第九話 企みと見透かす力
黒髪王家の王視点とメラル殿下の視点もあります。
黒髪王家の支配する王国はクロス王国です。
・・今まで名前出すの忘れてました、すいません。
王は惹きつける魅力を持つ呪い師に占ってもらうことで
呪い師に兄弟たちを惹きつけようと企んでいた。
政略結婚、それで一生涯のパートナーは作れまい。
純粋な恋慕こそが信頼を生み、支えとなる。
かけがえない存在となる。
その存在こそが良い方向へと導く。
彼女には支えとなる相手を見つけ、くっつけろと命じはしたが
彼女自身が誰かのパートナーになって欲しかったのだ。
特に、あのクロセキに。
そして魅力を大いに発揮する占いーー呪いを
今日はやってもらうことにしたのだ。
***********************クロセキ殿下
広い大きな部屋。
天井には家具を照らす輝かしいシャンデリア、
窓にはレースのカーテンがしてあり、かすかに光が差し込む。
その傍にテーブルがあってその上にセラフィの魔道具があった。
椅子は二つ。テーブルを挟んでの位置ではなく
テーブルでの隔てがないところで向かい合わせとし座る。
既に彼女は座っていた。
ーー朝からやろうというのか。
セラフィは俺の存在に気づき目を見開く。
俺は早く来てしまったようだ。
まだ兄貴たちはきていない。
「・・・」
「・・・」
しばし気まずい沈黙。
「--もう、大丈夫なのか?
昨日はずいぶん調子が悪かったようだが・・--」
俺は沈黙に耐えれなかった。
今までは造作もなかったのに・・。俺も短期だな。
「大丈夫、ですよ。
昨日は魔力切れも起こしていましたから。
しっかり眠ったし今は大丈夫です」
セラフィは少し表情を緩めて言った。
少しセラフィの表情が柔らかくなったのは
気のせいか?・・それとも俺に心を開き始めたか。
「ならーー・・いいが」
俺は安堵した。そして同時に気分が良くなる。
心を開いてくれるのはうれしい。
少なからず信用して欲しいからだ。
ここまで誰かの信用を欲しいと思ったのは初めてだ。
この後兄貴達は来た。
そして呪いが開始ーーされる。
*******************メラル殿下
「では、メラル殿下から、はじめましょうか。
他の方々はーーそうですね、見学しててください。
扉側でご見学してくださると助かります。
では、メラル殿下、椅子へ」
「うん、座るよ」
僕は彼女の言葉に微笑み座る。
ロキたちは壁に背をつけてじっと見学し始めた。
彼女は向かいの椅子に座り、大きな水晶を手に取った。
フワァアアンッ”
水晶を浮き上がる。
そして僕と彼女のハザマにソレは浮かんだ。
「それーーどうするの?」
僕は興味本位で聞いた。
占いはーーそういうものでいろいろみるみたいだけどーー。
「・・・。貴方の“心”を見るのです。
この呪いは心の形、器で、貴方と対の石を選びます。
・・・さぁ。目を閉じてください」
彼女の眼は僕じゃなく水晶だけをじっと見ていた。
僕は言われたとおりに目を閉じる。
真っ暗になった視界にはーー、一筋の深緑の光が差し込んだ。
ぴかーーーっ!
「ぇーー」
思わずビックリして目を開けそうになった。
「あけないでください。
光が見えたでしょう、それが貴方の色です」
彼女の言葉に僕は目を閉じたままそれを見入る。
彼女は水晶に手をかざしているようだ。
耳に入る風の音がそれを教えてくれる。
深緑の光は形となっていく。
そして輝きを増していった。
かたどったのは小さいひし形。
「目を開けてもいいでしょう。
貴方の色は深緑。
鮮やかな緑の輝きを誇っています。
それは貴方の象徴と言えるでしょう。
メラル殿下は、--エメラルド。
この石が対となります。
その形も見えたでしょう?なんでした?」
彼女はすべて分かっていると言う風な口調と
表情だった。
「ひし形ーー・・だった。
ーーそれは何の意味を表すのかな?セラフィちゃん」
思わずそう試すような仕草で聞いてしまった。
「ソレはひし形の形でいつも傍に、という意味です。
そのネックレスを差し上げましょう、今、つけてください。」
彼女はひし形のエメラルドが付いたチェーンを渡してきた。
手に載せられるときチャリンッと音が鳴る。
そのとき触れた彼女の手をもっと触りたいと感じてしまった。
一度、欲しいと思ったら手に入れたくなるのが僕の癖だ。
「・・セラフィちゃん、それ、僕につけてくれないかな?
君が僕に託す石なわけだし、ね?」
大人っぽさのにじませた甘い声、
これで僕は数々の女性を虜にした。
これで彼女もーー。
「・・ぃいですよ」
僕の思惑とは真逆の反応を彼女は出した。
面倒だと言いたげな冷たい口調だ。
「・・・^」
扉の傍にいるロキは何故か笑みを浮かべていた。
「・・兄上めっどこがいいんだ、あんな奴!・・」
アフィラはなんかぼやいてた。
気に入らないみたいだ、セラフィちゃんのこと。
でも、家庭教師にと昨日言ってたし・・
いじめたいのか、あいつは。
そう考えているうちにも彼女はすばやくネックレスをつけた。
そして向かいの椅子に座る。
「では、私と目を合わせてください。
そらしては駄目です、ぜったいに逸らさないで」
そう彼女は言って僕の瞳だけを見つめてきた。
彼女はーー・・光の加減によって瞳の色が変わる・・
不思議な瞳だった。普段は・・紫だ。
そしてじっと見つめる視線は冷たかった。
僕の虜の女性は熱い視線なのに。
そこに興味を奪われる。
そしてどこか、全てを見透かされる気がした。
彼女に全てを見せているかのように。
「・・・」
「・・・」
見透かされる、見抜かれる、覗かれる
そんな瞳だった。感情の色がない瞳でもあった。
あの優しい声は感情などこもっていないのだろうか。
あの柔らかい表情も。・・信じられないくらいに。
「殿下、・・貴方は欲しいと思うもの全てを手に入れたいと
強く願う人、そしてそれを実行する人、そしてーー
優しく、自分の心に嘘をつく人」
「えーー?」
彼女の言葉に僕は目を見開いた。
ーー嘘・・?
僕はーー、僕はーーっそんなことーー
「いつでも一番でありたい、貴方はそう望む人。
そして誰からも信頼され頼られ、注目されたいと願う。
そのために努力惜しまない貴方はすごい人だと思う。
でも、今、心を茨の中のように閉じ込めている深い部分がある。
それが過去の囚われ。亡き母親の真実を知り、二度とその過ちを犯さないために」
「僕はーーっそんなことーーっ!!」
違う、そうじゃない、そんなんじゃーー
僕はーー
「否定はしないで、宝石の輝きを失ってしまう。
認めて、否定すればするほど蝕まれる。
メラル殿下、貴方は貴方です。
他の誰でもない貴方一人だけ。
貴方のその力は貴方のもの、貴方の命も人生もすべて。
だから貴方は人に囚われてはいけない。
貴方は人を捕らえる力があるから。」
「--っ!?
セラフィ・・ちゃん?・・僕はーー」
そう分かっていた。
彼女の言っていることは始めから全部。
ただー・・僕が認めたくなかっただけだ。
自分に嘘をついてそう思いこんでいつしかそれに触れなければ
平気になれると信じて。
「私には貴方の全てが分かる。
欲しいものは手に入らないと気がすまない。
なにがなんでもーー・・そういう強い意志があるのなら
もう貴方には悩む必要はないです。
でも、貴方は根本的に一人で悩む。
一人で全部抱え込んでしまう。
溜め込んではいけない、光が色あせてしまうから。
貴方には信頼ができて頼れて心を預けれるような人に
悩みを打ち明けてください。
多少の悩みはまぁ、私が聞いてあげてもいいですよ
それで気が楽になるのなら。・・仕事の一環でもあるし・・」
なんか、最後・・聞いてはいけない言葉が出た気がする。
まぁそんなのがあろうとなかろうと僕は・・・
「セラフィちゃんには敵わないな^、
僕のこと分かりすぎちゃってるし。
セラフィちゃんの言った通り、僕は
欲しいものは手に入れたいから、
じっくりいただくことにするよ?」
「・・まぁ、頑張ってください」
人事そうに彼女はそう言った。
ふふふ・・僕は意味ありげに笑って
でも真剣に
「僕が今までずっと隠してたこと、
すべて晴れてすっきりしたよ、ありがとう、セラフィちゃん。
君も、僕とは距離をおかずに接して打ち解けていきたいな?」
これは本音の本音。
ホントに感謝してるしホントに欲しいと思ってる。
「・・・・・・・・・・。
ーーー・・・・・・・」
彼女は無言だった。
答えられないのかもしれない。
「セラフィちゃん?間が長いよ?
僕とは無理?」
「--・・つりあいませんよ、貴方とは。
・・さて、クロセキ殿下、次どうぞ?
メラル殿下はこれにて終了です。
悩みとかは次回呪いをしてみましょうね」
セラフィちゃんはそう無表情に呟いて
ロキと変わるよう促した。
どうもセラフィちゃんと壁を感じる。
この壁を壊せることはできないのかな?
それとーー・・警戒心も。
ずっと彼女は心を許すヒトを演じていた。
猫をかぶっていたのだ。
あの冷たい瞳を見て気づいた。
これはどうも、やりがいがある子を選んだと僕は思った。
いろいろと長くなりましたが
王とメラル殿下視点やっと入りました。
うー~む、話が暗く感じる・・次はもっと、かな?
エメラルド:五月の誕生石、富と名声をもたらします。




