life《3》:影が狙う獲物は?
薄暗い部屋に二人の影がいる。
一人は高級そうな椅子に座っていて、もう一人は椅子との間にデスクを挟むように立っている。
手入れが行き届いていないのか、時折、埃が舞っている。
両者の間に沈黙が流れる中、椅子に座っている方の影が口を開いた。
「葛ノ葉が編入するとの報告、聞いたか?」
低く、冷たい声だ。
「ああ、聞いている」
立っている方の影は肯定した。こちらの声も低く、冷たい。
立ちかげ(立っている方の影)は腕を組んで悩む素振りを見せ、重々しく口を開いた。
「……どうする?」
その慎重さは事態の深刻さを表している。
「さて、どうするか……」
座り影(座っている方の影)も悩んでいるようだ。
数秒の沈黙の後、立ち影が口を開いた。
「『悪魔憑き』に襲わせるか?」
立ち影が提案する。
「……そうするか」
数秒悩んだ後、座り影はその意見を採用した。
「だが、『悪魔憑き』はいるのか?」
次に計画の準備について話を切り出す。
「大丈夫だ。全て任せておけ」
立ち影はそう言い、部屋を後にする。
――体を影に変えて、影の中を移動して。
部下である影(立ち影)がいなくなったことを確認すると、
「あと少しです」
座り影はいきなり声を出した。
「あと少しで世界は変わりますッ!」
神を崇めるかの様に。