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第七話 認めたくないが心は素直でいたい

クロセキ殿下視点です^

俺の名はクロセキ。

神聖学院の中等部に所属している。


俺は王族の祖先の力を最も受け継いでいた。

そのため瞳は赤眼だった。


はっきり言ってほとんどの授業は退屈だった。


どれも低レベルすぎて、な。


だが、そんな暇をもてあましているとき

新しく編入生がやってきた。


そいつは・・そいつの目は嫌々ここに来させられたような目をしていた。


誰も近づけさせないような気を纏い

存在感を薄くさせるように気配を殺していた。


こういう女は初めてだ。


「・・・」


「・・・」


担任は俺の隣にしやがった、そいつの席を。


クラス決めも席もソレ相応の実力がなければ

俺の隣など、・・ありえない。


俺は中等部一の実力を誇っていた。


それが王族の地位向上のためだと思ったし

なにより俺は優越感を感じられた。


だが、それは昨日で終わりだったようだ。


すべて俺の上を平気でいったんだ、そいつは。


俺の中で忌々しい存在となった。


そうして気づいた、その女は俺を視界の中に入れていたことを。


王の差し金か、そう思い当たった。


「お前に聞きたいことがある。

来い。他の者はくるなよ」


俺はそいつの腕をつかんで屋上に行った。


そいつは人間の体温にしては低すぎた。

氷のように冷たかった。


それよりも今は自分より上であるこいつに

苛立ちを感じていた。


「お前は王の差し金か」


「差し金?」


女は眉をひそめた。

心当たりはないらしい。


「・・質問を変える。

お前はどういう目的でここへきた」


「目的?確かにここへきた目的ならある。

ですが、ここへ来たくて来たわけじゃない」


女は心底嫌そうに言い捨てる。


まぁお前のような奴が来ても面白くはないだろうな。


初めて俺は同意することができた。


「・・だろうな。お前の目的は何だ?」


目的が知りたい。

こいつには謎が多すぎる。


俺はそいつの眼をしっかりと捕らえた。

少しの隙も逃さないように。


そして聞き出した。


キョウダイを救え、といわれたらしい。


「救え、だと?」


その意味が分からない。

どういうことだ。


女は自覚がないのかというような表情で


俺の支えとなる相手が傍にいれるように

矯正すると言い出した。


「矯正?俺には誰も要らない。

必要としないだろう」


そういってやった。

所詮、まわりいるやつらはクズも同然だ。


周囲の女だってまとわりついてウザイ。


俺にそんなものはいらないと言い切れば

こいつは挑発してきた。


上から目線がすごく気に入らなかった。


俺の支えとなる人間がいるのなら

認めてやってもいいがまずいないだろうと

思いながら俺はそいつをつかみあげた。


意外に軽い。


そうどこかで考えてしまう。


誰かに対してそういうことをするのは

これが初めてだと言えるからな。


女はコレに対しものともしなかった。


苦しそうな表情さえしない。


まったく可愛げのない奴だ。


俺は


「お前のような女は俺にとっては

初めてだな。まぁせいぜい頑張ればいい。

                      」


言い捨てて去った。


これで少しは日常生活がマシになって

張り合いが出たと思った。


だが・・午後の部、いくら頑張っても

先を越されたのはムカついた。


あいつは王に命ぜられたといっていたから

王城に帰るのかと思いながら


下校すれば、気配を殺したそいつがいた。


何故気配を殺すのか、謎だ。


おもわず暴きたくなった。


そういう俺を彼女は見破ったようだ。


俺の背後に一瞬できやがった。


そして無表情で問う。


「きになりますか?」


と。


気にならない、といえば嘘にはなるだろうが

キニナルとも言いがたい。


だからどうでもいいといった。

このときはまだドウデモイイ存在だったからな。


だが、それは変わった。

次の日の四項目のあの時間で。


男女の二人ペアなんてそんな面倒なことは今まで

なかった。


当全組むような奴はいないし

やりたくもなかった。


まぁそれはそいつも同じだったようだ。


一度やったが古紋言というのは

発音がかなり難しい。


俺が間違えても女は責めたりしてこなかったことに

安堵しながら間違えたことに苛立ちを覚えた。


負けたくはなかったのが本心だ。


二度目は間違えたりしない


そう決意を込めてやろうとしたとき、

教室は爆発した。


窓ガラスが飛び散り、天井の電球が当たる。


「ーーッセラフィッ」


それだけで、俺は傍にいた女を無意識に手を引いて

助けた。


俺もその衝撃で倒れたが

引き寄せたコイツの下敷きになった。


だが重くはない、それは前にも感じたことだ。


身体が密着してるというのに

彼女の鼓動はまさに落ち着いていた。

そしてなにか、彼女との壁を感じた。


「・・っ」


彼女の顔は歪んだ。

以前は見れなかった辛そうな顔だ。


「っおぃっーー大丈夫か」


そう不安になって聞いてみれば


「っ・・。

何とか、無事です」


彼女はあっさり頷き

俺から離れてしまう。


そこに虚しさを感じた。


「殿下には怪我はありませんか?」


そう聞かれて

虚しさを隠すために


「あぁ、ない。

だが・・教室は悲惨だな」


そう言って教室を見回した。


偶然助かったのは俺たちぐらいなものだった。


俺が助けなければ

もっとコイツは危ない目にあってただろうと思うと

救った気分になった。


「・・そう、ですね」


彼女の言葉に少し辛さをにじませた言葉があったのを

俺は見逃していたんだった。


ーー昼休み。


セラフィの姿を探せば

いつのまにか教室にはいなかった。


気配を探って己の気配を消して

中庭に訪れれば、雫の落ちる音がした。


ポタ・・ポタ・・と。


そこを視界に入れれば

それは血の雫だった。


高い木で葉が多く茂る隠れやすい木から

血が落ちる。


そして辛そうにうめく声まで聞こえたのだった。


「つぅ”・・っ”」


その声の主はぜったい彼女だと思ったが

姿が見えなかった。


突風が運良く駆け抜け彼女の姿が

木の葉の隙間から見えた。


一瞬の出来事だった。


彼女は足をかばい、苦しそうに辛そうにうめいていた姿は。


授業中、あれほどクールに軽々と俺より上を行く姿から

今のような弱弱しい女の姿を見るのは初めてで


そのギャップもあって、俺は驚愕せずにはいられなかった。


傍に寄りたくて思わず一歩前に出てしまう。


カツン・・足音がその場で響いてしまった。


「ぉまえ・・・っ!?」


彼女は一瞬目を見開き

無理して平気な顔を装い


「っ・・・。

気配を消して・・近づくなんて・・

ずるいですよ、・・クロセキ殿下」


そう言い放った。


初めて名前を呼ばれた。


そのことにわずかでも彼女に近づけた気がした。

でも、それ以上に怪我を隠されていたことに

怒る気持ちがわいた。

何故、教えてくれなかったのか、と。


それを聞けば彼女は隠してはいないし

はっきりとは言ってはなかったものの

言ったはずだと、言う。


だが、俺にとってそれは

責められているも同然だった。


相手からすれば助けてもらったのに

それ以上心配とかはかけたくないと思って隠す。


彼女もそういった。


それでも俺は悔やむしかなかった。


初めて救った相手は

完全に救えたわけじゃなかったんだ。


少なからず無理をさせていた。


俺は自分を攻め立てた。


彼女はそれでも、

俺に礼を言った。


でも、それは俺の心には届きはしなかった。


午後の部、彼女は少し調子が悪かったのは

分かっていた。


それに加えて、他の授業の様子を見ていたのだ。


その授業のほうをチラリと見れば

弟妹が活躍してる授業だ。


彼女は火を見てかすかに恐れを抱いていた。


俺が植物を成長させ、歓声が沸いても

彼女は見向きもしなかった。

すごく妬ましく思えた。

・・このことがどういうことなのか分かっていた。

でも口に出せば

認めたことになってしまう。


だが、心は素直でいたかった。


彼女の番になっても

彼女は弟妹の授業を見ていた。


俺が声をかけてようやく彼女は

こちらの授業へ戻った。


そしてつぼみを付かせた俺を超して

花を咲かせた。

みんなはほめると同時に

妬ましい視線を彼女に浴びさせる。

俺以上の嫌悪さだ。


彼女はソレを諸共しないが

顔色は悪かった。


そのときケモノが現れた。


先生達と兄貴はアフィラの火を使い

獣の道を阻む。


彼女はそれをみて妙に焦っていた。


そしてついに動き出した。


彼女は炎を消したのだ。


あれほどまでに遠い距離にあるたいまつの火をすべて。

詠唱呪文なしで。


そして今までにないくらいの声で叫ぶ。


火は彼らの敵ですっだから・・火だけはやめてください!!」


そういわれてみればそうだと俺は思った。

だが、今の兄貴も焦っていた。


「だったら・・どうするんだというんだ!?」


兄貴は取り乱す。


俺はただ、この成り行きを見ていただけだった。


そして彼女は詠唱もなしで

自然の力を使用した。


狼は一声発して帰っていった。

それが何を意味するのか知るよしもなく。


威力は・・おそらく王族の誰よりも上を行っている。


そのせいか、彼女は力尽きた。


ガクンと倒れそうになるところを

慌てて支える。


肩で荒い息を彼女はしていた。


兄貴が空から降りてきて

彼女に礼を請い、謝罪する。


彼女にはとうとう限界が来たようで

意識も薄くなっていき倒れた。


「!?魔力が尽きてしまったようだね。」


この言葉の次に僕が運ぼうってなんか言いそうな気がした。


兄貴は女嫌いの俺とは逆で男嫌いで女好きだ。


それはイヤだった。

どうしようもなくセラフィに触れて欲しくなかった。


俺は彼女の足の怪我を口実にそっと抱き上げた。


彼女は冷たく、肌は白く、羽のように軽かった。


これを感じることができるのは

俺だけでいて欲しい。


彼女と関わったほんの二日でこうも自分の感情が

傾くとは思わなかった。


医務室に運んで、事件が片付くと


授業は自習だと教えられた。


授業ができるような雰囲気じゃない

と先生達はそういった。


よくよく見ればみんな怯えていた。

まぁ普通はそうだろうが。


そんな暇な自習も終えて


彼女を抱きかかえて帰ろうかと

思って医務室に入れば

残念ながら彼女は既に目を覚ましていた。


回復が早すぎる。


異常に思った。

それはすぐに納得がいった。


彼女はすぐに起き上がって目眩を起こしたのだ。


無理をするなといえば

応えず時間を聞いてくる。


何故焦るのかといえば

答えをはぐらかされ

ここへ来た理由を問い詰められた。


だから悩んだ。

言い返そうとして悩み、言い訳を考えていうと

おもわず口調も変わってしまった。


そして悩んだ末にこう問いかけた、


どうしたと思うのか、と。


そしたら彼女はあっさりと俺が思ったことを口にした。


俺の手によって連れ帰られると。


まさに思ったことそのままだった。


彼女に触れたかったから

その口実が欲しかった。


だから意識がないことをいいことに

触れようと思った。


だからそういわれてしまったから

吹っ切った。


だったら今からでも実行できる。

できないわけじゃない、と。


実行して抱き上げてやった。


珍しく彼女は慌てた。


そして俺がやりすぎたために無駄に魔力を使って

逃げられた。


・・俺としたことがとんだ失敗をしたものだ。

せっかくのチャンスだったのに。


これからライバルが増えそうだと思い始めたのに。


そう思ってそれが当たったのは今夜のことだった。


今夜、俺と兄貴と弟妹と王が集まり

それぞれ彼女をどう思うか、今後のことを話し合ったときのことだったのだ。



次回は王族達の話し合いです。

クロセキ殿下以外の視点もお楽しみください。

この話みたいに長くなるかもです^

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