第二話 ニンゲンの基準
コハクさんに部屋を用意され、一息つき、
用意された昼食を食べると早速学院にいかされた。
王城を出て、そうにぎやかでもない街道を歩き
街中からはずれると少し大きめの建物が見えてきた。
広い敷地の中で三つの校舎に分かれていた。
その校舎に囲まれるように広い中庭があり、
校舎から見下ろせる運動場がある。
小さい建物もいくつかあって、それぞれが
いろいろと役割があるらしい。
学院の名は【神聖学院】
ニンゲンの知識を深める場としてや
強さを追及したりする場である。
義務教育というわけではないが
年齢順に隔てがあり、それぞれ・・幼等部、中等部、高等部、と
三つに分かれている。
校舎が三つに分かれているのはこのためだ。
年齢で隔てがあるといっても
同い年のニンゲンだけがその場で学ぶわけではなく
等部ごとに年齢範囲で分けられていて
その範囲内の年齢の者が同じ場所で学ぶシステムとなっているんだ。
だから等部が同じになったところで同年代だとは限らない。
学院へはとある騎士さんが連れて行ってくれた。
グリーンさんとは大幅に性格が違い、騎士にして女性の方だ。
名はサイティア。
冷静すぎて騎士の中では一目おかれている存在らしい。
心の色は藍色。
時には黒く、時には青く、見える。
「私、クロセキ殿下を見たこともないですし
どういう方か知らないんですが・・サイティアさんは
ご存知ですよね?」
少しでも情報を得て
早くにでも終わらせたい、その一身で聞いてみた。
「ロキ殿下のことか。
当たり前だろう、私は殿下の護衛役だからな。」
「ならなおさら分かりますよね、殿下のこと。
依頼のためにもご協力ください」
ロキ殿下・・?あだ名なのだろうか。
「ロキ殿下は、冷静沈着で聡明なお方だ。
若くして重要な国の役割を果たしている。
兄、メラル殿下がいるにも関わらず
次期国王候補とも呼ばれる優秀なお方だ。
ただ・・彼の中に信頼というものが存在しない」
「信頼関係における相手がいない・・ということですか?」
「そうだ。彼は人を見抜くことより先に疑いを持つ。
それは彼の周囲のものが邪な軽い気持ちで近づいた所為だ。
彼は何も言わないが、周囲のものは近寄れない。
無言の威圧感がそうさせるのだ。
まぁ、無神経な奴等は気にせず近づくがな。」
サイティアさんは哀しそうに言った。
「真の忠誠を誓う者にも彼は絶対的信用を置いていない。
それが彼の唯一の欠点と呼べるだろう。
そこが国王候補にも影響を及ぼしている。
それを抜きにしても彼はこのままでは身体も心ももたない。
まだ十五の子供だ。地位も政治もすべて一人で抱えられるほど軽くない。
セラフィ殿、彼をどうか救ってやって欲しい。」
「言われなくても、やりますよ、受けたからには。
あの・・彼は私のことーー」
「彼には伝えていない。
そこの陛下の考えなのだろう。だがおそらく彼は気づく。
・・そんなこと言っているうちに着いたな、ここが入学試験場だ」
たくさんの建物の一つ、丈夫な作りがしている場所に案内された。
ここで魔力検査、実力テストを行うらしい。
その建物に入れば、床に六芒星が刻まれている。
「・・・ーー」
なんとなくやばいと思った。
私はニンゲンじゃない、
ニンゲンには不可能なことまで普通にできてしまうのだ私という存在は。
魔法陣には役割がいくつかある。
おそらくこれは魔力を安定させるものだ。
安定した魔力は機械が察しやすい。
私の魔力など測ったら・・機械は壊れる・・。
「陛下からの推薦でこのような少女が
お見えになるとは思いも知りませんでした~」
その声の主は知らぬうちにすぐ傍まで来た。
気配を隠すのがうまい奴・・。
その人は・・金髪で黄金の瞳の
穏やかな笑みを持つ男性だった。
「リクオさん、か。・・気配消すなどと高度なことを・・・。
・・セラフィ殿、こちらはロキ殿下のクラスの担任のリクオさんです。」
サイティアさんはボソッと不機嫌にそう紹介した。
まぁこのリクオさんという方と
サイティアさんとは相容れぬところがありそうだが。
「セラフィといいます。」
「セラフィクンだね~、実に聡明な子のようだね~
僕はリクオ・チェオツといいます~、
今から検査するけどいいかな?」
穏やかでゆったりな声質から真剣な声質に変わった。
このニンゲン、・・できる。
「はい、もちろんです」
そのためにここへきたんだからやってもらわなければ
困るところが現実だ。
「じゃあ、やろうか。
・・サイティアクンは魔法陣に踏まないようそこにいてほしいな~」
「分かっています(からかってんのか、コイツ)」
また穏やかゆったりな声質でリクオさんがいうと
サイティアさんはこめかみを引きつりながら頷いた。
サイティアさんの心の中は少し怒りが見えた。
そうとう今のリクオさんの口調と言い方にカチンと来たらしい。
その後、検査を始めた。
ヴィイイン
検査機が動く。
そして私を覆い、安定した魔力を測っていく。
グゥウウウウゥン”!!
針が一気にmaxまで触れた。
思わず私は気を緩めた。
ニンゲンでは無理だ、これほどの量の魔力は。
maxまで触れた針は少し戻って止まった。
「す、すごい、これほどの魔力が・・
クロセキ殿下でさえも超えている・・!!」
リクオさんは目を見開いた。
・・ヤバイことになった。
このままでは・・・。
「君は合格だ!!
これでは実力検査などしたら
ここが壊れてしまう」
「力を抑えますからいいと思いますが」
私は冷静に言った。
ここで反抗しておかなければ。
「そうかい?ならやってもいいけど~」
そう止めようとする彼の瞳は
言葉とは裏腹に
輝 い て い た 。
好奇心に溢れ、ためさせてみたい と訴えている目だ。
心もソレを強く思っている。
見ようと思わなくても見えてしまうほどに。
そうして、魔法の属別実力テストを行うことにした。
・・抑えた力でさえもほめられるほど人間が
下等生物だということを私は思い知った。
実力テストの結果
空、 宙に浮き自在に飛んだ。
押し寄せてくる刃ボールをすべて避けた。
それだけで彼は目を見開いた。
・・・一つでもわざとよけておけばよかったかもしれない。
自然 水、緑は共に自在に操れた。
ただ、火だけは水などのようにはいかない。
火だけはできないので無理だと断ったのだ。
実際やったが、不発だったので彼は眉をひそめ疑り深い目で見てきた。
こればかりはどうしようもない。
火は見るだけで私にとっては害する存在だ。
地 重力が強いもので自在に操れた。
理 これは呪い師には基本中のことだから本気ではやれなかったが
まぁなんとかなった。
私はどうやらニンゲンの基準というモノを知ってから
旅をしたほうがよかったのかもしれない。
これから私はとても面倒なことになってしまったのだった。
サイティアさんは、カルサイト
リクオさんは、 チェリークォーツ
です。
まだクロセキ殿下にめぐり合ってませんが次回でるのでよろしくオネガイシマス。




