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この手に  作者: 詞乃端
振り続ける雨
1/11

過去という名の夢


地獄というものがあるのなら、その光景はまさにそれ。

炭化し、黒くなったヒトガタが、累々(るいるい)と転がる焦げた大地。

この身の上に広がるのは、夜の如き暗さをたたえた曇天どんてん

――雨が降る。

天は、何を想い、紅蓮ぐれんに焼かれた地に、その涙をこぼすのか。

ちてくるしずくは冷たく、彼から温もりを奪っていく。伸ばした手は、しかし、何もつかむことはない。

何もないことを清らかとするのなら、確かにこの場は清浄といえる。彼以外の命はなく、無機質な雨音が支配するのみ。炎も水も、古来より浄化の象徴であったという。ならば、絶対の火焔かえんにより浄化されたはずの、この地に降る雨は、一体何を意味するのか。

――雨が、降る。

本当は、知っている。これはただの現象でしかない。この光景の元となった灼熱しゃくねつが気流を産み、その気流が雨雲を呼んだのだ。

だから、これは下らぬ感傷。

――雨が振り続けた。

殺戮さつりくの為の道具のままなら、きっと楽だったのに。

……けれど、自分は、咎人とがびとにしかなれない。

雫が、ほおを流れる。

それは涙などではなく、己の体温を奪った雨水。


 Copyright © 2011 詞乃端 All Rights Reserved. 

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