表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

第三話 目立ちたくなかった

とりあえずテストに合格したら

次の日にすぐに編入させられた。


私の入るクラスはクロセキ殿下と同じクラス・・いわゆる優秀なクラス。


ガラーー


ドアの開く音。


がやがや騒いでいたクラスはいきなり鎮まるような音だ。


そして注目を浴びる。


先生が入る。

その後に続く私。


正直言って注目を浴びるのは嫌いだ。

ニンゲンたちのいう“トモダチをつくる”つもりはない。


そもそも学院へ入った目的は“ソレ”ではないし。


「今からホームルームはじめるよ~。

えーと、今日から編入する子もいて~名前はーー」


先生が私を供託の隣に立たせ、カキカキと黒板に私の名前を書き始める。


私は教室全体を見回した。


人数はざっと三十人と数人。


その中で一人だけ雰囲気が近寄りがたいものになっていて

隣がいない場所があった。


「・・・。」


私は気取られないようにその辺りに目を走らせた。


あれが・・クロセキ殿下。


黒髪で紅い瞳を持つ外見けっこうモテそうな人だ。

だが・・きれいな薔薇には棘がある。

その人に漂う雰囲気が・・オーラが人を近寄らせないほど恐ろしい。


「この子の名前は~、セラフィ・フローライト クンといいます。

いろいろと事情があって入ってこられたのでそのことについて

深追いしないように~おねがいしますね。ほら、セラフィクン、挨拶を」


リクオ先生はのんきに私に挨拶を勧める。


目立ちたくないと思いながら気配を殺す。そして


「セラフィ・フローライト、と言います。

これからよろしくおねがいします」


とりあえず、ぺこっとお辞儀して言う。


「じゃあ・・席はーーちょうど殿下の隣が空いてるね。

そこにしよう。じゃあ、セラフィクン、座って」


これは何かの策略か。


そう思いたくなるほどの事実。


殿下の目がきらりと光る。

怪しまれた、まぁ当然だろう。

だが、その矛先が私なのはやめてほしい。


「・・はぃ」


消え入りそうな声で答えて、

一番後ろの殿下の右隣に向かった。


その頃、教室は静かに騒ぎ始める。


「やだ~なにあいつぅー

殿下の隣になんてすわっちゃってぇー。

すぐにあの威圧感にやられるのにー。」

「そうそう。あの王子のとなりになんて、ねぇー?」


女子は嫌味な言葉と共に嫌味な視線を送り、


「うわー、あいつ、勇気あんなー。

よりにもよって殿下の隣かよ。

っはあー、同情するぜ。」

「あんな子を隣になんてーセンセーも酷な事を」


男子は同情・哀れむような視線を送ってくる。


どれも 不快 だ。


どれだけ気配を殺しても彼らが私の姿を認識していれば

注目をあびることになる。


「・・・。」


殿下は横目でちらりと私を見る。

すごく疑い深い目だ。


「・・・」


そんな視線をするりと避け

席に座った。


「じゃあ、授業を始めようか」


リクオ先生の言葉で授業は開催された。


四科目午前の部では行われた。


一つ目、

昔、今より魔法や能力が発達していた時代の言葉 古紋言(こもんげん)


少し授業で聞いて、この呪文を唱えよ といわれたとき

みんないっせいにやった。もちろん殿下も、だ。


そのとき、一番早くにできたのは私だった。


「ヴアレス・ヴァビュレ・ヴラッデ」


これは古紋言の言葉で訳すと


【魔法陣よ、この手に現れよ】


という。

古紋言を操るにはそうとうな技量と魔力と

多少の発音のぶれも許さないスバラシイ発音が

必要なのだとリクオ先生は言っていた。


一発でそれができるのはすごいと褒められ

女子からも男子からも拍手が起こった。


ただ、殿下は私を興味深く見てた。(彼は二番目で二回目に唱えたとき)

それが劣等感のこもった視線になったのは次の時間からだったが。


午前の部と午後の部の間、つまり昼食を挟んだ昼休み、

彼に呼ばれた。劣等感と私への疑惑がついに頂点まできてしまったようだ。


私がどこか一人になれるところを探しに行こうかと席を立ったら


「お前に聞きたいことがある。

来い。他の者はくるなよ」


いきなり腕をつかまれ、屋上へと連れて行かれた。


屋上に連れて行かれ、壁に私は背をつけた。

目の前には不機嫌な殿下がいるからだ。


「お前は王の差し金か」


「差し金?」


差し金?

王の差し金に私はなったわけではないとおもうが・・?

刺客というような物騒なものでもないし。


「・・質問を変える。

お前はどういう目的でここへきた」


私の眼を・・しっかりと捕らえて殿下は上から見下ろす。


私を見極めたいらしい。

私はこういう性格の奴を知っている。

どう対応すればいいのかも。


「目的?確かにここへきた目的ならある。

ですが、ここへは来たくて来たわけじゃない。」


「・・だろうな。お前の目的はなんだ?」


殿下は私の冷たい言葉に頷き、再び同じ質問をしてきた。


「王から、貴方達キョウダイを救えとそう命ぜられました。」


私は事実をありのまま話した。

こういうニンゲンには嘘はつかないほうがいい。


「救え、だと?」


殿下は眉をひそめた。

自覚がないのか、このニンゲンは。


「そう、貴方達の支えとなる相手が誰かつくように

貴方達の性格を矯正しにきたのですよ。

その性格、態度、その他諸々」


「矯正?俺には誰も要らない。

必要としないだろう」


殿下は馬鹿げてると言いたげな言い方だ。

まぁそうだろうね、自覚ないし。


「殿下が要らなくても王は欲しいそうです。

命ぜられたからには私もそれに協力は惜しみませんが

納得がいきました。貴方のような方では到底無理だろうと」


相手を挑発するような言い方を私がすると


「なんだと?・・まるでとれるものならとってみろと

いいたげだな」


私の胸元の襟をグイッと持ち上げて

私を宙に浮かした。


「っ。・・その通りですよ。

まぁ、殿下以外の方のこともありますから

殿下の矯正ばかりやってはいけませんが」


私は堂々と睨んでやる。


彼は私をじっと見て、私を降ろした。


「お前のような女は俺にとっては

初めてだな。まぁせいぜい頑張ればいい。

俺にそんな者ができるなんて俺には想像つかないがな」


彼はそう言い捨てて帰っていった。


「・・・認めてるようなものだよ、殿下。

もしいたら、受け入れるということを」


私は誰にも聞こえないようにそうつぶやいたのだった。


その午後の部の授業、


すべて彼より良い功績を残し

学院を後にした。


私を妬むものが殿下だけでなくほかにもいたことを

記しておく。


下校時刻


気配を殺して、王城へと向かった。


行き交う人々は私には気づかない。

もちろん、学院の生徒もだ。


だが・・後からやけに私を感知しようとしてくるニンゲンがいる。


ヒュッ


私はとっさにそのニンゲンの背後へと姿を消した。


「・・・!?」


それはクロセキ殿下だった。


ひゅっ・・


また私は現れる。


彼が振り向いた瞬間だ。


「きになりますか?」


そう私は尋ねた。

気配を殺す私を探すのは何故か。


「別に。

お前なんてどうでもいい。」


「そうですか。じゃあ、私は先に帰ります。

コハクがうるさいので」


私はヒュンと姿を消し、

気配を殺して走った。


王城に着き、部屋に帰る。


そうして学院一日目を終えた。



さぁてここからが本番、本番。

さぁこれからがんばりますよう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ