life《5》:このクラスにいるのは問題児《ブレイバー》ばかりのようです。《1》
休み時間になると、待ちかねていたように、クラスメイトたちが、わたしの周りに集まってきた。
――ゾーンか!?←[違います!]
「ねえねえ、アカナ?」「ほんと?アカナ?」「ほ、本物?」
さっき返事しましたよね?
「なんて呼んだらいい?」 「か、叶で……」
「貴様の属性を教えてもらおうか」 「ぞ、属性!?え、えーと、炎かな?」
「△◎※Ωβ――」 できれば日本語でお願いします!
その後も、質問?が絶えない。わたしは後でゆっくり質問タイムがいいのだが……。
そう思って教室を見渡していると、廊下側の窓を開け、教室の様子を伺っている大勢の生徒たちが……。
噂がもう広まっているようだ。
廊下からわたしを呼ぶ声が聞こえてくる。なんかホラーっぽい。他教室の生徒が集まるのは、さすがにヤバイと思い、この場をどうしようかと考えていると、
「ねえねえ、今度一緒に服買いに行かない?」
そう言って横から抱きついてきた女子がいた。今のは、おそらくみんなが言おうとしていた言葉……。
その女子に周り批判の声が上がる。それにも怯まず、抱きつく力を強くしてくる。
え、えーと?柔らかくて、なんかいい匂いがするんですけど……。
その女子が耳元で囁く。
「読者モデルなんだから……いいよね?」
うっかりしていると理性が飛びそうだ。たたでさえもアレな時期なのに……。狐的にヤバイ。
そう、この女子が言うように、表社会での仕事は読者モデルだ。しかも、女子向けのファッション雑誌の読者モデルだ。
確かに見た目は女っぽいかもしれないけど、なんでこうなったんだ!!
「はぁ……」
電撃転校生の隣の席の生徒こと――天乃花音は大きな溜息をつく。
う、うるさい……。
転校生の周りに集まり、質問をしている声がとてもうるさい。
確かに『アカナ』と言ったら有名だけど、これからゆっくり質問していけばいいのに……。
そう思うのは、隣の席のわたしだけだろうか?
『アカナ』と言えば有名な読者モデルだ。可愛い男の娘で、男子向けではなく、女子向けのファッション雑誌で読者モデルをしているとかなんとか聞いたことがある。それを聞いた後に雑誌を買ったことがある。けっこう可愛かった。
チラッと横を見る。
学級委員長――紫邦真理亜、通称《真理》――に抱きつかれて困っている。頬を染めて恥ずかしがっているところがまた可愛い。わたしに『アカナ』の情報を教えてくれた子は『恥ずかしがっている所がまた可愛いんだよね』と言っていた。
その転校生の真理に抱きつかれ、頬を朱色に染めている様子は、
た、確かに可愛い……。
女子から見ても可愛いと思えてしまう。その様子をボーと見ていると、唐突に真理が『アカナ』の耳を甘噛みした。
え?ちょとっ、真理なにしてんのッ!?
転校生はどう抵抗したらいいのか困っている。
「え?ちょっと――」
「いいじゃん♪いいじゃん♪あ、次の授業は移動だ。一緒に行こッ♪」
甘噛みをやめてそう言い、真理は転校生に抱きついたまま、どこかに連れて行ってしまった。
ご、強引だ……。
それに続き、周りに集まっていた生徒も移動し始めた。
「体操服に着替えて《特別授業》だよ」
仲良い女子生徒――土御門春香が親切に声を掛けてくれた。一番最初に仲良くなった親友。入学から約五ヶ月、共に助け合って過ごしてきた親友だ。ちなみに『アカナ』の情報を教えてくれたのも春香だ。
教室にある時間割を見る。
一時間目《特別授業・剣術》
そうだった、新設からまだ一ヶ月、忘れていた。
この学校に《特別授業・剣術》が新しく新設されたことを――。
ここであることに気づいた。
あ、まさか真理、二人で着替えていたり……。いや、さすがにないか。
声を掛けてくれた春香と更衣室に行こうと歩き出す。
「剣術、メンドいんだよね」
「そうだよね」
他愛のない話をしながら……。
『剣術科』新設の本当の意味を知らずに……。