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プロローグ《1》:by15年後《1》
――運命とは残酷である。
今でも夜寝る前、目を閉じれば浮かんでくる光景がある。
浮かんでくるのは数々の思い出。
中でも一番よく思い出す光景がある。
満月の光が降り注ぐ山奥。木々と暗闇を背景に燃え上がる日本家屋。逃げ惑い悲鳴を上げる人々に、辺りを破壊し尽し叫び声を出す人々。
これを思い出すたびに背筋が粟立つ。
わたしが十五歳だったあの晩からは、十五年の月日が流れた。その間、本当にさまざまな出来事があった。新しいこと、楽しいこと、悲しいことなどたくさんあった。
そのことは、わたしの知っている世界――この世界を根底から覆した。
それでもあの日の事は鮮明に覚えている。その日はわたしが世界を変えた日だからかもしれない。
人生の中でとんでもないことをしてしまった日。
わたしはあの事件のことを《叶玉事件》とよぶことにした。