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MOON Lagoon  作者: seia
2章
12/40

 体が沼にはまったように、目が覚めても体が思うように起き上がれない。

 腕で必死に支えるも、力なく崩れてしまうピナだった。

「目、覚めたか?」

 横から急に声がしたので、慌てて首を横に向けた。

 視界がはっきりしないのか、ピナは何度か瞬きをして目を細めた。

「……サキチくん?」

 粗雑な言い方は彼しかいないだろうと踏んでいても、顔をはっきり見ることができないので疑問詞がついてしまう。

「そうだ。……。大丈夫か?」

「……んー。なんかサキチくんの顔がはっきり見えないんだよね」

 そう言いながら目をこすり、もう一度瞬きをした。

 ぼんやりと霞がかかったような視界の悪さにピナは首を傾げた。

「……よく見えないのか?」

 薄暗く揺らぐシルエットに頷いた。

「キリを呼んでくる」

「キリ……さん?」

 顔をしかめるピナを残してサキチは部屋をあとにした。

 残されたピナは、キリ、という名前に覚えがあるような気がしてならなかった。

 思い出そうと記憶の断片を探ろうしたピナは、頭の片隅が焼け付くように痛みだし、ベッドに(うずくま)った。


「……ナ? ピナさん? 大丈夫ですか?」

 蹲り、猫のように背を丸めるピナの肩を軽く叩いた。

 サキチの声色と正反対で思わず体を瞬時に反転させた。

「誰ですか?」

 疑い深く慎重にピナは尋ねた。

「私です。キリです。わかりますか?」

「キ……リ……」

 再び名前を口に出してみる。言い慣れているような、いないような奇妙な感覚に囚われた。

「私の顔が見えないのですか?」

 キリ、という人が続けざまに話しかけてくる。親しい人だったのかな? 声がする方に目線をやっても、捉えるのはサキチの時と変わらず、薄暗いシルエットがただずんでいるだけ。

 代わり映えがしなく、ピナは眉間に皺を寄せた。

「……疲れているのでしょう。もう少し眠りましょう」

 低くて安心する声、心地いい。もっと声を聴いていたいのに……。しかしその想いは叶わず、両耳から夢へ誘う音が聞こえてきてピナの瞼が閉じていった。


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