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MOON Lagoon  作者: seia
3章
31/40

 もう一人じゃない。

 学校に来ているお友達と同じように"家族"っていうものが私にもできたから。



「あんまり会話はないけど、必要なものにお金を出してくれます。レンジでチンした温かい食べ物を用意してくれるときもあれば、自分で買いに行って自分の部屋で食べることもあります」


「あなたの家族はどんなですか?」っていう先生の質問に私がそう答えたら皆目を丸くしていたの。


 どうして?


 発言が終わるか、終わらないかのときに「そんなの家族ってよべないよ」ってクラスの子に言われたの。


「どうして?」


 って聞いたら、


「お母さんってさ、ふつうあったかいご飯作って、一緒に食べるんだよ」


 て言われた。また別の子は


「お母さんいない子だっているんだから、その役目はお父さんだったり、おじいちゃんおばあちゃんだったりするよ」


 と続けてきた。


 意味がわからない。


 ご飯ってお母さんやお父さんやおじいさんおばあさんが作って、一緒に食べることなの? 袋から開けて電子レンジで温めるて食べるのは違うの? 一人で食べるのはおかしいの?


 思ったことを質問したら教室がすごく騒がしくなってしまったの。


 私変なこと言ってしまったのかな? 時々私は皆を驚かせてしまうことがあるから、またやってしまったかな、と思ったけれど、先生が横に立って


「名取さん、よく正直にお話してくれましたね。もしかすると色んな事情で、名取さんと同じように皆さんの中でも一人で食事をしているお友達もいるかもしれません。その時は、恥ずかしがらず先生に教えてくださいね。小さな力かもしれないけれど、一緒に解決していきましょう」


 とにっこり笑って言ってくれたの。困ってる私を助けてくれたのかな? 心がなんだかぽかぽかして嬉しい気持ちになったのを覚えている。


 でもね、先生私、学校から帰ったら、”家族”に叩かれたの。

 一回だけなら痛さも我慢できたの。でもいっぱい。最初はほっぺただったのが、お腹や脚も蹴られたの。「やめて」って言ったのに、聞こえていないのかやめてくれなかったの。ねぇ? どうして? 私なにもしてないよ? なにか私、悪いことしましたか?


 答えがなくて。悲しくて、知りたくて、体中痛いのを引きずって、眠ってる二人の手を優しく握ったの。どうして二人が並んで寝ているのか不思議でしょうがなかったけど。夢になにか隠されてるんじゃないかな、って。


 でもあのとき、どうして私は二人の夢を同時に見れる、と思ったんだろう? ピナは沸々と疑問がわいてきた。するとふっと今見ていた光景が大きく波打ったかと思うと、ぱらぱらと土壁が崩れるように、ゆっくりと形を崩していった。



 現れたのは――――。


 ――――ソレ ハ キミガ エラバレタカラ


 背後からやけにはっきりと聞こえ、ピナは振り返った。そこには薄墨色のようなぼんやりした人影のようなのが揺らいでいた。


「だれ?」


 ――――キミハ シッテルハズダヨ


 声の主は、そう断言すると影からうねりがある触手のようなのを左右に生えさせると、ゆっくり大きな円を描きだした。薄墨色、黒色、と変化し最後は赤黒い色の円になった。ピナは体を震わせ、慌ててかき抱いた。この色は危険、だめ。見ていてはいけない。けたたましい非常ベルがどこかで聞こえるような気がした。しかし、抗うことはできずにあっという間にピナの世界は赤黒い色に呑まれていってしまった。



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