考の道
目の前には形の整ったきれいな顔が一つ。たったそれだけ、そのたった一人が目の前にいるだけのこの部屋にいる私。でもどうしてなのか、心が重苦しい。呼吸がしづらくなるほど胸が締め付けられている。
不意に私の目の前の顔が動いた。私は唇に何かが触れる感触があった。柔らかい。彼の唇が私の唇に重なっている。それがさらに私の胸を締め付ける。
私はあなたをどう思っているのだろう。好きなのか、愛しているのか、両方とも同じ言葉のようだが微妙に違って聞こえる。好きとは相手がいなくてもいいが、いてくれると嬉しい程度の愛情表現であり、愛しているとは相手がいないと悲しくなる、苦しくなる、そんな違いだと私は考えている。そうだとすると私は彼を愛しているのだろう。
しかし彼は私の目の前に存在していて、口づけさえしてくれる。それなのに私は胸が締め付けられるような感じだ。嬉しいからなのだろうか。悲しいからなのだろうか。それとも怖いからか。もしかするとすべてかもしれない。
今は私の前に彼がいてくれることで嬉しい。だがしばらくして彼が私の側から離れてしまうのかと思うと怖い。そしてそれを考えると悲しい。そんな感じなのだろう。
そうだ。私は彼を愛している。しかし彼は私を愛しているのか。私の単なる思いこみで、彼が私を愛していると信じ込んでしまっているのか。そうだとしたら私の恐怖と悲しみはいずれ訪れることとなるだろう。
そう考えている間に彼は唇を離し、私に微笑んだ。別れるときはこんな感じになるんだ、ふとそう考えてしまっていた。
自分以外の生き物の考えていることはわからない。だからこそ喜怒哀楽が存在する。ほかの生き物の考えがわかってしまったら。生物はすべてを嬉と楽へ進めようとするだろう。だから我々を作った神は他の生物の考えをわからないように世界を作り上げたのだ。
それ故に不本意なこともしばしば起こっている。ただ、それを乗り越えられる力が私には必要なのだ。だから私は、いつまでも彼を愛し続けよう、そして私が彼に愛されていないのだとしても、これから彼に私のことを愛させて見せよう。それが私の考の道だ。
このような駄文を読んでくださった方に感謝します。これからもっといい作品を書けるように努力したいと思います。