが語尾にもんとか付けるなっ!星もとばすなっ!!

腹立たしい。



「逃げられると大変なんだよ?この村の為だし…」


とか言ってる。どういうことなの?


「村の為とは?」


「いやぁ~隣の村の方が規模が大きいじゃん?お前を嫁に出せばかなりの人数を、うちの村に移住させるって言われてさ。お前も知っての通り、うちの村人数少ないでしょ?これで万事解決だもん。つい……ね?」


おいっ!ついじゃないでしょ?ついじゃ…。

相手側の村長とやっぱり黒い取引をしていたのね。鬼畜か?


こうなった父に私から何を言っても無駄。一度決めたことはほぼ曲げない為、説得は無理。話すら聞かない。


唯一父が素直に話を聞くのは、現在村の為に出稼ぎ行っている母のみである。

母は私が隣の村に嫁ぐことは、知っているのかしら?きっと知らないわね。帰ってきた母に折檻されればいい…。いや、確実に折檻されるであろう…それを考えると多少は溜飲も下がるが…。



「寂しいけど、そろそろ時間だから…じゃあね~。向こうで幸せになれよっ!いつまでも、夢みたいなこと言ってないでさ~」


現実を、見ろと?いま現実を直視すると目が潰れそうなんだけど?五十代のオッサンの後妻となり幸せになれと?父よ、あんたどうかしてるよ………。


恨みの籠った目で父を見るが、あらぬ方を見ながら口笛なんかを吹きシカトしている。 この野郎…。


そのうえ更に私を馬車に向かってグイグイと押して来る。自分で乗るからやめれ。


「では、行きますか?」


馬車と共に隣の村からやって来た護衛兼御者らしき男性が、声を掛けてくる。


「………………………………ええ」


タラップに足をかけ、頭を後へゆっくり回し、父に捨て台詞を言う。


「母が帰ってくるの…楽しみだね…」


父は今気がついたのであろう…。急に顔を青くしてガタガタ震え出した。「あうあう……あうあう……」と、意味不明な言葉も呟いている。


ざまぁ。


私はタラップを上がりきり、勢いよく馬車のドアを蹴り閉めた。……行儀が悪いって?いや、両手が塞がってますんでご容赦下さい。



私が想像をしていたよりも、馬車の中は結構快適なようだ。外は残念ながら見えないが、高価な魔石が使用されていて、明るく座席もフワッとした布地が敷いてあり、中々の座りごこちである。


私は座席に座り、内部を目で確認していると、馬車が静かに動き出した。


体感で三十分位は経っただろうか?先程から視界にちらつく出っ張りが、妙に気になる…。押すべきか、引っ張るべきかで悩んでいたのだが、押す事にした。押す方が好きだ。理由は無い。そして触らない理由もまた、無い。



「チェストゥッ」



気合いを入れて足で押し込んでやった。そのとたん物凄い音がして、馬車が急停止した。

勢いよく扉が開き、護衛兼御者の男が馬車の内部に入って来る。


「一体どうした?何かあったのか?」


護衛兼御者の男は、何かあったかのか聞いてくるが、私はそれ処では無い。馬車が急停止したせいで、座席から転がり落ちた上に、腕を縛られていたので受け身が上手くとれず、顔面を強かに床へと打ち付けていた。


「ぐうぁぁぁぁがぁぁぁぁぁ…………」


ゴロゴロ~ゴロゴロ~ゴロゴロ~ゴロゴロ~。馬車内を転げ回る。

痛い…凄く痛い…。空は見えないのに、目の前に星の瞬きが見えるぅぅぅぅぅ~。


何時間にも感じる数分間、激痛に悶えていると、ようやく痛みが落ち着いてきたので、男の方に顔を上げた。


「お前…それ…時間が経つと青アザとか、青タンになるぞ?まったく…後で冷やさないとな。で、何があったんだ?」


男は心配そうに何があったのか聞いてくるが、寧ろこちらが聞きたい…。


「いやいや…こっちの方こそ…聞きたいわ…ね。何故いきなり…馬車を急停止させたの…かしら?」


ううっ…喋るだけで結構痛い………。


「お前が馬車の緊急停止用の出っ張りを押すからだろう?」


はあっ?知らないわよ。


「聞いてません…けど?何故馬車に…乗る前に…教えてくれな…かったの?」


「お前の父親には伝えてあった筈だが?聞いてなかったのか……?」


「あんにゃ…ろう……忘れて…たな…」


脳裏によぎる父の能天気な顔…故意に教えなかった気もする。 ガッデム。


「聞いていないならしょうがないか。次からは触る前に確認しろよ?後は…そうだな…休憩もしようか。お前のその顔も冷やさなきゃならないしな……。近くに泉がある…そこで一先ず休憩しよう…」


「お気遣い…有難う…ございます…」


お礼を言いつつ、どうしても逃げることを考えてしまう…。だが思ったより早く来たな。チャンスだ。



「ほら…これで顔を冷せ」


泉で濡らしたハンカチを目の上に置いてくれる。


「どうも…」


冷えたハンカチはとても気持ちよくて、本の少しだけ逃げることを躊躇わせた。

のだが、ここで諦めたらバッドエンド。私はドリームキャッチャーになるのよ…。乙女の夢を掴むのよ。鷲掴みよ。ほだされん…絶対にほだされはせんぞぉ……。





休憩を始めてちょっと経った頃、男に聞いてみる。


「お花を摘みに…行きたいの…良ろしいかしら?」


流石の私も御手洗いに行きたいのとは言えず、名称はぼかしたが大丈夫ですよね?世界共通ですよね?


「はあっ?………休憩中だから別に問題はないが…でも今行くのか?」


休憩中に行かなくて、いつ行くのよ?


「ええ…見られるのは…嫌ですので…ちょっと行った…先にある茂みの方で…済ませて…来るわ」


普通のことを、伝えたのにいきなり男は不審がり始めた。


「何故見られるのが嫌なんだ?その辺でいいだろ?ほら、そこに丁度良い場所があるだろ?」


全身に鳥肌が立った………。この男……変態か?優しい仮面を被った…変態なのか?乙女のそんなシーンを見たいのだろうか?だとすると、本物だな。

私が一歩後退りすると、男が一歩前進して来る…。

ジリジリと後退って行くと、もう逃げ場は無い。男と木に挟まれてしまった……。


男がゆっくりと手を伸ばして来る。

私は我慢の限界だった…。顔が痛いがしょうがない。乙女の貞操の危機なのだ!有らん限りに叫んでしまった。


「キャーキャーキャー…変態っ!誰かっ…誰か助けてぇー嫌っ!!触らないでよっ!!!近寄らないでっ!息もしないでっ!キャーキャーキャー…」


私の余りにも大きな声で、樹にとまっていた鳥は飛び立ち馬はいなないた……。正に阿鼻叫喚である。


「ちょっ……おまっ…落ちつけっ!!!」


男が私の口を抑えつけようとして来る。

触らないでって言ってるでしょ?



と、そこに遠くから何か響いてくる……そう、あれは蹄の音?パニックに陥っていた筈なのに、その音はハッキリと聞こえた。


パカラッパカラッパカラッパカラッ……。


近づいて来る。極度の混乱と興奮…顔の痛みのせいで、霞む視界に映ったものは…白馬に乗った王子様でした。霞んだ私の目で見ても分かる程の物凄い美貌です。キラキラとした光のエフェクトすら、見えます。


諦めなければ夢は叶う……私はその時そう思いました。


「た…助けてぇ。へ…変態に襲われていますっ!」


情けないないことですが、既に私はグロッキーでした。叫んだ為、喉はガラガラ、顔の痛みも半端じゃない…。そのため意識が朦朧となってました。


「女性を襲うとは…何て非道な…」


「いや、襲ってねーし」


「襲っておるではないかっ!彼女は助けてと泣き叫んでおったのだぞ?しかもこんな……可哀想に…腕を縛って、顔までこのように腫れ上がるまで殴るとは……正に外道の諸行よな?」


突然表れた可笑しな人物(?)に護衛兼御者男は慌てて言い募った。


「だから、勘違いだって…。この娘は俺の村の村長の息子に嫁入りする為に連れていく途中で……」


「待てっ!浅はかな嘘を付くで無い。何が花嫁なのだ…花嫁ならば、何故花嫁衣装を着ておらず、あのような囚人が乗るような馬車に乗って来ておるのだ?何よりもまず、あの縛られた腕を見て誰が襲ってはいないと、納得するのだ?」


正論過ぎて、言葉が出ない……。いや、事実は違うが信じてはもらえないだろう…と護衛の男は思った。冷静になって客観的に考えれば、自分もこのような場面に出くわしたら、そう思うであろう……。


こんな面倒くさい事になったのも、あの村長のバカ息子のせいだ……。何が後妻は若い方がいいだ?バカか?ああ、バカだったな……。

疲れたため息を吐いていると、突然表れた可笑しな奴が娘を抱き上げて、乗せた。馬の部分(?)に。


「この娘は私が預かる。異論はあるまい?」


そう言うと来た時同様に蹄を鳴らしながら、去っていった。


パカラッパカラッパカラッパカラッ……。


「娘は盗賊に拐われた事にでもするか……」


護衛兼御者の男は、今後を思って小さく合掌をしたのであった。




***




時間が立ち夜になる頃、私は目が覚めた。

顔と喉と両腕が鈍く痛む。私が起きたのは綺麗な部屋のベッドの上だった。


状況が分からず一瞬慌てるが、優しく声が掛けられた。


「もう大丈夫だ。賊はおらぬ。私が助けたからな」


声のする方に顔を向けると、あの時見た美貌の王子様が微笑みを浮かべて私を見ていた。

むっはぁ~。夢じゃなかった!いえ、本物?幻じゃないわよね?

恐る恐る王子様に向かって手を伸ばす。

王子様は優しく私の手を握ってくれる。夢じゃない…現実だ。


「まだ顔の腫れが治まらぬな?もう少しゆるりと休め」


私の頭を優しく撫でてくれる…。ポ~っと見惚れていると、王子様を呼ぶ声が部屋の外から聞こえてくる。


「王子~グウェンダル王子~!国王様が御呼びでございます」


「分かった。直ぐに参るとお伝えせよ」


本当に王子様だったんだ……私が思ってるだけじゃ無いんだ!!夢が叶うのでは……?ヒャッフ~内心とても喜んだ。後はプロポーズよっ!バラの花束よっ!妄想が現実に……………。笑み崩れそうな私の顔が、ピタリと固まる。何故かって?

見てしまったから……。

この部屋を出る際、立ち上がった王子様の下半身を………。



馬だ……。馬だね……。ううう…馬ぁ~っ?

えっ?い…何時から?最初から馬だったっけ?う~んと…最初に会ったのは……あっ!?意識が朦朧としていて、目が霞んでたわっ!キラキラしい顔しか見て無かったわ……。

じゃあ、あのパカラッパカラッってまさか、王子様の蹄の音…だったの?



私の理想の王子様は亜人種のケンタウロスの王族だったみたいです……。

ビックリはしたけど、嫌じゃない…嫌じゃないぞ?寧ろロマンチックじゃないかしら?


禁断の異種族恋愛……甘美な響き……。それも有りだわ!乙女の妄想力は伊達じゃないわっ!これも想定内よ。萌えるシチュエーションだわっ!イケるっ!!



私の私による私の為のロマンティックラブストーリーがここから始まるのよ!絶対逃さないわっ!ドリームキャッチャーだわっ!

気合いを入れるため、私は痛む腕を雄々しく天に振り上げた。



ぐぎょりっ。



「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ~~~~」



嫌な音と、モンスター並の断末魔が豪奢な室内に響き渡ったのであった………。




この残念な少女からは、きっと逃れられない。王子よ……御愁傷様である。合掌。




















護衛兼御者の男が合掌したのは、果たしてどちらにだったのか?まぁ、お好みで読んで下さいませ…。



オマケ【とある日のひとこま】


「王子~?グウェンダル王子~?どこに行かれたのですか~」


「王子…例のお嬢さんが探されておられますが?」


「うん…。その様だね?」


「分かっておいでならば、応えてあげれば宜しいのに………」


「まあ、そうだね………」


返事はすれど、行動には起こさない王子に、近くにいた兵士がハスハを呼ぼうとしたその瞬間。


「全く…オーイお嬢さんっ……モガモガ……」


素早い動きで兵士の口を塞ぐと、王子はハスハの方にチラリと視線をやった。するとバッチリ目が合ってしまった。


ニコニコと微笑みながら近寄ってくるハスハの両手には、毒々しいまでの濃い紫色の物体が乗っていた。


「王子?そちらにいらっしゃったんですね?今日こそ食べて頂きますわっ!この、私の愛と根性と呪いが入ったメロメロクッキー8号をっ!!」


ハスハが王子に向かってメロメロクッキー8号なる物体を大きく振りかぶって投げ付ける。


「うわあっ!危なっ!?」


咄嗟に王子は、近くにいた兵士をガードに使う。


「なっ?王子っ?なっ何をっ…ぶえっ…!……もぐもぐもぐも…………………」


ハスハのコントロールは中々のものであった…が、入ったのはガードに使われた兵士の口の中であった。暫くもぐもぐと兵士の咀嚼音だけが辺りに響いていたが、突然兵士がビクビクと震えだし、あまつさえ泡を吹いて地面に倒れ込んだ。


「やはり…今回も危険なクッキーであったか……」


ハスハが作ってくれる料理は、まず見た目が毒々しかった。そして食べると気絶するほど不味かったのであった。

労せず気絶させることが出来るため、医療現場では重宝されて居るようだが、常人には恐ろしい劇物と、恐れられていた。


「ちっくしょうっ!!今回も失敗かぁ~。次は王子限定で、追尾機能があるメロメロクッキーの開発でもしようかな?絶対に王子を私にメロメロにしてみせるんだからっ!!」


気合いを入れて去って行くハスハを見ながら、王子大きな溜め息を吐いたのであった。


「はぁ~~~~~~~。どうしてこうなってしまったのだろうか?」


王子の苦悩と、ハスハの乙女の夢…というより、最早野望(?)は、叶う日が来るのでしょうか?

……………それは誰にも分からない。作者も知らない。





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