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僕の人格
毎日が平穏で、全てが手に入ってしまうなんて夢のような話だ。
でも実際過ごしてみればわかる。
それがどれだけつまらなく息がつまることなのかが。
ある時気が付いてしまったんだ。僕はみんなの憧れのギリシャ神話のオリンポス十二神「アポロン」なのであって、僕自身ではない。僕自身に人格はない。
みんなが求めているのは神話の中の「アポロン」。
それは僕であり、僕自身でない。
求められているように見えて実は誰も本当の意味で僕のことを求めていはない。
これがどれだけ虚しいことか。
周りは常に偉大なる太陽神「アポロン」をもてはやし、甘やかした。
各々が「アポロン」の在るべき姿という色眼鏡で僕を見た。
そして僕もまたそれに流されていた。
初めは僕も満足していた。いや、気が付かなかった。
僕は僕で今まではそれが僕だと思っていた。