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MOON Lagoon  作者: seia
4章
39/40

 ごたごたの中、サキチの身を案じたキリはスイを伴って支部の玄関を出ると――――。


 サキチもまた入院先でのゴタゴタで危険を察知して支部へ駆けつけていた。


 そしてキリはサキチとスイと共に、二人が足を踏み入れたことのない地下へ連れだった。



 ◇  ◇  ◇


「はー、なんで? なにこの機械だらけの部屋。いつの間に揃えたわけ?」


 矢継ぎ早にサキチはキリに言葉を投げかけた。

 サキチ、キリ、そしてスイの目の前に広がるのは、電子機器が放つ緑や青、赤色のランプの海が広がる部屋だった。


「驚いた?」


 フフと含み笑いをしながらキリは壁面にある照明スイッチを指先で軽く押した。すぐに明るくはならず徐々に部屋は作りだされた自然光の色に包まれた。


 そこには、キリより頭一つ部分高く情報をバックアップさせるためのディスクアレイが十基ほど並んでいた。

 そばには熱がこもらないように冷却装置が設置してある。そのおかげで部屋は適度な温度に調整されて、熱量を感じることがない。


「驚きますよ、キリさん。これで一体なにをしようとしていたんですか?」


 スイはぐるりと見渡してから尋ねた。こんなに機器を揃えられるなんて……どこから資金を調達してきたのだろうか、とスイもサキチも疑問を抱いた。


「スイくん。しようとしていた、じゃなくて実際これから動くんだよ、僕らは」


「え……」


 ぽかん、とスイは口を開けたままキリを見つめた。


「んじゃ、いよいよなんだな」


 腕まくりし、ワクワクした様子でサキチはスイの横に並んだ。この時をどれほど待っていたか! 焦る気持ちを抑えるのに大変だった。でも……隣にいるもやしみたいな白銀のヤツはピンときてないのか? サキチは自分の隣で口を開けたまま突っ立ているスイを見ながら思った。


「そう。時はいま、だと思ってる。問題はミサがここにいないことなんだが……。彼女が無事にクレッセント社内にいることを信じて実行するしかない」


 一抹の不安がよぎりながら、キリは計画の変更がないことを断言した。もし自分がミサと同じ状況に置かれたら、ミサも自分と同じことをしただろう、とキリは踏んだのだった。


「ったく、なんであの人は一人で行っちゃうんだろうね。まったく」


 肩をすくめサキチは呆れたように言いながら、デスクトップパソコンが並ぶデスクに近づいた。背もたれを持ち、座椅子部分をクルクル回しながらキャスター付きの回転椅子にどかりと座った。


「んで、俺はなにすればいいの?」


「サキチはスイくんと一緒に地下通路を使って、地下にあるクレッセント社の主電源を落とすこと。そのあとは永眠装置スリーピングドールの様子を確認。運び出しが可能かチェックすること。まぁまずは電源落として無事社内に潜入できるかが肝だ。諸連絡はこの無線で」


 そう言うとキリは壁際のラックにあったケースから、灰色の物を取ってサキチ、スイそれぞれに手渡した。


「……なんですかこれ?」


 スイは不思議そうに手渡された物体にニョキリと生えている細長い棒をつまみ上げながら問いかけた。手の平サイズだけれど、なんかゴロっとしていて見栄えがなんだか悪いなぁ。それに上半分は網目状になってていて初めて目にする物だけど、一体なんだろう。摘まんだ棒状部分を持って物体をゆっくり揺らしながらスイは思った。


「無線機だ。周波数を合わせて使う」


「シューハスー?」


「なんか新しい菓子の名前みたいだな」


 サキチもサキチで手渡された無線機という初めて見る物体をむやみやたらにトントン、と指先で突っついている。


「……二人ともあまり乱暴に扱わないでほしい。スイくんはともかく、サキチは近代史の授業で習っていると思うんだけどね」


「え? あ? ん――」


 思い出そうと腕を組んで考え込んだが、自分が授業中寝てる姿しか思い出せなかった。


「ま、まぁ簡単に言うと、今は薄型になったタブレットで連絡を取り合ったり、高価なものだと腕時計や眼鏡に同じような機能持たせて、ネットワークに繋げるようになっているだろう?」


 二人は余計なことは言わず、頷いて先を促した。


「昔は……。僕やミサが生まれるほんの数年前までは、薄型が主流じゃなかったんだよ。携帯電話って言ってもう少し分厚くて手の平サイズに収まるのが多かったんだ」


「じゃ、これが携帯?」


「サキチさん……、キリさんの話し聞いてました?」


 やんわりとスイはサキチの言葉尻を取った。


「あ、あぁ聞いてたよっ。ただ無線機も携帯電話も同じ形してるのかなって思ったんだよっ」


 プイと子どものように頬を膨らませてそっぽを向いた。


「とにかくこのトランシーバーは今じゃ貴重なものだから、大切に扱うこと。アナログすぎてクレッセント社の傍受に引っかからないからね」


 キリの断言的な言い方にスイは首を傾げた。


「随分きっぱり言えるんですね」


「ミサと社内で連絡するとき、これを使っていてね」


「え?」


「スイくんが不思議がるのは当然といえば当然だね」


 キリの言葉が信じられないというふうにスイはキリをじっと見つめてすぐに視線を外し、そのあとは思案顔になって、という表情を繰り返している。ミサさんと社内で通信? どうして? 普通にメールや携帯端末で連絡取れば済むことなのに。どうして? キリの言っている意味を理解しようと懸命に頭を働かすも、納得いく結論が導き出せなかった。


「……こいつピナとどっこいどっこいで、なんかこっちの意図してること伝わってない気がするんだけど」


 キャスター付きの回転椅子に座っているサキチは座ったままくるくる座椅子部分を回してみたり、足で漕いでキリとスイの前をシュシューと行ったり来たりさせながらポツリと呟いた。


「意図していること?」


 右から左へ風のように言葉が流れたのをスイは聞き逃さなかった。


「それってもしかすると……、キリさんやミサさん、そしてサキチさんたちでなにかを成し遂げようとしていて、それに僕が必要ってことですか?」


「おぉ、なかなか鋭いな。まぁ、近からず遠からずって感じだな」


 うんうんとサキチは頷きながら少しだけ唇の端を持ち上げた。


「ミサさんもハッキリ教えてくれなかったんですが、……そろそろ僕にも教えてほしいです。僕の力が必要なら余計に」


 オブラートに包まれて話の核心がわからなくてスイは悶々としていた。ぼんやりした言い回しに少し飽き飽きしていたのだ。


「そうですね。わたしたちに残された時間も少なそうですし、そろそろお話しましょう」


 ここからはスイくんとサキチの連携、そして三人のチームワークが要となるのだから、少し噛み砕いて説明しなければ。キリはスイとサキチの向かい側に座り、ゆっくりと深呼吸をしながら何から話すべきかいま一度整理した。


※ディスクアレイについて※

書いてる本人、ものすごくIT用語に弱いです。一応下記のサイトに載っています上部を参考にさせていただきました。

■ディスクアレイ/ディスクストレージシステムとは(URL→http://storage-system.fujitsu.com/jp/lib-f/tech/beginner/diskarray/)

<---以下引用部分ーーー>

ディスクアレイ(Disk Array)とは、ハードディスク(磁気ディスク装置)を複数搭載し、大容量ディスクとして扱う技術、装置を指します。


イメージ映像としては飛んだ先にあります、縦長のどっしりしたものであります。

ただどうやって表現していいかわからないので用語を使わせていただきました。

もっと違う表現があるよ、とか、別の用語があるよ、とかアドバイスありましたら教えてください。


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