ぼくはアポロン
言い訳じゃないけど、昔は理想の青年像と言われただけのことはあったんだ。「困っている人に愛の救済を!」こんなことを平気で言っていたし、行動に移せていた。あの時の僕は例えるならこの世界の美しいものだけを集めた愛の塊だ。いや、さすがに冗談だよ。ちょっとは笑ってくれ。だけど本当にこれに近い存在だったとも正直思う。
いつからか僕は幸せというものを感じなくなっていた。いや、幸せとか言ってる場合じゃないんだ、刺激すらも感じていない。
どこで、何をしていても、つまらない。楽しくない、何も感じない。こんなつまらない毎日に嫌気がさしていたんだ。
幸せを感じたいなんてそんな贅沢は言わない。どんなに小さな刺激だって構わないんだ。少しの違いでいい。
争いごとを好まない僕は、他の十二神の内輪揉めさえも一切関わったことがない。まぁ好まないっていったら聞こえがいいけど、単に面倒だから嫌いってことだ。
どんな時でも中立を保った僕に争いなんてはものは全く縁がなく、当然のことながら他の神々からなんの恨みも買うこともなかった。いたって平穏だ。
恋愛に対しても、何不自由したことがない。ギリシャ神話の理想の青年像、それに加えて生まれつき音楽の才もあった。こんな僕を周りの女神や精霊たちが放って置くわけがない。
内輪で特に諍いはなく、周りはといえば皆オリンポス十二神である僕に常に羨望の眼差しを向けていた。
僕は常に周りの注目の的だ。
僕の一言で周りが動いた。
世界は僕中心に回っていた。
これの何がつまらないのか?