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今や上流階級のステータス、などと言われる代物がある。
自分の夢で、思うがままに自分自身を投影させ動かすことができるシステム。
その名は「バルハン」
今ではもう、なぜ、このバルハンシステムが構築される必要性があったのか知る者は少ない。
「はぁぁぁ……。どうしよう」
閑静な住宅街の一角。鋼色した門扉が重々しく思わせる。一体この奥は、どんな造りをした家屋なのだろう、と想像にかき立てられるような。
その家の門前で、行ったり来たりを繰り返す一人の女子高生がいた。
どうしよう。
あぁぁ、どうしよう。
というか、どうして私なんだろう。
下ばかり見ていた視線をふと空に向け、眩しい陽光に目を細めた。
失敗だらけで、成績も下から数えた方が早かった私が、どうして支部の……しかも「バルハン」に潜入する方に選ばれちゃうなんて。
成績が成績なのだから、システム構築関係に就ければいいなって思ってたのに。
一体何があって、エリートしか進めないはずの方に決まってしまったの?
はぁぁぁ。
何度目のため息と、往来する足取りだったのだろうか。
「プッ」
突如として少女の後方から噴き出した笑い声が聞こえ、彼女はハッと振り返った。
「君さ、面白い顔しながら、行ったり来たり繰り返してるけど、うちに何か用?」
笑い声を必死で堪えながら尋ねる男子高校生がいた。
「え?? え?? え? なっ!?」
えっ……? いつからいたの?
面白い顔、なんて言うくらいだもん、今さっき来たわけじゃ……ないよ……ね。
声をかけてきた男子高校生を恐る恐る見た。
グレーのブレザーに茜色と濃紺のストライプのネクタイ。
……あ、悪名高いって言われてる高校の制服だ。
ネクタイを緩めて、Yシャツのボタンちゃんと上まで閉めてないし。
おまけにYシャツ、ウエストからだらしなくはみ出して。
……それはそうと、なんでこの家の近くにいるの?
ジロジロ見られる視線を少年は不快に感じつつも、それ以上尋ねることはなかった。そして、少女が入るかどうか迷っていた家のインターホンを、彼は迷いなく押した。
「……遅いです。何度言ったらわかるのでしょうか? 時間厳守が基本ですよ、サキチ」
数秒経ってからトーンの低い声がインターホン越しに聴こえた。
え? ”サキチ”? この人が?
ウソでしょ。
ぎょっとした目つきで、今流行りの毛先を遊ばせた茶髪の彼を見やった。
「わりー、わりィ。だってさ玄関先で変な女いるんだもん」
その視線には気付いていないようで、少女を指さして言った。
暫くの間沈黙が続いたが、
「……その方が新しい補充員ですよ」
と、特に感情が伺えない声色で、端的に答えた。
「え……」
少年は、だらしなく持っていた薄っぺらい通学鞄を思わず落としてしまった。
―――このおかしな女が?
拾いながら下から上までじっくりと見た。
「コホン、とにかくそこにいる彼女を連れて中に入ってください」
インターホン越しの人物は、わざとらしい咳払いをしつつも冷静に語りかけた。
「……あ、あぁハイハイ」
手を軽く顔の前でひらひらと振って了解の合図とした。そしてサキチは、いまだ呆然としている彼女の手首を掴み前へ進む。重厚な門扉が音もなく開き、二人を招き入れた。
実際のゲームをすることができないので、わかりませんが、とにかく妄想まっしぐらで進めていこうと思っています。
2013・8.2ほんの少し修正