表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

第四話 変わりゆく感情

学院生活二日目


王から指輪を渡された。

王城の門を行き来するための道具だそうだ。


目的が・・それ以外にもありそうだと思うのは

私の考えすぎ?


とりあえず、普通に登校してみれば


「・・・」

「・・・」


若干一名、少し近めの距離で私を抜かすことなく

私の歩調に合わせるように歩いてくるニンゲンがいた。


しかも睨むように気配を殺す私を探るように

見てくる。


いわずとしれたクロセキ殿下だ。


一度、止まるか背後に姿を現してやろうかと考えた。


だが、あることに思い立ってやめた。


彼の周りにいる女子はみんなアピールしてたから

今の状況に陥っている、と。


だったら・・押して駄目なら退いてみるまでだ。


だからこの際、こんな小さなことで

とやかく言うのはやめることにした。


無視するのが時に一番辛いときもあるし

興味を惹くこともある。


興味をもたれるのは依頼達成に向けての良い傾向だと言える。


周囲のニンゲンは頼れるわけでもないし

使えない連中ばかりなのは事実。


まず自分から、と言うのが今回の鍵となるモノだと

私は思ったのだ。


とりあえず、授業も普通に彼の上を行った。・・三項目めまでは。


四項目目、古紋言の融合形体呪文発動 


これは男女の二人ペアでするそうだ。

・・・・。


「さぁ~男女二人組みのペア作ってください~」


先生は気楽に言う。


私はもちろんのこと、殿下も取り残されるのを知ってるだろうに。


「・・・」

「・・・」


結果、予想通り、私は嫌々殿下とやる羽目になった。


教室はざわめく。


「なにあいつ、いいきになりやがって」

「そうだよね、よりにもよって殿下とやるなんて。

きっと調子にのってんだよ」

「そうそう、じぶんがいちばんできるからってさぁ」

「だれかさそってやればよかったのに」

「でもあのちかづけないかんじがねぇ?」


嫌味な言葉は徐々にエスカレートしていった。

まぁ自分が一番できるってのは事実だけどね、

完璧なニンゲンじゃあないから。


呪文の前に机を後へとすべて追いやり

活動を開始した。


「さぁ、ペアの相手と向かい合わせになって

利き手を正面にかざして相手と対称にするんだよ~

それで、古紋言で

「魔力よ、共に魔法陣を創り出せ」と唱えるんだよ~

よい~?すべて息を合わせないと発動しないからね。

もしどちらかの魔力が大きかったりすると爆発するからきをつけるんだよ?」


先生はそう指を立てて真剣に言った。


魔力の量は彼に合わせるか。


そう思わざるおえない。


そうして私と殿下は利き手をかざした。


「唱えるぞ」

「わかってますよ」


「ヴァジック・ユーヴ・ヴァレス・ヴルムーヴ」

「ヴァジック・ユーヴ・ヴアレス・ヴルムーブ」


ヴァンン”


少し殿下の発した音は間違えていた。

私が完璧だったせいか、魔力は具現化したが

魔法陣にはならなかった。


「殿下、ヴアレス、です。あと、ムーブ。」


「分かっている」


「魔力もペースもすべて私があわせますが

発音のほうは先に私がいいますか?」


「いい、一度聞けば覚える」


私の言葉に彼は苛ついたように頷く。

できなかったのがそうとう頭にきたらしい。


そうして再び繰り返そうとしたとき、

窓側のほうでーー


ヴァァンンン”


爆発の予兆。そして


ドッカーーーン”!!


そのペアは吹っ飛ぶ。


窓ガラスは


パリパリパリパリンーー”!!


崩壊。


飛び散った破片が天井にある電球を割る。


「・・!!」


その真下にいた私は一瞬、反応が遅れた。

まぁ当たってもニンゲンほどのダメージではないはずだが。


「ーーッセラフィッ」


グイッーー・・・ばたん


クロセキ殿下は目を見開き

瞬時に私の手をつかみ自分の元へと引っ張る。


ソレと同時に殿下も後方へ倒れ

私の下敷きになった。


ドシャーーンッ


私のいた場所はガラスの破片の山。


私の足には電球が落ちてきた。

殿下からはそれは見えない。


グサッ


尖っている部分の破片が右足首に突き刺さる。


「・・っ」


痛みに私は顔をゆがめた。


「っおぃーー大丈夫か」


「っ・・。

何とか、無事です」


私は彼の上からどいた。


彼に怪我した足を見せないようにして


「殿下には怪我はありませんか?」


そう伺う。私をかばって倒れたぐらいだから・・

そう不安を込めながら。


「あぁ、ない。

だが・・教室は悲惨だな」


「・・そう、ですね」


足に痛みを感じ、手で押さえながらも

教室を見回した。


本当に悲惨だった。


窓ガラスは割れ、床全体に散らばり、

呪文に失敗した二人は前後に吹っ飛んで壁は砕け、


電球はすべて床にぶち当たり、机の上も破片でいっぱいだった。


あちこち悲鳴が沸いて出てる。

けが人も多かった。


「みんな!落ち着いて!!

とりあえずけが人はすぐに医務室へ!

他のみんなは運動場へいってくださいっ

あとは魔法でなんとかします。」


先生の声が響き、辺りは静まり返った。


みんなは急いでその場をあとにする。


私たちも運動場で待機する羽目となった。


しばらくすると、教室は元通りだった。


だが、その頃にはもう授業の時間はなく、

昼休みとなった。


私は人気(ひとけ)のないところまで行き、

姿と気配を隠して中庭に行った。


高い木の枝まで浮いて登り、そこで足を投げ出し

幹に身体をゆだねて休む。


木の葉が姿を隠し人がきても気づかないほどまでに隠れやすい場所は

ここにかないだろう。


休み始めると耐えてきた痛みに耐えられなくなってきた。


「っー・・・”」


顔をゆがめ痛む足を手で押さえる。


手を伝って・・


ポタン・・ポタン・・


と血が落ちた。


止血しなければおそらくこれは止まらない。

だが、まず破片を取り除かなければならない。


私は破片を引き抜いた。


「つぅ”・・っ”」


血がさらに落ちる。

止まることまるで知らないように。


空は晴れて優雅に風がなびく。


ザワァアアアアア


風で木の葉が揺れる。


そのときだった。


カツン・・・足音が近くでやんだ。


「ぉまえ・・・っ!?」


驚いた声が下から聞こえた。


「っ・・・。

気配を消して・・近づくなんて・・

ずるいですよ、・・クロセキ殿下」


私は足首に白く厚い布できゅっと縛った。

目立たないよう止血をするために。

まぁ応急処置のようなものだ。


「俺のことなど・・どうでもいいだろう。

それよりもオマエ・・」


「っ・・・、私より、・・殿下は・・っ自分の身を

案じるべき・・です・・よ・・っ”」


立ち上がったが少しふらついた。


幹に手を置き、身体を安定させるが

いまいち息が整わない。


体調は絶不調のようだ。


「・・ぃままでは・・そうだったでしょぅ?」


私は付け加えて言ってやった。

怪我の話から反らすためだ。


「っ~~^話をそらすなっ

セラフィ、逃げるなよ、しっかり降りて来い」


殿下は私の名を強く呼んだ。

怒りのにじんだ声はいつもの近づけさせないあの雰囲気を壊していた。


隠し事を許さない、幼子のように。


「っ・・わかり・・ました・・よ。」


ふわりっ・・


私は浮いて、木の根元に着地した。


彼はすぐ傍まで来ていた。


表情もいつもと違う。


感情のない表情から

静かな怒りのこもった表情になる。


私の右足をちらりと彼は見て


「なぜ、隠してた、あの時怪我したことを」


私の眼を逃さないようしっかり彼は捉えていた。


「隠して・・た?

隠しては・・いませんでしたよ?

言わなかっただけですし、貴方も怪我はしなかったのかとは

聞いてはこなかった。ただ、大丈夫か、だけ。

私は・・確かに言いました、無事だと。

あれは怪我に対する質問でもなかったでしょう?

それに私は・・しっかり言っている」


「っ・・・」


私の言葉に彼は悔しそうにしていた。

彼は私より先に目をそらしてしまう。


「殿下には(・・)怪我はありませんか?と。

殿下がかばってくれたから私には足だけで済みましたが

ほかのクラスメイト達は大怪我でしたよね。


私は確かにはっきり貴方には言ってなかった。

でも、それは助けてくれた貴方には

それ以上の心配をかけたくなかったからです。


まぁ、普段の貴方なら心配というものがなんなのか

感じることもなかったでしょうが、今は違うみたいですし。

今の貴方の表情、すごく責めていますよ、自分を。」


私はそうはっきりと言ってやる。


「っーー・・!」


「責めなくていいですよ。

・・あの時はありがとうございました。

あれは本当に貴方が助けてくれたおかげですよ。

・・私はもうここをはなれます、

またの機会にね、クロセキ殿下」


直撃を避けたのはありがたかったことに感謝と

一人になりたいというわがままを今言って

私は瞬間移動した。


しゅぱんと屋上に移動する。


「・・・」


これで殿下が少しずつ感情というものを

知って欲しいのだけど。


ニンゲンじゃない私がニンゲンの心情を理解するのは

難しかったがコントロールするのも難しかった。


ニンゲン離れしている殿下には

心だけでも支えを必要とするニンゲンに

なってほしいから。


ニンゲンじゃない私にニンゲンのことを

教えられた殿下はさぞかしいやだろうな^


正体がばれたときのことを思いながら

私は密かに笑っていた。


セラフィよりクロセキ殿下のほうが

変わってきてるかな^

まぁそんなこんな頑張っていきたいと思います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ